毎年、行政書士試験の問題を検討しているのですが、今年は何かとバタバタしておりまだ試験問題すら見ておりませんでした。
合格発表が近くなっているこの時期です。受験生の皆様はワクワクドキドキの時期も過ぎて落ち着いているかと思います。では、令和3年度行政書士試験を見てみたいと思います。今回も引き続き択一問題を見ていきます。
| 択一式 第18問(行政法)
選択式に引き続いて、択一式の問題も掲載しません。行政書士試験の問題は、一般財団法人行政書士試験研究センターのサイトにありますので、気になる方は各自ダウンロードしてください。PDFファイルで約570KB程度のサイズです。
第18問も行政事件訴訟法の問題です。単純正誤問題です。
【肢1】
誤りです。取消訴訟の被告は、原則として国や地方公共団体です。国や公共団体に所属しない行政庁の場合は、その行政庁が被告になります。本肢では、処分庁は国または公共団体に所属していますから、取消訴訟の被告は国または公共団体になります。
行政事件訴訟法 第11条
処分又は裁決をした行政庁(処分又は裁決があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁。以下同じ。)が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。
一 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体
二 裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体
2以下、略
【肢2】
誤りです。取消訴訟の管轄は、原則として、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所または処分庁の所在地を管轄する裁判所に属します。原告の普通裁判籍ではありません。
行政事件訴訟法 第12条
取消訴訟は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所又は処分若しくは裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
2以下、略
【肢3】
誤りです。肢1で書いてしまいましたが、国や公共団体に所属しない行政庁が処分庁の場合には、その処分庁が被告になります。
行政事件訴訟法 第11条
略
2 処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属しない場合には、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない。
3以下、略
【肢4】
正しいです。裁判所は、申立または職権で利害関係人を訴訟に参加させることができます。
行政事件訴訟法 第22条
裁判所は、訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者若しくはその第三者の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その第三者を訴訟に参加させることができる。
2以下、略
【肢5】
誤りです。取消訴訟と審査請求の関係は、原則として自由選択主義、例外的に審査請求前置主義が取られています。例外は、個別法で審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分取り消しの訴えを提起することができないとされている場合です。
行政事件訴訟法 第8条
処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。
2以下、略
| まとめ
1 取消訴訟の被告は原則として国・公共団体!
2 取消訴訟の管轄は原則として被告・処分庁の所在地!
3 取消訴訟と審査請求は自由選択主義!