【行政書士試験】2021年度 試験問題の振り返り(第17問)

毎年、行政書士試験の問題を検討しているのですが、今年は何かとバタバタしておりまだ試験問題すら見ておりませんでした。

合格発表が近くなっているこの時期です。受験生の皆様はワクワクドキドキの時期も過ぎて落ち着いているかと思います。では、令和3年度行政書士試験を見てみたいと思います。今回も引き続き択一問題を見ていきます。

 

 

| 択一式 第17問(行政法)

 

選択式に引き続いて、択一式の問題も掲載しません。行政書士試験の問題は、一般財団法人行政書士試験研究センターのサイトにありますので、気になる方は各自ダウンロードしてください。PDFファイルで約570KB程度のサイズです。

第17問は行政事件訴訟法の条文の穴埋め問題です。重要条文をしっかりと読んで学習しているかどうかが問われています。組み合わせ問題ですが、テキストのみで条文をあまり読んでいない受験生にはかなり厳しい問題かもしれません。

【空欄ア】

行政事件訴訟法第25条の第2項の穴埋めです。処分の取消訴訟が提訴された場合の執行停止の条文です。選択肢を見ると“重大な損害”と“償うことのできない損害”の2つがあります。正解は“重大な損害”の方ですが、“償うことのできない損害”は義務付け訴訟での仮の義務付けや差止め訴訟での仮の差止めのときの条件です。償うことのできない損害が生じる虞があるときは、何はともあれ何らかの対応が必要ですので仮の義務付けや仮の差止めが認められています。償うことのできない損害となっていますから重大な損害でなくてもOKです。

 

行政事件訴訟法 第25条

1略

2 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。

3以下、略

 

行政事件訴訟法 第37条の5

義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。

2 差止めの訴えの提起があつた場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずること(以下この条において「仮の差止め」という。)ができる。

3以下、略

 

【空欄イ】

行政事件第36条の穴埋めです。2か所あります。無効等確認訴訟を提訴できる条件が問われています。無効確認訴訟は、(1)法律上の利益を有する者、(2)処分・採決の存否、現在の法律関係に関する訴えによって目的が達成できないもの、の2つの条件を満たさなければいけません。選択肢は“重大な損害”と“損害”がありますが、無効確認訴訟では重大な損害まで必要ではありません。軽微な損害であっても無効確認訴訟を提訴することができます。

 

行政事件訴訟法 第36条

無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。

 

【空欄ウ】

【ウ】も36条の問題です。先ほど条文を書きましたので、条文のとおりです。“現在の法律関係”が入ります。現在の法律関係に関する訴えというのは、実質的当事者訴訟と争点訴訟のことです。実質的当事者訴訟は公法上の法律関係に関する訴訟です。争点訴訟は司法上の法律関係に関する訴訟です。

 

【空欄エ】

行政事件訴訟法第37条の2の穴埋めです。2か所あります。非申請型義務付け訴訟を提訴できる条件が問われています。非申請型義務付け訴訟は、(1)重大な損害の生ずるおそれ、(2)他の適当な方法がない、の2つの条件を満たさなければいけません。選択肢には“重大な損害”と“損害”がありますが、義務付け訴訟では重大な損害がなければ提訴できません。

 

行政事件訴訟法 第37条の2

第三条第六項第一号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。

2以下、略

 

【空欄オ】

【オ】も37条2の問題です。条文を見てもらえばそのとおりですので、特に書くことはないのですが…。“他に適当な方法がない”という条件が付けられているのは、義務付け訴訟と差止め訴訟の2つだけです。義務付け訴訟と差止め訴訟は何かと条件が特殊ですので注意が必要です。行政事件訴訟の提訴の条件は表にして覚えてしまいましょう。

 

 

| まとめ

 

1 執行停止は“重大な損害”と“緊急の必要”が要件!

2 無効確認は“償うことができない損害”が要件!

3 行政事件訴訟の要件はまとめて覚える!



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