前回の“民法ってどんな法律?(債務不履行編①)で書きましたが、契約を守らないと損害賠償や解除をされてしまいます。今回は契約の解除と危険負担について書きたいと思います。
| 契約の解除
解除は、一方的な意思表示で契約が最初からなかったことにすることです。契約が最初からなかったことになりますから、当事者はお互いに原状回復をする義務があります。元の状態に戻すということですね。受け取ったものは返しますし、加工していれば元の状態に戻ります。原状回復に費用がかかったとしても当人が負担します。ただし、費用は解除とは別に損害として賠償を請求される可能性があります。お金を返す場合は利息も必要です。
解除権は、債務不履行など法律の規定によって発生する場合、解約手付があったときなど契約によって発生する場合があります。
また、債務不履行の種類によっても変わりますので、分けて書きたいと思います。
1 履行遅滞のとき
履行遅滞のときは、債務が弁済できる程度の相当の期間を定めて弁済をするように催告します。たとえば、2019年5月15日までに支払いをするというように期限を定めます。その間に弁済がない場合に初めて解除することができます。
2 履行不能のとき
履行不能のときは、弁済を催告してもどうせ弁済できないのですから、いきなり解除をすることができます。
一度、解除権を行使するとあとから“やっぱりやめた”と撤回することはできません。
| 危険負担ってなに?
債務不履行になるのは債務者に故意や過失がある場合です。売った住宅をわざと引き渡さないとか引き渡したいけれど修理が間に合わないから引き渡せないといった場合ですね。
これとは違って、危険負担は誰にも故意や過失がない場合です。たとえば、建物の売買契約をした後に落雷によって建物が燃えてしまってなくなってしまった場合です。このような場合は誰が建物を引き渡せなくなった責任を取るのでしょうか?
民法ではいろいろと場合分けをして定めています。原則は、債権者主義と言われるものです。たとえば、建物の売買契約が落雷で燃えてしまった先ほどの例では、買主は代金を支払わなければいけません。
この危険負担は、中古住宅の売買のように特定の物権に関するものでお互いに義務を負っている場合に該当します。
では、賃貸借契約のように物権に関係ないものの場合には、債務者主義を適用します。たとえば、借りていたアパートが燃えてしまった場合には、大家さんは建物を貸せなくなった反面、家賃を徴収することができません。大家さんは建物を貸す義務がありますので、ここでは債務者になるのです。
その他の例外では、停止条件が付いている契約の場合です。たとえば、転勤が決まったら中古住宅を売るといった場合ですね。転勤がまだ決まらない間に落雷によって家が燃えてしまった場合には、転勤が決まっても売買代金を受け取ることはできません。ところが、落雷によって家が少し壊れただけの場合には、転勤が決まったら壊れた建物を引き渡すと売買代金を全額貰うことができます。
また、債権者が契約の目的物を壊してしまったような場合には、債権者主義になります。たとえば、中古住宅の売買で買主が家の様子を見に来た時に買主の吸っていたタバコの火の不始末で家が燃えてしまった場合、債権者は建物の代金を支払わなければいけません。ただし、売主が手に入れた利益(売買代金など)は、公平の観点から買主に変換しなければいけないことになっています。
| まとめ
1 履行不能で解除する場合は催告が不要!
2 だれの責任でもない場合は危険負担の問題!
3 危険負担には債権者主義と債務者主義があります!