意外に厳しい宅建業免許のポイント2

宅建士試験で問われるポイントを過去問中心に書いていく第4弾です。今回は宅建士試験に必須の“免許基準”です。覚えることが多いところですが、分かってしまえば点数につながります。

下線は過去問に問われたところです。

 

| 宅建業免許基準~実質的な欠格要件~

 

前回の記事で、免許の形式的な欠格要件と実質的な欠格要件のうち1~3を書きました。今回は4~15までを一気にまいります。

 

4 建業66条1項8号または9号に該当して、免許を取り消され、その取消の日から5年を経過しない者(2号)

“宅建業法66条1項8号または9号”というところが肝です。3つあります。(1)不正手段で免許取得、(2)業務停止処分に違反、(3)業務停止処分事由に該当して情状が特に重い場合です。通称“3悪”と呼ばれています。

5 4で法人の場合には、取消に係る聴聞の期日・場所の公示日前60日以内にその法人の役員であった者(2号)

黒幕を罰するための規定です。免許を取り消すときには、言い訳をする場として“聴聞”が開かれます。その聴聞をする期日が公表される前に、従業員に指示を出していた黒幕である役員が辞めてしまうと、悪いことをした人を野放しにしてしまいます。それに、その人が新たに宅建業の免許を取得するかもしれません。それらを防ぐためにこのような規定が作られました。法人の行為の結果を役員に及ぼす規定です。役員には監査役を含みません。

6 免許取消処分の聴聞の期日・場所の公示日から処分をするかしないかを決定する日までの間に、解散、廃止の届出をして処分を免れた者(2号の2)

聴聞の開催が決まって免許が取り消されそうになると、免許の取り消しを避けるために廃業をしてしまおうと考える人もいます。免許が取り消されてしまうと5年間は免許の再取得ができませんものね。そのような悪だくみの働く人を逃さないようにするための規定です。

7 6で法人の場合には、聴聞の公示前60日以内に役員であった者で、法人の消滅または届出の日から5年を経過しない者(2号の3)

5と同じ意味合いの規定で、法人の行為の結果を役員に及ぼす規定です。役員には監査役を含みません。

8 免許の申請前5年以内に宅建業に関し不正または著しく不当な行為をした者(4号)

ポイントは“申請前5年以内”です。表現方法を変えると “不正などをしてから5年以内に免許の申請をする者”です。

9 宅建業に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者(5号)

ものすごくあいまいな規定ですが、明らかに悪いことをしそうだという人は免許が拒否されます。

10 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(3号の3)

新たに作られた規定です。暴力団員は以前まで9に該当するとして免許が拒否されていました。暴力団員かどうかは警察の公安部門などが所有している名簿に照らし合わせて判断されるようです。

11 宅建業に係る営業に関して成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、その法定代理人が1号~5号に該当する者(6号)

“成年者と同一の行為を有しない未成年”は、親権者などから営業の許可をもらっていない未成年のことです。このような未成年者の場合には、未成年者本人だけでなく法定代理人(親権者など)も免許の許可の欠格事由にあたらないことが必要です。また、一度でも結婚していれば20歳未満でも成年者と同様に扱われます。

12 法人で、役員または政令使用人が1号~5号に該当する者(7号)

役員や政令使用人(店長など)が悪いことをしていれば、そのような人がいる法人も免許を取得することができません。役員や店長の悪事を法人に及ぼす規定です。

13 個人で、政令使用人が1号~5号に該当する者(8号)

12と同様の個人事業主に対するもので、従業員の悪事を個人事業主に及ぼす規定です。

14 暴力団員等がその事業活動を支配する者(8号の2)

15 事務所の要件を欠く者

 

 

| まとめ

 

1 法人が悪いことをすれば役員も道連れ!

2 役員や店長が悪いことをすれば会社も道連れ!

3 明らかに悪そうな人も免許取得不可!



