| コンパクトシティってなに?
コンパクトシティは、都市のドーナツ化現象にストップをかけるために、商業地や行政機能を狭い範囲に集めて効率的な生活や行政を目指すことです。
無駄な店舗をなくして生産性を向上させることで企業を元気にしたり、行政サービスを居住地の近くに持ってきて便利な暮らしを叶えたりすることが目的です。詳しくは“これからの地方はどうなる!?”や“都市がスポンジになる!?”を参照してください。
ところが思い通りにいかない例が多くあります。原因は何なのでしょうか?
| コンパクトシティの失敗
失敗例に挙げられているのは地方の中心都市です。たとえば青森市や富山市です。
1 青森市の場合
青森市は人口減少と少子高齢化で中心地の空洞化がかなり進んでしまいました。そこで、青森駅から郊外に向けて“インナー”“ミッド”“アウター”の3区域に分けることで、それぞれに特徴のある街づくりを進めようとしました。
インナーでは主に複合商業施設で商業を活性化させ、ミッドでは住宅地として人口を集約し、アウターでは自然環境を保護する取り組みです。
まず、一つ目の失敗は複合商業施設が儲からなかったことです。入店するテナントが少なく賃料不足で経営が悪化。青森市が債務を買い取りましたが市民が反発し、市長が退任してコンパクトシティ反対派が市長になります。これでコンパクトシティの計画は頓挫しました。
二つ目の失敗は地理的な問題です。在来線のある青森駅と新幹線のある新青森駅が4㎞ほど離れており、市民が新幹線の恩恵を受けられていないのです。解決方法として、公共交通機関を強化して利便性を上げようとしました。しかし、市長の交代でこれも頓挫します。
複合商業施設にしろ公共交通機関にしろ、箱もので何とかしようとしたことが失敗の根本的な原因だと言われています。
2 富山市の場合
富山市では自動車での移動が主なことから、①自動車を利用できない世代に利便性を提供すること、②CO2の排出を減らして環境を維持することを目標にしました。
自動車による移動に替えて公共交通機関による移動を促すため、廃線になるJR線を使って路面電車を走らせることにしました。環状線にしたりバス路線を増やしたりして利用者の利便性を図っています。これによってJRの頃よりも利用者は増えたとされています。
ところが、郊外に住む人たちはなかなか中心地へ戻ってきませんでした。その理由は、郊外にある大型ショッピングセンターと高齢者の土地への愛着です。
郊外の大型ショッピングセンターへは公共交通機関で行くことが困難であり、他方で十分な駐車場があることから土日には多くの人たちが自動車でショッピングに出かけています。富山市と合併した旧婦中町では大型の商業施設を誘致しており、郊外には住宅地も含めてすでに人の流れができていました。コンパクトシティ構想は、この流れを変えることができなかったのです。
また、高齢者たちは何十年と住んだ土地を離れて中心部へ移住する決断ができませんでした。中心部は家賃も高ければ駐車場代も高くなります。土地や家を買うとなればなおさらです。郊外でも自動車があれば今までと同じように生活ができますので、生活費の増加する中心部への移住を高齢者が望まないのも当然なのかもしれません。高齢者はより大きな利便性を手に入れるよりも生活費の維持を選んだのです。
| 京阪地域はどうなの?
京阪地域でもコンパクトシティ構想が進められています。守口市、門真市、寝屋川市、枚方市はコンパクトシティを実現するための計画を作成しています。
次回以降、守口市、門真市、寝屋川市の取組をご紹介します。青森市や富山市のように失敗しなければいいのですが…。
| まとめ
1 コンパクトシティは暮らしを便利にする!?
2 富山市や青森市は失敗!
3 京阪地域でもコンパクトシティ構想が進められています!