| 中古住宅市場の現状
国土交通省によりますと、日本の全住宅の流通に占める中古住宅のシェアは約14.7%(平成25年)です。欧米諸国の1/6程度と言われています。しかも、空き家は800万戸以上あり、住宅ストック全体の13.5%を占めています。少子高齢化が進む中で住宅ストック数が世帯数を上回っているのです。
人口が減少しているにもかかわらず、国の政策は新築住宅流通を促進しています。住宅ローン減税や固定資産税の優遇などがありますね。
そこで、この数年の国土交通省は中古住宅の流通促進に乗り出しています。「いいものを作って、きちんと手入れして、長く使う」社会への移行を目指して、既存住宅流通・リフォーム市場の環境整備を始めました。たくさんありますので、主なものを選んでみます。
中古住宅の品質に関する不安が大きいこと、木造住宅の場合は築後20~25年で資産価値がゼロと評価されている慣行が阻害要因であるとされています。この改善のため指針が出されました。
2 中古住宅インスペクションに対する信頼の確保と円滑な普及
平成25年に“既存住宅インスペクション・ガイドライン”が策定されました。
3 不動産に関する情報ストックシステムの構築を検討
現在は各所に分散している不動産取引に必要な情報を集約・管理し、宅建業者などが効率的に情報を収集できるシステムの構築を進めています。
| 住宅ファイル制度の活用
これらの中古住宅流通促進策に沿うものとして“住宅ファイル制度”があります。これは、近畿不動産活性化協議会が窓口になっているもので、中古住宅に関する情報を一元管理しようとするものです。
1 宅地建物取引士によるもの
物件調査書、重要事項説明書
2 インスペクターの建築士によるもの
建物診断、瑕疵保険付保調査、フラット35適合検査、耐震診断、補修見積
3 防蟻業者によるもの
シロアリ点検保証付
4 不動産鑑定士によるもの
上記1~3に基づいた住宅価格調査
これらの4つの情報が住宅ファイル報告書として一つにまとめられ管理されています。これを活用した基本サービスとして、住宅ファイル報告書の内容が住宅履歴情報システムに登録され、住宅引き渡しの1年後に住宅全体を点検してもらえます。オプションサービスとして、瑕疵保険への加入、リフォーム工事費見積もり+リフォーム後の建物評価+リフォームローンがあります。
さらに特徴的なのが、関西アーバン銀行による住宅ファイル活用ローンです。この住宅ローンは住宅ファイル報告書を基にして審査が行われますので、金融機関が独自に行う物件調査とは違って中立公正な審査が期待できます。
| 宅地建物取引業法の改正
平成30年4月1日から新しい宅建業法が施行されます。主な改正内容は以下のとおりです。
1 インスペクション(住宅診断)の実施の有無の説明
インスペクションが義務付けられるのではありません。インスペクションが行われたかどうかを説明する義務が生じます。
2 宅建業者団体などの従業員への研修実施(努力義務)
業界団体がきちんと研修を実施しましょうというものです。現在でも年に数回の研修が行われていますので、どのように変わるのかは分かりません。
3 弁済業務保証金制度・営業保証金制度の見直し
これらの保証金は、宅建業者への損害賠償請求が認められた場合に支払われる賠償金を保証するものです。弁済対象者から宅建業者が除外されました。支払われる限度額が決まっていますから、業界に詳しい業者が先に取ってしまって一般消費者が弁済を受けられなくなることを防止するために見直されました。
| インスペクションの隆盛!?
住宅ファイル制度や宅建業法改正の中で目立つのがインスペクションです。国土交通省がインスペクションのガイドラインを策定したことが大きいと思います。それまでは闇雲で業者によってその内容や程度がさまざまだったのが、このガイドラインによってどこをどの程度調査しなければいけないのかが明確になり、インスペクションに対する信頼感が増しました。
今後、どれだけインスペクションが普及するのか分かりませんが、中古住宅の流通量が増えて空き家の上手な活用方法が身近になれば、新築住宅の購入を諦めていた買主さんが住宅購入を検討してくれることでしょう。その時に備えて、私もそれぞれの買主さんにピッタリと合う住宅を提供できるよう、ますます精進していきます。
| まとめ
1 中古住宅促進に国が本気を出す!?
2 住宅ファイル制度の利点は住宅ローンにまで!
3 宅建業法の改正ではインスペクションを重視!