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意外に厳しい宅建業免許のポイント1

宅建士試験で問われるポイントを過去問中心に書いていく第4弾です。今回は宅建士試験に必須の“免許基準”です。覚えることが多いところですが、分かってしまえば点数につながります。

下線は過去問に問われたところです。

 

 

| 宅建業の免許基準ってなに?

 

不動産屋を営むためには宅建業の免許が必要です。免許は誰でも受けられるわけではありません。細かい基準があります。

免許の基準は、“欠格要件”という形で決められています。“欠格要件”ですから、欠格要件に該当すると免許を受けられないということです。免許をつけている場合には取り消される要件にもなります。

免許の基準には大きく分けて2つあります。形式的な欠格要件と実質的な欠格要件です。形式的な欠格要件は、申請書や添付書類の中で重要事項の記載漏れがあったり、虚偽の記載があったりする場合です。

虚偽の記載をして申請すると100万円以下の罰金に処せられますので、かなり厳しいのではないでしょうか。過料じゃなくて罰金ですから前科持ちになってしまいます。記載内容を間違えないようにしっかりとチェックしてください。

 

 

| 宅建業免許基準~実質的な欠格要件

 

実質的な欠格要件は15個あります。これらのうち一つでも該当すると免許が拒否されます。また、免許を持っていると取消の原因になります。

免許の欠格要件には、該当しなくなるとすぐに申請ができるものと5年間の期間が設けられているものがあります。すぐに申請ができるものを意識して覚えて、残りは5年間の期間付きと決めておくと覚えることが少なくなります。

1 成年被後見人・被保佐人・破産者で復権を得ない者(1号)

成年被後見人や被保佐人の審判が取り消されたり破産後に復権を得たりした場合には、翌日から免許を受けられます。

2 禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者(3号)

禁固以上の刑には禁錮・懲役・死刑の3つがあります。刑務所から出てきて5年間は宅建業の免許を取得できません。

判決に不服があって控訴・上告中の場合は該当しませんが、執行猶予中は該当します。また、執行猶予の期間が経過後は翌日から免許を取得できます。しかし、刑の時効が完成した場合や刑の執行が免除された場合は、その日から5年間は免許を取得できません。

3 宅建業法、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したことにより、または傷害罪、現場助勢罪、暴行罪、凶器準備集合罪、脅迫罪、背任罪もしくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者(3号の2)

罰金刑で免許を取得できなくなりますから、かなり厳しい規定です。傷害罪~脅迫罪は暴力的な事件を起こした場合です。現場助勢罪は喧嘩の野次馬、凶器準備集合罪は決闘のために鉄パイプを持って集まった場合などです。背任罪はライバル会社に企業の秘密を売り渡した場合などですね。控訴・上告、執行猶予については2と同様です。

 

 

| まとめ

 

1 不動産屋をするには厳し条件があります!

2 一定の罪で罰金以上を受けると免許取得不可!

3 執行猶予中も免許取得不可!



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代理のポイント4

宅建士試験で問われるポイントを過去問中心に書いていく第3弾です。今回は宅建士試験に必須の“代理”です。覚えることが多いところですが、分かってしまえば点数につながります。

下線は過去問に問われたところです。

 

 

| 本人への責任追及方法は?

 

前回の記事で、無権代理人が相手方から責任を追及される可能性があると書きました。無権代理人は代理権がないのに勝手に本人を代理したのですから、責任を追及されて当然です。

では、相手方は本人に責任を追及できないのでしょうか?

