宅建士試験のための改正民法 その6 賃貸借契約(1)

2020年4月1日に民法が大きく改正されました。宅建士(宅地建物取引士)試験を受験しようと思っている方は、元々勉強がしづらい民法が改正されて不安に思われているのではないでしょうか。

今回から民法の改正されたところのうち、宅建士試験でよく問われるだろうと思われるところを、アシュラの独断と偏見で書きたいと思います。

 

 

| 民法の主な改正点

 

改正されたところは主に契約関係です。契約関係に限れば、主な改正箇所は次の9つです。

1 消滅時効

2 解除

3 危険負担

4 契約不適合責任

5 賃貸借契約

6 法定利率

7 保証

8 債権譲渡

9 約款

これらのうちで宅建士試験でよく出題されそうなところは、消滅時効、解除、危険負担、契約不適合責任、賃貸借契約、保証でしょうか。特に契約不適合責任は怖いですね。今回は、賃貸借契約です。今回も2回に分けたいと思います。

 

 

| 賃貸借契約の改正ポイント

 

賃貸借は、当事者の一方があるものの使用お曜日収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引き渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約する契約です(民法601条)。

賃貸借契約の要件は、601条に書かれている通り3つあります。

(1)当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせること

(2)相手方が賃料を支払うこと

(3)相手方が引き渡しを受けた物を契約終了時に返還すること

この3つの要件に関することだけでなく、修繕や原状回復のルールなどが新しくなっています。賃貸借契約の改正のポイントは7つあります。

(1)借主による賃貸物返還義務の明文化

(2)借地借家法適用外の賃貸借で、存続期間の上限が50年に延長

(3)賃貸物の修繕の見直し

(4)賃貸物の一部滅失時の賃料の減額と解除の見直し

(5)賃貸借終了時の原状回復・収去義務の明文化

(6)敷金の明文化

(7)賃貸不動産の譲渡時の手続の明文化

 

 

| 賃貸物返還義務の明文化

 

従前の民法では借主の賃貸物返還義務は明文化されていませんでした。借りた者を返すのは賃貸借では当然ですので、改正民法では明文化されました。

 

 

| 存続期間の延長(借地借家法適用外)

 

借地借家法が適用されない賃貸借については、存続期間の上限が50年に延長されました。

借地借家法の適用がない賃貸借は、たとえばレンタカーなどの動産賃貸借契約、駐車場の賃貸など建物所有目的ではない土地の賃貸借などがあります。

従前の民法では最長20年でした。賃貸借契約が20年を超えていると、賃貸物の劣化がひどくなり、ボロボロのものを返してもらっても貸主としてはどうしようもないという賃貸人の事情を汲んだものでした。

現在では20年を超える賃貸借のニーズはありますし、20年を超えても十分に利用できる場合もあります。たとえば、駐車場や太陽光パネル設置用の土地の賃貸借の場合などです。

このような事情の変化から存続期間が50年に延長されました。

 

 

| 賃貸物の修繕の見直し

 

賃貸借契約中に賃貸物が破損した場合、原則として貸主に修繕義務がありますが、借主に帰責性があるときには貸主は修繕義務を負わないことが明記されました。

借主には修繕権が新設されました。ただし、条件があります。

(1)借主が貸主に修繕の必要性を通知したにもかかわらず、貸主が相当な期間内に修繕をしないとき

(2)貸主による修繕を待てない急迫の事情があるとき

この2つのいずれかの場合には借主は自ら修繕をして支出した費用を貸主に請求できます。

 

長くなりましたので、続きは次回にしたいと思います。

 

 

| まとめ

 

1 賃貸物返還義務の明文化!

2 ニーズに応えて最長期間が50年に延長!

3 借主に修繕権が新設!



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