| 契約を守らないとどうなる?
契約は約束です。守らないといけません。しかし、いつでも契約が守られるとは限りません。約束を破ってしまうと相応のペナルティが課せられます。特に、わざと約束を守らなかったり(故意)、自分の過失で約束が守れなかったり(有過失)すると、損害を賠償する責任を負ったり契約を解除されることがあります。
故意や有過失でない場合には“危険負担”という制度を使って解決します。今回は、約束を守らなかった場合について書きたいと思います。
| 債務不履行の種類
債務不履行は、正当な理由がないのに約束を守らなかったことです。“正当な理由がないのに”というのは、故意・過失があった場合のことです。
債務不履行には次の3つがあります。
1 履行遅滞
2 履行不能
3 不完全履行
これらの場合を一つずつ書いていきます。
| 履行遅滞
履行遅滞は、債務の弁済ができるのに約束の期日を過ぎても弁済しない場合です。たとえば、中古住宅を購入したのに売主が約束の期日になっても住宅を引き渡さない場合です。
このような場合には、引渡が遅れたことによる損害の賠償を請求したり、契約の解除をしたり、強制的に引渡をさせたりすることができます。
| 履行不能
履行不能は、約束の期日に関係なく債務の弁済ができなくなった場合です。たとえば、中古住宅の売買契約をしたのに、土地や建物の引渡の前に売主の火の不始末で建物が燃えてなくなってしまい、建物の引渡ができなくなった場合です。
このような場合には、損害の賠償を請求したり、契約の解除をしたりすることができます。
| 不完全履行
不完全履行は、債務の弁済として一応は行われたけれど不完全だった場合です。たとえば、物件の調査の依頼を受けた調査会社が調査をして報告書を提出したけれど、とてもずさんな報告だった場合です。
このような場合には、債務者が改めて完全な履行をすることができる場合には、完全な履行を請求したり期日に遅れたことによる損害の賠償を請求したりできます。債務者が完全な履行をすることができない場合には、損害の賠償を請求することができます。
| 損害賠償の特則
損害賠償をする場合には、例外的に守らないといけないルールがあります。
1 損害賠償額の予定
家を買ったときには違約金の定めが契約書に書かれています。たとえば、暴力団員などの場合には違約金を物件代金の80%を支払うといったようなものです。民法では違約金の定めを損害賠償額の予定と推定することになっています。損害賠償額の予定は、あらかじめ債務不履行の場合に損害を賠償する金額を決めておくことです。
2 金銭債務の特則
代金の支払債務や賃料の支払債務は金銭債務と言います。金銭債務は履行不能になりません。いくらお金がなくて支払えなくても世の中のお金がすべてなくなったわけではありませんから、単に期日までにお金を用意できなかっただけです。このような場合には履行遅滞になります。
また、お金を支払えない原因が天変地異などの不可抗力であっても損害賠償をしなければいけません。支払えないことに故意や過失は必要ないのです。単に支払えないというだけで履行遅滞になります。
また、賠償金額は原則として法定利率とされています。一般消費者であれば5%、業者であれば6%の利率で支払わなければいけません。これよりも高い約束があればそれに従います。
3 過失相殺
債務不履行について、債務者だけでなく債権者にも過失がある場合には損害賠償の責任や金額を決めるときに裁判所が必ず考慮することになっています。
| まとめ
1 約束を守らないと債務不履行になります!
2 債務不履行の責任は損害賠償責任と解除!
3 損害の賠償には特別なルールがあります!