1人で“できること”と“できないこと”

| 行為能力が制限される

 

前回の記事でも書きましたが、1人で契約をすると契約を取り消されてしまう人たちがいます。未成年者、成年被後見人については前回の記事のとおりです。本日は、残り2つの被保佐人と被補助人について書きたいと思います。

未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人はまとめて制限行為能力者と呼ばれています。昔は行為無能力者と呼ばれていましたが名称が変わりました。また、禁治産者は成年被後見人に、準禁治産者は被保佐人となりました。

被保佐人は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者で、家庭裁判所の補佐開始の審判を受けた者をいいます。法律の書き方は分かりにくいですね。つまり、一般の人よりも判断力がすごく弱くて裁判所の審判を受けた人です。

判断力がすごく弱いとは言っても、原則として1人で契約ができます。成年被後見人と比べますと、判断力が少しあっていつも判断力が悪いわけではない人ですから、成年被後見人ほど保護をしなくても大丈夫なのです。

被保佐人が1人で契約できるますが、次の9つのことは保佐人の同意がなければいけません。

1 元本の領収、利用

2 借金、保証

3 不動産などの重要な財産の権利の得喪に関すること

4 訴訟

5 贈与、和解、仲裁合意

6 相続の承認、相続放棄、遺産分割

7 贈与の申し込みの拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申込の承諾、負担付贈与の承認

8 新築、改築、増築、大修繕

9 長期(土地5年以上、建物3年以上)の賃貸借

日常の中ではあまり経験しないことばかりですね。分かりにくいのは3番の“権利の得喪”でしょうか。権利の得喪というのは、たとえば不動産を買ったり売ったりして所有権を得たり手放したりすることです。

7番の負担付贈与は、たとえば“うちの猫の世話をしてくれるならこの時計をあげる”といった〇〇をするならこれをあげるというものです。単に“これをあげる”という贈与ではなくて、“〇〇をするなら”という負担が付いた贈与のことです。

保佐人の同意がない行為は取り消すことができます。

 

 

| 被補助人はどんな人?

 

被補助人は、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者で、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者をいいます。成年被後見人は“能力を欠く常況”、被保佐人は“能力が著しく不十分”、被補助人は“能力が不十分”になっています。これをみると、被補助人は被保佐人よりも軽い状態ですね。

ですから、被補助人は基本的に何でも1人で契約ができます。ただし、家庭裁判所が決めた行為は補助人の同意が必要です。家庭裁判所は、被保佐人が補佐人の同意を得なければいけない9つの行為の中からしか指定できません。上に書いた借金とか訴訟とか新築とかのあの9つの中からです。

補助人の同意がない行為は取り消すことができます。

 

 

| まとめ

 

1 被保佐人は同意が必要な行為が列挙されています!

2 被補助人は裁判所が同意の必要な行為を指定します!

3 被保佐人も被補助人も原則として1人で契約ができます!



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