サラリーマンの場合、給料は月に1回支払われることがほとんどだと思います。しかし、どうしてもお金が足りないから給料の前借りをしたいということもありえます。昔のドラマやアニメではこのような場面がよく描写されていたように思います。
では、実際に給料を前借りすることはできるのでしょうか。今回は給料の前借りについて書きたいと思います。
| 給料の前借りはできるの?
基本的に給料の前借りはできません。もう少し丁寧に書きますと、会社から毎月1回以上の給料日に給料を貰っている場合には、会社へ前借りを申請しても会社は応じる義務はありません。通常は認められないと考えてよいです。
ただし、ある一定の場合には給料の支払いを早めてもらうことができます。労働基準法25条の場合です。
労働基準法 第25条
使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。
ここにあるとおり、出産、疾病、災害などの非常時には、すでに働いた賃金の請求が労働者からあれば会社は支払わなければいけません。
労働基準法25条については、労働基準法施行規則第9条で細かく規定されています。
労働基準法施行規則 第9条
法第二十五条に規定する非常の場合は、次に掲げるものとする。
一 労働者の収入によつて生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害をうけた場合
二 労働者又はその収入によつて生計を維持する者が結婚し、又は死亡した場合
三 労働者又はその収入によつて生計を維持する者がやむを得ない事由により一週間以上にわたつて帰郷する場合
ここで定められているのは6つです。
1 本人・家族の出産
2 本人・家族の疾病
3 本人・家族の災害
4 本人・家族の結婚
5 本人・家族の死亡
6 本人・家族のやむを得ない理由での1週間以上の帰郷
これら6つの理由以外での支払い義務はありません。
ポイントは2つです。1つは非常時の場合です。パチンコや競馬などで浪費した場合ではありません。家族が急病を患ってまとまった治療費が必要になる場合などです。
ポイントの2つめはすでに働いた分の賃金だということです。たとえば、給与の支払いが、月末締め翌月25日払の会社だとします。この会社で、3月17日に労働者が家族の急病のために賃金の支払いを求めたら、会社は2月1日から3月17日までの給料の支払いをしなければいけません。2月分だけでなく、3月1日から17日までの分も含めて支払義務があります。
1か月半ほどの給料ですから結構な額になりますが、会社としては致し方ありません。間違っても、まだ働いていない3月18日以降の給料を前借りするのではないことは覚えておきましょう。
| 給料の前借りの注意点
非常時以外では会社は給料の前借りを認めないことができます。では、会社の裁量で給料の前借りとして労働者へ支払うことができるのでしょうか。
ここで問題があります。労働基準法第17条です。
労働基準法 第17条
使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。
前借りを申請した労働者に対して親切心から給料の前払をした場合、会社が勝手に次の給料から前貸しした分を差し引くことができません。これは、労働者に働くことを条件にお金を貸して労働を強制したり退職を妨げたりすることを防止する規定です。
ですから、労働者からの依頼で給料を前貸しする場合には、事前に会社と労働者の間で次の給料から天引きをする旨を合意し文書にしておくことがトラブルを回避するために望ましいです。
給料の前借りは、正社員だけでなく、契約社員、派遣社員、アルバイト、パートも同じです。中には給料の前借り制度がある会社もあって、申請書だけで簡単に前借りができるようですね。
| まとめ
1 給料の前借りは原則として会社の恩情!
2 非常時には給料の早期支払い義務あり!
3 パートやアルバイトも正社員と同じ!