代理の基本図を再掲します。

 

 

実は、本人への責任を追及する方法があります。代理権が存在すると相手方が信じるような外観を作って、相手方が代理権のないことに善意かつ無過失の場合です。この場合には、無権代理人の代理行為でも本人に効果が帰属します。つまり、無権代理人の行為をあたかも代理権がある通常の代理と同じように扱うという制度です。

この制度は表見代理と呼ばれていて、パターンとして3つあります。

1 代理権授与表示(民法109条)

本人が相手方に、代理権を与えたと言ったり書面を送ったりして表示したけれども、本当は代理権を与えていなかった場合です。相手方は本人の言葉や文言を信用しますから、本人に責任を追及しても酷ではありません。

たとえば、本人が自己所有の土地にAの抵当権を設定する代理権を代理人に与えて白紙委任状を交付したけれども、代理人はAではなくBの抵当権を設定した場合です。次の権限踰越の場合のようにも思えますが、裁判所は代理権授与表示による表見代理としました。

2 権限踰越(民法110条)

本人から代理権を与えられている代理人が、与えられた代理権の範囲を超えて代理行為をした場合です。元々与えられていた代理権(基本代理権)は、土地の売却や登記申請手続きなどの代理権でなければいけません。夫婦間での日常家事の代理権(民法751条)や投資契約の勧誘委託は基本代理権になりません。

たとえば、本人から融資と自己所有の土地への抵当権の設定を委任された代理人が、土地を売却した場合です。

3 代理権消滅(民法112条)

本人から代理権を与えられましたがすでに代理権が消滅した後にもかかわらず、代理人として行為をした場合です。代理権が消滅した後でもまだ代理権があるかのような外観を放置していたことに本人の責任があります。

たとえば、元店長を解雇したけれども取引先に解雇を通知しない間に、元店長が取引先との間で自分のためにモノを購入していた場合です。

 

 

| 代理権がなくなる原因

 

上で代理権が消滅した後の無権代理人の行為が表見代理になりうると書きました。では、どのような場合に代理権が消滅したことになるのでしょうか?

民法では代理権がなくなったことになる原因を規定しています。

1 法定代理人(親権者や後見人など)の場合

本人の死亡

・代理人の死亡

・代理人の後見開始の審判

・代理人の破産手続開始の決定

2 任意代理人(委任状があるなど)の場合

本人の死亡

・本人の破産手続開始の決定

・代理人の死亡

・代理人の後見開始の審判

・代理人の破産手続開始の決定

・委任契約の解約

ややこしいので表にまとめます。

 

 

| まとめ

 

1 表見代理だと本人に効果帰属!

2 相手方が善意・無過失の場合のみ!

3 表見代理は3種類!

4 死亡すると代理権が消滅!



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代理のポイント3

宅建士試験で問われるポイントを過去問中心に書いていく第3弾です。今回からは宅建士試験に必須の“代理”です。覚えることが多いところですが、分かってしまえば点数につながります。

下線は過去問に問われたところです。

 

 

| 復代理ってなに?

 

復代理は、代理人がさらに代理人を選んだときのことです。代理人が選ぶ代理人なので復代理といいます。復代理人は代理人を代理するのではなく本人を代理します。ですから、代理人と同一の権限をもっています。復代理人を選任しても代理人の代理権はそのまま残っています。

代理人が復代理人を選ぶときは、任意代理と法定代理で違ってきます。

任意代理では原則として復代理人を選任できません。ただし、本人が許諾したときややむを得ない事由があるときは例外的に復代理人を選任できます。

法定代理では自由に復代理人を選任できます。ただし、復代理人がした行為の結果に対する責任は代理人が全部負わなければいけません。

 

 

| 代理権がないのに代理したら?

 

代理の基本図を再掲します。

 

 

代理権がないのに代理人としてした行為を“無権代理”といいます。無権代理では本人Aに契約の効果は帰属しません。しかし、本人Aが無権代理人の行為を追認すると、はじめに遡って有効な代理行為になります。ただし、第三者の権利を害することはできません。

相手方Cは本人Aに対して追認するかどうかを確答するように催告することができます。期間内に確答がない場合には追認を拒絶したとみなされます。無権代理であることを知らなかった相手方Cは、本人が追認する前であれば契約を取り消すことができます。

追認拒絶があったり契約の取り消しがあったりした場合で、無権代理行為が無効と確定したときは、無権代理人は相手方Cに対して契約を履行するか損害を賠償する責任があります。相手方Cが無権代理であることを知っていたり過失で知らなかったりするときや、無権代理人が制限行為能力者のときは、無権代理人は責任を負いません。

