行政書士試験の振り返り 問題7・8

2020年も11月8日(日)に行政書士試験が行われました。合格発表は2021年1月27日(水)です。合格発表まであと少しですね。受験された方は解答速報でおおよその自己採点ができているかと思います。気が気でない方もいらっしゃるでしょう。

そこで、2020年の行政書士試験の問題を振り返ってみたいと思います。記述式が終わりましたので、択一式の問題を考えていきます。著作権に引っかかる問題は除外します。今回も引き続き憲法です。

 

 

| 問題7 正解肢4

 

第三者所有物没収事件(最大判S31.11.28)の内容を問う問題です。憲法31条の適正手続の保障を学ぶ上で重要な判例です。第三者所有物没収事件は、密輸出しようとした2人が逮捕され、船上にあった第三者の物品を関税法違反によって没収された事件です。

肢ア 告知、弁明、防禦の機会の付与

付加刑として所有物を没収する場合には、告知、弁解、防禦の機会の付与が必要です。このような機会を付与せずに没収すると、適正な手続を欠いたとして財産権の侵害になります。この理は第三者の所有物を没収する場合も同じです。

肢イ 上告理由

第三者の所有物を没収する付加刑が言い渡されたときは、その付加刑は被告人に対するものですから没収が違憲だとして上告ができます。

肢ウ 上告理由

第三者の所有物が没収されると、被告人は第三者から損害賠償請求などをされることになります。そうだとすると、被告人は第三者の所有物について利害関係があることになります。利害関係がある場合には上告をすることができます。

肢エ 違憲審査権の範囲

第三者の所有物が没収されると被告人は損害賠償請求などをされるおそれがありますから、具体的な不利益を蒙っていると言えます。将来を予想した抽象的判断を下すことにはなりません。

肢オ 判決の効力が及ぶ範囲

第三者の所有物を没収する付加刑の効果は第三者にも及びます。したがって、没収の裁判によって第三者の所有権は侵害されます。

 

 

| 問題8 正解肢5

 

判決文を読んで、判決内容の理解を問う問題です。ほとんど国語の問題です。判決文を利化してから選択肢を読んでください。選択肢を先に読むと先入観が入って判決文を間違って読む可能性があります。以下、判決文の内容を簡単に整理します。

(1)食中毒事故の発生原因を公表することについて直接的な法律の規定は存在しない。

(2)食中毒の発生原因の公表は、非権力的事実行為である。

(3)非権力的事実行為は、法律上の直接の根拠がなくても直ちに違法にはならない。

(4)所管事務と全くかけ離れた事項の公表は、違法の問題が生じる。

(5)食中毒事故の発生原因の公表は、厚生省の所管事務の範囲内に含まれる。

(6)食中毒事故の発生原因の公表は、法治主義違反の違法の問題は生じない。

以上を前提に肢の記述を考えます。

肢1 侵害留保説

問題文にある“侵害留保説”は、法律の留保の性質に関する学説の1つです。侵害留保説は国民の自由や財産を侵害する行政活動には法律の根拠が必要だと考える説です。“侵害”行為が法律に“留保”されていなければいけないとします。直接私人の権利を制限したり私人に義務を課したりするものではなく、法律上の規定が存在しないことだけでは直ちに違法の問題は生じないと書かれています(2~6行目)。ですから、侵害行為説を前提としていると言えます。侵害留保説を知らないと判断できない肢です。

肢2 所管事務から逸脱した事項

判決文には、所管事務を全く逸脱した事項の公表は違法の問題が生じると書かれています(判決文6~8行目)。

肢3 情報提供型の公表の性質

直接私人の権利を制限したり私人に義務を課したりしない行為は非権力的事実行為だと書かれています(判決文3~5行目)。

肢4 公表をする法律上の根拠

食中毒事故の発生原因の公表は、直接の定めた法律の規定は存在しないと書かれています(判決文1~2行目)。

肢5 公表をする法律上の根拠

食中毒事件の発生原因の公表を直接定めた法律の着ては存在しないが、直接私人の権利を制限したり私人に義務を課したりするものではなく、法律上の規定が存在しないことだけでは直ちに違法の問題は生じないと書かれています(判決文1~6行目)。

 

 

| まとめ

 

1 第三者所有物没収事件は行政書士試験に必須の判例!

2 判決文を読んで答える問題は内容をじっくりと読む!

3 判決文はしっかりと整理してから選択肢を読む!



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