昨今、“会社を退職できない”、“退職したいと言えない”という方のために、代わりに退職の意思を会社に伝えるサービスが流行っています。いわゆる“退職代行サービス”です。元々は弁護士が行っていた業務ですが、最近はテレビでも取り上げられて様々な会社が退職代行サービスを行っています。
弁護士以外が退職代行サービスを行うのは違法なのでしょうか。 “退職代行サービスって違法?” の続きを読む
昨今、“会社を退職できない”、“退職したいと言えない”という方のために、代わりに退職の意思を会社に伝えるサービスが流行っています。いわゆる“退職代行サービス”です。元々は弁護士が行っていた業務ですが、最近はテレビでも取り上げられて様々な会社が退職代行サービスを行っています。
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宅建士試験で問われるポイントを過去問中心に書いていく第3弾です。今回は宅建士試験に必須の“代理”です。覚えることが多いところですが、分かってしまえば点数につながります。
下線は過去問に問われたところです。
前回の記事で、無権代理人が相手方から責任を追及される可能性があると書きました。無権代理人は代理権がないのに勝手に本人を代理したのですから、責任を追及されて当然です。
では、相手方は本人に責任を追及できないのでしょうか?
代理の基本図を再掲します。
実は、本人への責任を追及する方法があります。代理権が存在すると相手方が信じるような外観を作って、相手方が代理権のないことに善意かつ無過失の場合です。この場合には、無権代理人の代理行為でも本人に効果が帰属します。つまり、無権代理人の行為をあたかも代理権がある通常の代理と同じように扱うという制度です。
この制度は表見代理と呼ばれていて、パターンとして3つあります。
本人が相手方に、代理権を与えたと言ったり書面を送ったりして表示したけれども、本当は代理権を与えていなかった場合です。相手方は本人の言葉や文言を信用しますから、本人に責任を追及しても酷ではありません。
たとえば、本人が自己所有の土地にAの抵当権を設定する代理権を代理人に与えて白紙委任状を交付したけれども、代理人はAではなくBの抵当権を設定した場合です。次の権限踰越の場合のようにも思えますが、裁判所は代理権授与表示による表見代理としました。
本人から代理権を与えられている代理人が、与えられた代理権の範囲を超えて代理行為をした場合です。元々与えられていた代理権(基本代理権)は、土地の売却や登記申請手続きなどの代理権でなければいけません。夫婦間での日常家事の代理権(民法751条)や投資契約の勧誘委託は基本代理権になりません。
たとえば、本人から融資と自己所有の土地への抵当権の設定を委任された代理人が、土地を売却した場合です。
本人から代理権を与えられましたがすでに代理権が消滅した後にもかかわらず、代理人として行為をした場合です。代理権が消滅した後でもまだ代理権があるかのような外観を放置していたことに本人の責任があります。
たとえば、元店長を解雇したけれども取引先に解雇を通知しない間に、元店長が取引先との間で自分のためにモノを購入していた場合です。
上で代理権が消滅した後の無権代理人の行為が表見代理になりうると書きました。では、どのような場合に代理権が消滅したことになるのでしょうか?
民法では代理権がなくなったことになる原因を規定しています。
・本人の死亡
・代理人の死亡
・代理人の後見開始の審判
・代理人の破産手続開始の決定
・本人の死亡
・本人の破産手続開始の決定
・代理人の死亡
・代理人の後見開始の審判
・代理人の破産手続開始の決定
・委任契約の解約
ややこしいので表にまとめます。
1 表見代理だと本人に効果帰属!
2 相手方が善意・無過失の場合のみ!
3 表見代理は3種類!
4 死亡すると代理権が消滅!
