【行政書士試験】2021年度 試験問題の振り返り(第2問・第3問)

毎年、行政書士試験の問題を検討しているのですが、今年は何かとバタバタしておりまだ試験問題すら見ておりませんでした。

合格発表が近くなっているこの時期です。受験生の皆様はワクワクドキドキの時期も過ぎて落ち着いているかと思います。では、令和3年度行政書士試験を見てみたいと思います。今回から択一問題を見ていきます。

 

 

| 択一式 第2問(法学概論)

 

選択式に引き続いて、択一式の問題も掲載しません。行政書士試験の問題は、一般財団法人行政書士試験研究センターのサイトにありますので、気になる方は各自ダウンロードしてください。PDFファイルで約570KB程度のサイズです。

早速、問題を見ていきましょう。いきなり第1問が省略されていますので、第2問から見ていきます。

【肢1】

誤りです。法律の内容を広く知らしめるために、法律の公布から施行まで一定の期間が設けられます。しかし、公布からすぐに法律を施行することもできます。昔の覚せい剤取締法が即日施行されていたと思います。最近でしたら、新型コロナを指定感染症にする政令や検疫関連の政令の施行日は、公布後に施行日を修正する政令を出して公布から4日を経過した日に施行されました。

【肢2】

誤りです。施行期日は公布日とは別に定められるのが通例ですが、公布日と同日に施行日を設定することもできます。

【肢3】

誤りです。日本に所属する船舶や航空機には日本の法令が適用されます。刑法が良い例で、属し主義を原則としていますが、属人主義、保護主義などが採用されています。また、いわゆる東京条約で、航空機内で発生した犯罪は航空機の所属する国の法律が適用されます。

【肢4】

誤りです。たとえ一般法が新たに改正されたとしても、一般法と特別法の関係にある以上、特別法が一般法に優先します。特別法の当該条項の効力を否定するためには、特別法を改正しなければいけません。

【肢5】

正しいです。法の有効期間が明確に定められている場合には、有効期間を経過した後は原則として法の効力は失われます。

 

 

| 択一式 第3問(憲法)

 

このような事例の設定は時流ですね。

【肢1】

妥当です。憲法29条で財産権は絶対的に保障されていますが、2項で公共の福祉による制約があることが明記され、3項では正当な補償をすれば公共のために用いることができると書かれています。3項の例としては、道路拡張のために土地を徴用して代替地を用意する場面が典型的です。このときの犠牲を特別犠牲と呼んでいます。予防接種は集団の利益(感染の可能性を減らす)のために一定割合で発生する副反応を容認しています。つまり、公共のために一部の者の犠牲を是としているのです。直接的に国などの行為のよって損害が発生したわけではありませんので、類推適用が妥当なのだと思われます。

【肢2】

妥当です。この肢の内容が憲法解釈論なのかどうかは別として、立法のよって解決を図ることも考えられます。

【肢3】

妥当です。29条3項の特別犠牲の話ですね。人格的自律権が侵害されたとありますが、人格的自律権は憲法13条の幸福追求権でよく出てくる言葉です。自己決定権の話でも出てきますね。要するに、自分のことは自分で決める、自分らしくあるということなのですが、完全な自己決定なく予防接種を受けたことで副反応の犠牲になったとすると、人格的自律権が侵害されたと言えます。また、29条3項の損害賠償は損失補償とされています。

【肢4】

誤りです。予防接種を行う医師などは、不確実な副反応の発生を意図して注射をしているわけではないですし、保管などの場面で何らかの不手際があったとしてもただワクチンの効果が薄くなるだけで副反応が起こるようになるわけでもないと思います。しかし、注射をする際に失敗をすることで損害が生じた場合には、実施者の過失を認定することができそうです。まったく過失を認定できないというわけではないと思います。

【肢5】

妥当です。予防接種は行政指導により実施されていますが、予防接種自体を国(公務員)が行っているわけではありません。そうだとすれば、29条の財産権の侵害があったとしても、直接的に国に責任を問うことはできません。また、財産権と生命・身体に関する権利とは同視できませんので、当然に財産権と同様に扱うということはできません。しかし、生命・身体に関する権利の方が財産権よりも優越的だとすると、財産権が侵害された場合でも損失補償がされるのならば生命・身体に関する権利が侵害された場合なら当然に損失補償されるべきだとするのもうなづけます。

 

 

| まとめ

 

1 コロナ関連の問題が多い!?

2 コロナ関連法では施行日が前倒しされた例も!

3 憲法29条の2項・3項はしっかりと学習を!



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