無権代理人の責任を整理します。

1 催告:相手方は善意・悪意にかかわらず催告可

2 取消:善意の相手方のみ取消可

3 責任追及:善意かつ無過失の相手方のみ責任追及可

 

 

| 無権代理と相続

 

無権代理人が本人を単独で相続した場合にはどうすればよいのでしょうか。本人として追認を拒絶することができるのでしょうか。

この場合、判例では追認があった場合と同様に扱うとしています。つまり、無権代理人は契約内容を履行しなければいけません。

逆に、本人が無権代理人を相続した場合はどうなるのでしょうか。無権代理人の責任は免れるのでしょうか。

本人が無権代理人を相続したとしても、契約は当然に有効とはなりません。しかし、無権代理人の地位を相続しますので、無権代理人としての責任は果たさなければいけません。ですから、相手方Cが善意無過失のときには契約を履行するか損害を賠償する必要があります。

 

 

| まとめ

 

1 無権代理は本人に効果帰属なし!

2 相手方は、催告、取消、責任追及が可!

3 無権代理人が本人を相続すると追認と同様!

4 本人が無権代理人を相続すると責任追及されます!



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代理のポイント2

宅建士試験で問われるポイントを過去問中心に書いていく第3弾です。今回からは宅建士試験に必須の“代理”です。覚えることが多いところですが、分かってしまえば点数につながります。

下線は過去問に問われたところです。

 

 

| 代理行為に必要なこと

 

前回の記事に載せました代理の基本図を再掲します。

 

代理人Bと相手方Cの間の“代理行為”を見てください。ここが今回のポイントです。

1 顕名

代理人が代理行為をするときには必ず本人のためにすることを示さなければいけません。これを“顕名”といいます。たとえば、契約書にサインをするときには“A代理人B”と記名しなければいけません。もう少し具体的に言うと、本人が田中一郎さん、代理人が山本太郎さんの場合、“田中一郎代理人山本太郎”と記名します。

もし、代理人Bが顕名なしに代理行為をした場合には、代理人Bと相手方Cとの間でした契約は、本人Aに効果が帰属することなく、代理人Bと相手方Cとの間に効果が帰属します。相手方CはBが取引の相手だと思って契約しているからです。

ただし、相手方Cが本人Aのためにすることを知っていたり知ることができたりした場合には、本人Aと相手方Cに契約の効果が帰属します。

2 代理人の能力

誰でも代理人になることができます。未成年者でも成年被後見人でも代理人になれます。直接本人に効果が帰属しますから代理人を保護する必要がないので、未成年者や成年被後見人でも大丈夫なのです。責任はそのような代理人を選んだ本人が負います。

3 委任状

通常、代理人を選任すると委任状が作られます。相手方Cに対して本当に本人Aの代理人かどうかを証明するためです。証明するためですので法律上は委任状がなくても代理兼授与行為があれば代理人になれます。

 

 

| 代理人が騙されたりしたらどうするの?

 

騙されたり強迫されたりしたときには代理人が基準で判断されます。つまり、代理人が騙されたら詐欺の規定を使いますし、代理人が脅されたら強迫の規定を使います。ただし、取消ができるのは本人で、騙されたり脅されたりした代理人は取消できません。契約の効果は本人に帰属しますから、本人に取り消すかどうかを決めさせる方がよいからです。

詐欺や強迫だけでなく、知っているか知らないかということも代理人が基準になります。代理人が知っていれば“悪意”、代理人が知らなければ“善意”という具合です。

ただし、本人の指図に従って代理人が代理行為をした場合には、本人が知っていたり過失で知らなかったりしたことについて、代理人が善意や無過失を主張することは許されません。

 

 

| まとめ

 

1 代理行為には顕名が必須!

2 委任状はなくてもOK!

3 代理人は未成年者でもなれる!



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