宅建士試験で問われるポイントを過去問中心に書いていく第3弾です。今回からは宅建士試験に必須の“代理”です。覚えることが多いところですが、分かってしまえば点数につながります。
下線は過去問に問われたところです。
復代理は、代理人がさらに代理人を選んだときのことです。代理人が選ぶ代理人なので復代理といいます。復代理人は代理人を代理するのではなく本人を代理します。ですから、代理人と同一の権限をもっています。復代理人を選任しても代理人の代理権はそのまま残っています。
代理人が復代理人を選ぶときは、任意代理と法定代理で違ってきます。
任意代理では原則として復代理人を選任できません。ただし、本人が許諾したときややむを得ない事由があるときは例外的に復代理人を選任できます。
法定代理では自由に復代理人を選任できます。ただし、復代理人がした行為の結果に対する責任は代理人が全部負わなければいけません。
代理の基本図を再掲します。
代理権がないのに代理人としてした行為を“無権代理”といいます。無権代理では本人Aに契約の効果は帰属しません。しかし、本人Aが無権代理人の行為を追認すると、はじめに遡って有効な代理行為になります。ただし、第三者の権利を害することはできません。
相手方Cは本人Aに対して追認するかどうかを確答するように催告することができます。期間内に確答がない場合には追認を拒絶したとみなされます。無権代理であることを知らなかった相手方Cは、本人が追認する前であれば契約を取り消すことができます。
追認拒絶があったり契約の取り消しがあったりした場合で、無権代理行為が無効と確定したときは、無権代理人は相手方Cに対して契約を履行するか損害を賠償する責任があります。相手方Cが無権代理であることを知っていたり過失で知らなかったりするときや、無権代理人が制限行為能力者のときは、無権代理人は責任を負いません。
無権代理人の責任を整理します。
1 催告:相手方は善意・悪意にかかわらず催告可
2 取消:善意の相手方のみ取消可
3 責任追及:善意かつ無過失の相手方のみ責任追及可
無権代理人が本人を単独で相続した場合にはどうすればよいのでしょうか。本人として追認を拒絶することができるのでしょうか。
この場合、判例では追認があった場合と同様に扱うとしています。つまり、無権代理人は契約内容を履行しなければいけません。
逆に、本人が無権代理人を相続した場合はどうなるのでしょうか。無権代理人の責任は免れるのでしょうか。
本人が無権代理人を相続したとしても、契約は当然に有効とはなりません。しかし、無権代理人の地位を相続しますので、無権代理人としての責任は果たさなければいけません。ですから、相手方Cが善意無過失のときには契約を履行するか損害を賠償する必要があります。
1 無権代理は本人に効果帰属なし!
2 相手方は、催告、取消、責任追及が可!
3 無権代理人が本人を相続すると追認と同様!
4 本人が無権代理人を相続すると責任追及されます!
宅建士試験で問われるポイントを過去問中心に書いていく第3弾です。今回からは宅建士試験に必須の“代理”です。覚えることが多いところですが、分かってしまえば点数につながります。
下線は過去問に問われたところです。
前回の記事に載せました代理の基本図を再掲します。
代理人Bと相手方Cの間の“代理行為”を見てください。ここが今回のポイントです。
代理人が代理行為をするときには必ず本人のためにすることを示さなければいけません。これを“顕名”といいます。たとえば、契約書にサインをするときには“A代理人B”と記名しなければいけません。もう少し具体的に言うと、本人が田中一郎さん、代理人が山本太郎さんの場合、“田中一郎代理人山本太郎”と記名します。
もし、代理人Bが顕名なしに代理行為をした場合には、代理人Bと相手方Cとの間でした契約は、本人Aに効果が帰属することなく、代理人Bと相手方Cとの間に効果が帰属します。相手方CはBが取引の相手だと思って契約しているからです。
ただし、相手方Cが本人Aのためにすることを知っていたり知ることができたりした場合には、本人Aと相手方Cに契約の効果が帰属します。
誰でも代理人になることができます。未成年者でも成年被後見人でも代理人になれます。直接本人に効果が帰属しますから代理人を保護する必要がないので、未成年者や成年被後見人でも大丈夫なのです。責任はそのような代理人を選んだ本人が負います。
通常、代理人を選任すると委任状が作られます。相手方Cに対して本当に本人Aの代理人かどうかを証明するためです。証明するためですので法律上は委任状がなくても代理兼授与行為があれば代理人になれます。
騙されたり強迫されたりしたときには代理人が基準で判断されます。つまり、代理人が騙されたら詐欺の規定を使いますし、代理人が脅されたら強迫の規定を使います。ただし、取消ができるのは本人で、騙されたり脅されたりした代理人は取消できません。契約の効果は本人に帰属しますから、本人に取り消すかどうかを決めさせる方がよいからです。
詐欺や強迫だけでなく、知っているか知らないかということも代理人が基準になります。代理人が知っていれば“悪意”、代理人が知らなければ“善意”という具合です。
ただし、本人の指図に従って代理人が代理行為をした場合には、本人が知っていたり過失で知らなかったりしたことについて、代理人が善意や無過失を主張することは許されません。
1 代理行為には顕名が必須!
