【行政書士試験】2021年度 試験問題の振り返り(第19問)

毎年、行政書士試験の問題を検討しているのですが、今年は何かとバタバタしておりまだ試験問題すら見ておりませんでした。

合格発表が近くなっているこの時期です。受験生の皆様はワクワクドキドキの時期も過ぎて落ち着いているかと思います。では、令和3年度行政書士試験を見てみたいと思います。今回も引き続き択一問題を見ていきます。

 

 

| 択一式 第19問(行政法)

 

選択式に引き続いて、択一式の問題も掲載しません。行政書士試験の問題は、一般財団法人行政書士試験研究センターのサイトにありますので、気になる方は各自ダウンロードしてください。PDFファイルで約570KB程度のサイズです。

第19問は取消訴訟の原告適格に関する判例問題です。行政法では憲法と並んで判例がとても大切です。

【肢1】

誤りです。原告適格は認められません。近鉄特急料金訴訟(最判H元.4.13)では次のように判示しています。

 

“認可処分そのものは、本来、当該地方鉄道の利用者の契約上の地位に直接影響を及ぼすものではなく、このことは、その利用形態のいかんにより差異を生ずるものではない。また、同条の趣旨は、もつぱら公共の利益を確保することにあるのであ”るから、“日常同社が運行している特別急行旅客列車を利用しているとしても、上告人らは、本件特別急行料金の改定(変更)の認可処分によつて自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に当たるということができず、右認可処分の取消しを求める原告適格を有しない”

 

【肢2】

誤りです。原告適格は認められません。伊場遺跡訴訟(最判H元.6.20)では次のように判示しています。

 

“県民あるいは国民が史跡等の文化財の保存・活用から受ける利益をそれら個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を明記しているものはなく、また、右各規定の合理的解釈によつても、そのような趣旨を導くことはできない。そうすると、本件条例及び法は、文化財の保存・活用から個々の県民あるいは国民が受ける利益については、本来本件条例及び法がその目的としている公益の中に吸収解消させ、その保護は、もつぱら右公益の実現を通じて図ることとしているものと解される。そして、本件条例及び法において、文化財の学術研究者の学問研究上の利益の保護について特段の配慮をしていると解しうる規定を見出すことはできないから、そこに、学術研究者の右利益について、一般の県民あるいは国民が文化財の保存・活用から受ける利益を超えてその保護を図ろうとする趣旨を認めることはできない。”“したがつて、上告人らは、本件遺跡を研究の対象としてきた学術研究者であるとしても、本件史跡指定解除処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有せず、本件訴訟における原告適格を有しない”

 

【肢3】

誤りです。原告適格は認められません。主婦連ジュース訴訟(最判S53.3.14)では次のように判示しています。

 

“不当景品類及び不当表示防止法10条6項にいう「第一項の規定による公正取引委員会の処分について不服があるもの」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。”“ 不当景品類及び不当表示防止法の規定にいう一般消費者であるというだけでは、公正取引委員会による公正競争規約の認定に対し同法10条6項の規定に基づく不服申立をする法律上の利益を有するとはいえない。”

 

【肢4】

妥当です。原告適格を有します。新潟空港訴訟(最判H元.2.17)では次のように判示しています。

 

“定期航空運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる飛行場周辺住民は 当該免許の取消しを訴求する原告適格を有する。”

 

 

 

【肢5】

誤りです。原告適格を有します。都市計画法の開発許可取消請求事件(最判H9.1.28)では次のように判示しています。

 

“開発区域内の土地が都市計画法33条1項7号にいうがけ崩れのおそれが多い土地等に当たる場合には、がけ崩れ等により生命、身体等に直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は、開発許可の取消訴訟の原告適格を有する。”

 

 

| まとめ

 

1 原告適格は条文の趣旨から導かれる!?

2 一般消費者というだけでは不正競争の不服申立はできない!

3 がけ崩れのおそれが多い土地では原告適格あり!



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