2017年5月に成立した“民法の一部を改正する法律”によって、2020年4月1日から民法のルールが改正されます。契約に関するルールの見直しは約120年ぶりといわれています。
どこがどのように変わったのかを中古住宅を購入する場面でまとめたいと思います。
| 住宅の補修の請求する法的根拠
中古の一戸建てを購入する場合に、重いもの、たとえば大きな金庫を設置したいと考えていたとします。契約の条件には重さ100㎏の金庫が置けることになっています。ところが、引渡を受けて金庫を設置したら床の強度が足りませんでした。
このよう場合、買主さんは契約とおりに100㎏の金庫を置けるように修理をして欲しいと考えます。現在の民法では、売買契約でどのような場合に修理を請求できるのかがはっきりとしていませんでした。
2020年4月1日からは、売主さんと買主さんのいずれかの落ち度(帰責事由)に応じて、売主さんは契約不適合責任を負う場合があります。買主さんは損害賠償請求や契約解除のほか、修理を請求したり代替物の引渡しを請求したり、代金の減額の請求をしたりできるようになりました。
ただし、これらの請求は引渡を受けたモノが契約に適合しないことを知ってから1年以内に売主さんに通知する必要があります。
| 買主さんの救済方法まとめ
買主さんの救済方法は落ち度(帰責事由)によって変わります。買主さんに落ち度(帰責事由)がある場合には、損害賠償請求、解除、追完請求、代金減額請求はできません。これは現在の民法でも改正民法でも同じです。
売主さんにも買主さんにも落ち度(帰責事由)がない場合はどうでしょうか。両者に落ち度(帰責事由)がない場合は、たとえば落雷で中古一戸建住宅が火災して引渡ができないとか地震で倒壊して引渡ができないとかいう場合です。
売主さんにも買主さんにも落ち度(帰責事由)がない場合、損害賠償請求はできません。解除、追完請求、代金減額請求はできます。これは改正民法によって新たに条文上の根拠ができた部分です。
売主さんに落ち度(帰責事由)がある場合はどうでしょうか。現在の民法では、損害賠償請求と解除ができます。改正民法では、損害賠償請求と解除に加えて、追完請求と代金減額請求ができるようになりました。
| その他のルール変更
売買契約での責任追及方法だけでなく、消費貸借契約や保証契約、約款を使った取引に関するルールも変更されています。賃貸借契約に関するルールの変更もありますが、後日記事に書きたいと思います。
1 消費貸借契約
お金を借りるときの契約が消費貸借契約になります。現在の民法では、金銭を交付して初めて消費貸借契約が成立することになっています。改正民法では、金銭の交付前でも消費貸借契約が成立する場合があります。ただし、貸主さんと借主さんが書面で合意をする必要があります。
しかも、金銭の交付前に消費貸借契約が成立した場合には、借主さんは金銭が交付されるまで契約を解除することができます。
また、返済期日よりも前に繰上返済する場合はいつでも返済ができることになります。ただし、貸主さんに損害が発生した場合には、借主さんはその損害の賠償をする必要があります。利息相当額については当然には損害とはならず、現に損害が生じたかどうかを個別に認定することになるようです。
2 保証契約
個人が根保証契約を締結する場合には、保証人の支払責任の上限となる“極度額”を設定しなければいけなくなります。お部屋の賃貸借契約の保証人などが根保証契約にあたる可能性があります。
また、個人が事業用融資の保証人になろうとする場合は、公証人が保証意思の確認手続ができるようになります。この場合には公正証書を作成することになります。この手続をしない場合には保証契約は無効になりますが、手続の必要がない方もいます。
3 約款
現在の民法では約款に関するルールはありません。そこで、新たに定型約款に関するルールが新設されました。
定型約款が契約の内容になるためには、2つの要件を満たさなければいけません
(1)当事者間で定型約款を契約内容とする旨の合意
(2)取引を実際に行う際に、定型約款を契約内容とする旨を顧客に“表示”しておくこと
この2つの要件を満たしたときには、たとえ顧客が定型約款の内容を知らなくても合意したとみなされます。
また、定型約款を変更する場合にも2つの条件があります。
(1)変更が顧客の一般の利益に適合する場合
(2)変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る諸事情に照らして合理的な場合
この2つの条件を満たした場合のみ約款を変更することがあります。
| まとめ
1 買主さんの救済方法が増加!
2 売主さんに帰責事由がなくても解除可能に!
3 消費貸借契約や保証契約のルールも変更!