行政書士試験の記述は大丈夫? - 表見代理・使用者責任

2019年の行政書士試験は11月10日(日)に行われます。2019年度の試験の難易度は分かりませんが、出題ミスがなければ10%前後になるのではないでしょうか。

行政書士試験での一番のポイントは“記述式でどれだけ安定して得点ができるか”ではないでしょうか。受験生の皆さんは過去問や問題集で演習をしていることと思います。今回のシリーズは記述式試験(過去問)の解答への考え方を書きます。あくまでも私アシュラとして…ですので、ご了承ください。

過去問(2013年度以降)は行政書士試験研究センターのサイトにあります。

 

 

| 民法 - 表見代理 不法行為

 

問題(2011年度 第46問)

作家Yに雇用されている秘書Aは、Y名義で5万円以下のYの日用品を購入する権限しか付与されていなかったが、Yに無断でXからYのために50万円相当の事務機器を購入した。しかし、Xは、Aに事務機器を購入する権限があるものと信じて取引をし、Yに代金の支払いを請求したところ、Yはその支払いを拒絶した。このようなYの支払い拒絶を不当と考えたXは、Yに対して、支払いの請求、およびそれに代わる請求について検討した。この場合において、Xは、どのような根拠に基づき、いかなる請求をすればよいか。「Xは、Yに対して、」に続けて、考えられる請求内容を二つ、40字程度で記述しなさい。

 

問題文では“どのような根拠に基づき”“いかなる請求をすればよいか”を問うています。ですから、(1)どのような根拠で、(2)いかなる請求をするかを書かなければ点数になりません。注意すべきは“考えられる請求内容を二つ”という指定があることです。“根拠”と“請求”をセットにして2つ書きます。

本問の状況を図解します。

2011年第46問(表見代理・不法行為)

このような状況で、XはYに対して代金の支払いかそれに代わる請求をしたいと考えています。AにはYから5万円以下の日用品を購入する代理権が与えられています。まずはここから攻めたいところです。

5万円以下の日用品の購入の代理権で50万円相当の事務機器を代理人として購入した秘書Aは無権代理人です。XとしてはAに対して無権代理人の責任を追及することもできそうです。しかし、問題文では本人Yに対しての請求を考えるように書かれていますので、無権代理人の責任追及を書いてはいけません。

Yに対して請求する方法としては表見代理の主張が考えられます。表見代理には3種類あります。

1 代理権授与表示による表見代理

2 権限踰越による表見代理

3 代理権消滅後の表見代理

本問では、実際に代理権を与えられていますし、代理権が消滅した後の売買契約ではありませんので、“2権限踰越による表見代理”が該当しそうです。成立要件を見てみましょう。

要件と効果は覚えておかないと試験で役立つ知識になりません。少なくとも憲法・民法・行政法については要件と効果をもう一度確認してください。

1 代理人が基本代理権を有すること

2 代理人が代理権の範囲を超えて代理行為をすること

3 相手方が代理人に権限があると信じるべき正当な理由があること

基本代理権は“5万円以下の日用品を購入する権限”でOKです。Aは、この権限の範囲を越えて50万円の事務機器を購入していますので2も満たします。AはYの秘書であり、“Xは、Aに事務機器を購入する権限がある者と信じて取引をし”ていますので、3も満たすと考えていいでしょう。

したがって、YとAには表見代理が成立します。

表見代理が成立していますので、代理権があったのと同じようにXはYに対して代金の支払いを請求することができます。

解答例 “表見代理に基づき代金の支払いを請求する”

 

次に、もう一つの根拠を考えてみましょう。AはYに雇われている秘書です。YはAを雇っているわけですから、雇用者としてAの失敗に対して対外的に責任を負わなければいけません(使用者責任)。雇用者が被雇用者の行為に責任を負わなければいけない要件は4つあります。

1 事業のための使用関係

2 事業の執行につき行ったこと

3 一般不法行為の要件の充足

4 使用者に免責事由がないこと

Aは秘書ですから1は満たしそうです。

また、事務機器の購入ですから2も満たすでしょう。

3の一般不法行為の要件ですが、次の4つです。

1 加害者の故意・過失行為

2 加害者の責任能力

3 違法性

4 損害の発生

Aは代理権の範囲を超えて売買契約をしていて、売買契約が破たんするとXが損害を負うことは分かりますから、Aに故意か過失はあると思われます。契約が破たんするとXに損害が発生することも確実でしょう。Aは秘書をしていますから責任能力はあります。違法性阻却事由はありません。ですから3も満たします。

雇用者であるYの免責事由は問題文に書かれていませんから、“ない”と認定します。

したがって、Yは使用者責任を負うと考えられます。

解答例 “使用者責任に基づき損害の賠償を請求する”

 

“ 表見代理に基づき代金の支払いを請求するか、使用者責任に基づき損害の賠償を請求する。”(41字)

 

本問は代理と不法行為という2分野の複合問題でした。問われているのは基本的な知識です。慌てずに問題文の指示に従って“○○に基づき××を請求する”と書けば点数につながると思います。

 

 

| まとめ

 

1 表見代理の要件と効果はしっかりと暗記!

2 問題文の事実を要件に当てはめるときは丁寧に!

3 問題文の指示に従って解答を作らないと点数になりません!



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