| 電力の自由化が後押し
マンションの部屋(専有部分)の電気代はお住まいの方が支払います。では、廊下の照明やエレベーターなど共有部分の電気代は誰が支払っているのでしょうか。
当たり前かもしれませんが、マンションの所有者が支払っています。マンションの所有者は、分譲マンションだと各部屋の所有者ですし、賃貸マンションだとオーナーさんです。
分譲マンションでは管理費や共益費という名目で毎月徴収されています。集めたお金は管理組合や管理業者が管理しています。
この共用部分の電気代を安くする方法があります。分譲マンションにお住まいの方は管理組合の総会などで議題になってご存知かもしれません。電力の自由化で電力会社の数が増えたことで価格競争が激しくなっています。ガスと電気を一つにまとめれば安くなる!という手法や、大手よりも安いプランを提供している電力会社もあります。
安い会社やプランに乗り換える方法もありますが、電力の一括受電という方法もあります。電力の一括受電は、いままで専有部分は各部屋にお住まいの方、共用部分は管理組合や管理会社と別々に支払っていた電気代を専有部分・共用部分ともに一括して契約し料金を安くする方法です。
| 総会で決めても導入できない!?
管理組合の総会決議はマンションの住民の総意です。電力の一括受電は管理組合の総会の決議で可決されれば導入できるのですが、問題が浮上し裁判で争われました。
札幌市の500戸以上のマンションでは2015年に一括受電方式の導入を総会で決議しました。一括受電を導入するとマンション全体で約500万円(5か月分)も安くなるとのことでした。
ところが、これにお二人の住民が反対します。理由は災害時の停電などによる不利益です。一括受電は専有部分の契約も含まれますので、反対するお二人が専有部分の個別のプランを解約しなければ導入できません。導入できなければマンション全体で数百万円の損失になります。
そこで、一括受電に賛成する方が反対するお二人に損害賠償を求めて提訴しました。一審、二審ともに、共用部分の変更や管理について総会決議で決めた以上、反対する人も決議に従うのが当然で、安い電気料金の利益を失ったとすれば、電気料金の差額を不法行為による損害として賠償請求できるという判決でした。
最高裁はこれとは違う理屈をつけました。住民一人一人の電気供給契約の解除は専有部分に関するもので共用部分の管理や変更ではないことを前提に、総会決議は共用部分に関する事項を決めたもので専有部分については効力を持たないとしました。
つまり、総会決議は共用部分だけルールで専有部分のことは決められないとされました。最高裁判所として初めての判断ですので、管理会社の方は面食らったのではないでしょうか。今後は判例を基準に専有部分に関する規約や総会決議の決議内容を見直さなければいけませんね。
| まとめ
1 プラン変更や一括受電でマンションの電気代がお得に!
2 マンション管理組合の総会決議は万能じゃない!?
3 総会決議では専有部分について決められない!?