| 用益物権ってなに?
前回の“民法ってどんな法律?(物権編②)”では、物権は分類されていて所有権や占有権の他に用益物権や担保物権があるというお話を書きました。今回は用益物権について書きたいと思います。
用益物権は、一言で言いますと“他人の土地を利用させてもらう権利”です。他人の土地の利用関係については用益物権の他に“相隣関係”という規定もあります。一緒にまとめて書きたいと思います。
| 地上権
地上権は、他人の土地に工作物や樹木を所有するために土地を利用する権利です。実際にはあまり使われていない権利です。と言いますのも、同じ目的であれば土地を賃貸借することができるからです。
地上権での“工作物”は建物の他に、電柱、広告塔、石油タンクなどがあります。樹木には、稲、果樹、茶などは含まれません。
地上権には無償のものと有償のものがあります。賃貸借との違いはここですね。賃貸借は必ず賃料が発生します。もし無償であれば、賃貸借ではなく使用貸借です。
さらに、地上権は登記をしなければ第三者に地上権を主張できません。一定の要件を備えれば法律上地上権が成立する場合もあります。
| 地役権
地役権は、自己の土地を便利に使うために他人の土地を利用する権利です。たとえば、道路を作って公道に出られるようにしたり、田んぼに水を引くために水路を作ったりするときに使います。
地役権を手に入れるためには契約をすることはもちろんですが、その他にも時効取得することができます。ただし、継続的に行使されていて外から分かるものでなければいけません。さきほどの道路や用水路の利用の場合には時効取得が認められる可能性がります。
地役権には無償のものと有償のものがあります。ただし、地代がいくらかを登記することはできませんので、地代を第三者に主張することはできません。
| 永小作権
永小作権は、耕作や牧畜のために小作料を払って他人の土地を利用する権利です。無償の永小作権はありません。
永小作権を手に入れるためには契約や時効取得があります。ただし、登記をしなければ第三者に主張することはできません。
| 入会権
入会権は、一定地域に住んでいる人が山林で薪や草を採取する場合などに共同で収益を上げる慣習上の権利です。ほとんど慣習に委ねられていますので各地によって内容は様々です。また、登記をすることはできません。
| 相隣関係
相隣関係は、隣接する不動産を利用するときのルールです。いろいろな形があります。
1 隣地使用権、立入権
境界付近で工事を行うときなどに隣地を利用させてもらう権利です。承諾があれば建物の中にも立ち入ることができます。
2 通行権
袋地になっていて公道に面していない場合に、公道へ行くために周りの土地を通る権利(囲繞地通行権)です。地役権と同じようなものですが、かならず通行料を支払わなければいけません。
3 樹木の切除
隣地の樹木が境界戦を超えているときに、枝を切るように請求できます。根っこならば勝手に切ってもかまいません。
4 境界線付近の建築
建物を建てるときには、境界線から50㎝以上離すように決められています。これに違反している場合には、建築を中止するように求めたり変更するように求めたりすることができます。ただし、完成後には請求できませんし、建築着手から1年以上経ったら請求できません。
5 境界標の設置
境界標を隣接と共同の費用で設置することができます。
6 目隠しの設置
境界線から1m未満の距離で窓やベランダなどを作るときには目隠しをつけなければいけません。
7 自然の水の妨害禁止
自然に水が流れてきているのを勝手に妨げてはいけません。
| まとめ
1 用益物権は他人の土地を利用する権利!
2 通行地役権と囲繞地通行権はよく似ている!?
3 地上権と賃借権もよく似ている!?