2 委任状はなくてもOK!
3 代理人は未成年者でもなれる!
宅建士試験で問われるポイントを過去問中心に書いていく第3弾です。今回からは宅建士試験に必須の“代理”です。覚えることが多いところですが、分かってしまえば点数につながります。
下線は過去問に問われたところです。
代理は、忙しくて時間がないとか時間はあっても知識がないので自信がないとかいう場合に、自分に代わってやってくれる人に任せることです。自分の手足として人を使う場合を“私的自治の拡張”といいます。
また、未成年者や制限行為能力者が法定代理人に一定のことをやってもらう場合もあります。このような場合を“私的自治の補充”といいます。
代理の本質は“私的自治の拡張”と“私的自治の補充”にあります。
代理の基本的な構図はこのようになっています。
たとえば、本人が所有する土地を売却するために代理人Bに代理権を与えます(代理権授与)。代理人Bは買主である相手方Cを見つけて売買契約を締結します(代理行為)。そうすると、代理人Bと相手方Cとの間で締結した売買契約の効果が、本人Aと相手方Cに及んで本人Aは売主として相手方Cに土地を引き渡す債務が生じ、相手方Cは買主として本人Aに代金を支払う債務が生じます(直ちに効果帰属)。
このように3人以上が登場する場面では、必ず上のような図を書いてくださいね。ご自身で図を書けるようになれば理解が早くなります。
代理は大きく分けて任意代理と法定代理があります。
任意代理は、本人が代理人を選んでどのような代理権を与えるかを決めることができます。
法定代理は、親権者(親)のように法律上当然に代理人になる場合、本人以外の人の協議や指定で決まる場合、成年後見人のように裁判所が選任する場合などがあります。
ここでは主に任意代理について書きたいと思います。
自己の相手方の代理人になったり(自己契約)、当事者双方の代理人になったり(双方代理)することはできません。本人の利益が害される可能性が極めて高いからだと言われています。
考えてみれば当然ですよね。たとえば、200万円で買いたい土地があった場合に、自分が売主の代理人になったら200万円どころかもっと安い値段で契約することもできます。当事者の双方の代理人になった場合でも、どちらか片方の肩をもって不当に安かったり高かったりする価格で契約をするかもしれません。ものすごくリスキーですね。
また、代理権の範囲が決められていれば、代理人はその範囲のことしかできません。もし代理権の範囲が決まっていなければ、代理人は次のことができます。
保存行為は、建物の修繕をするような財産の現状を維持する行為です。
利用行為は、土地や建物を賃貸するような収益を図る行為です。
改良行為は、土地を整地・造成するような使用価値または交換価値を増加する行為です。
1 代理は最低3人が登場!図を書きましょう!
2 代理には任意代理と法定代理があります!
3 自己契約や双方代理は禁止!