行政書士試験の憲法(地方自治)

前回と前々回で財政について書きました。今回は地方自治です。地方自治は簡単なようで覚えることや理解することが多くあります。行政書士試験では頻出事項ですので、受験生は心して学習に取り組んで欲しいと思います。

 

 

| 地方自治ってなに?

 

地方自治は住民の意思によって地方自治体が政治をすることです。明治憲法下では地方自治の規定はありませんでしたが、日本国憲法では憲法上の制度として規定されています。

地方自治の制度は制度的保障と言われています。制度的保障は制度を保障することで間接的に制度の本質的な内容を保障しようとするものです。地方自治以外にも政教分離、大学の自治、私有財産制が制度的保障だとされています。

地方自治での制度の本質的な内容は住民自治団体自治です。

1 住民自治

住民自治は、地方自治が住民の意思に基づいて行われることです。具体例としては長や議員の直接選挙、特別法の住民投票などがあります。民主主義的な側面が強いですね。

 

憲法 93条

2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

 

憲法 95条

一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

 

2 団体自治

団体自治は、地方自治が国から独立して自らの意思と責任の下で行われることです。具体例としては条例制定権などがあります。自由主義的な側面が強いです。

 

憲法 94条

地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

 

 

| 地方自治の機関

 

地方自治は地方公共団体によって行われますが、地方公共団体には2つあります。1つは都道府県、もう一つは市町村です。これらは普通地方公共団体と呼ばれています。

“普通”と言うからには“特別”もあるんじゃないか?と思ったあなた!鋭いです。特別地方公共団体もあります。東京都にある新宿区や台東区などの特別区が特別地方公共団体です。特別区は憲法上の地方公共団体ではなく、地方自治法に規定された地方公共団体です。

東京の特別区が憲法上の地方公共団体かどうかが争われた事件がありました。特別区区長公選制廃止事件(最判昭38.3.27)です。

東京都の特別区では昭和27年の地方自治法改正で議会が区長を選挙すること(議会選制)になりました。昭和32年に渋谷区長の贈収賄事件が発生したところ、渋谷区長は“渋谷区は地方公共団体だから贈収賄罪は成立しない”と主張しました。最高裁は、特別区はその実態から憲法上の地方公共団体ではないから、渋谷区長には贈収賄罪が成立すると判示しました。

地方自治法に規定された地方公共団体には特別区の他に(政令)指定都市があります。(政令)指定都市は普通地方公共団体です。

地方公共団体には長の他、議会が設置されます。長や議会は住民の直接選挙によってえらばれます。

 

憲法 93条

地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。

2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

 

 

| 地方自治体の条例制定権

 

地方自治体には団体自治として条例制定権があります。条例は法律の範囲内でなければいけません。

 

憲法 94条

地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

 

地方自治体が条例を制定できるとしても、条例で罰則を規定することができるのでしょうか。憲法31条では法律上の手続きによらずに刑罰を科すことを禁止していますので、条例で罰則を規定することはできないように思えます。

 

憲法 31条

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

 

実際に条例で罰則を設けることが罪刑法定主義に反しないかが争われました。大阪市売春取締条例事件(最判昭37.5.30)です。

昭和31年に売春目的で付きまとい行為をした被告人は、大阪簡裁で条例違反を理由罰金5000円が科せられました。被告人は“条例で罰金を科すのは罪刑法定主義に反する”と主張しました。最高裁は条例で罰則を設けるには法律の委任は必要だが、条例は民主的な過程で成立する法であるから、法律の委任が相当程度に具体的であり限定されていれば、条例で罰則を設けても合憲だと判示しました。

では、条例で財産権に制限を加えるのは違憲でしょうか。憲法29条には財産権の内容は法律で定めると書かれています。これも罰則と同じ理屈で条例による財産権の制限は許されるとされています。奈良県ため池条例事件(最判昭38.6.26)を参照してください。

 

憲法 29条

2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

 

また、条例は法令の範囲内でなければいけませんが、法令の範囲内かどうかは一般人の理解を基準とするとされています。徳島市公安条例事件(最判昭50.9.10)を参照してください。

 

 

| まとめ

 

1 地方自治の本質は住民自治と団体自治!

2 特別区は普通地方公共団体ではない!

3 条例で罰則を設けても合憲!



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