2019年の行政書士試験は11月10日(日)に行われます。2019年度の試験の難易度は分かりませんが、出題ミスがなければ10%前後になるのではないでしょうか。
行政書士試験での一番のポイントは“記述式でどれだけ安定して得点ができるか”ではないでしょうか。受験生の皆さんは過去問や問題集で演習をしていることと思います。今回のシリーズは記述式試験(過去問)の解答への考え方を書きます。あくまでも私アシュラとして…ですので、ご了承ください。
過去問(2013年度以降)は行政書士試験研究センターのサイトにあります。
| 民法 - 不法行為
問題 (2007年度 第45問)
Aは、飼っている大型のドーベルマンを、鎖を外したまま連れて散歩に出ていたが、この犬が歩行者Bを見かけて走って行き、襲いかかってしまった。そこで、あわててBは近くのC宅敷地に飛び込み、自転車や植木鉢を壊してしまった。この場合、Cに対する損害賠償責任をBが負わないためには、どのような要件を満たす必要があるか。40字程度で記述しなさい。
問題文ではBが損害賠償責任を負わないためには“どのような要件を満たす必要があるか”を問うています。ですから、損害賠償責任を負わないための要件が書けなければ点数になりません。
この問題は条文問題です。条文を知っているかどうかで解けるかどうかが変わってきます。行政書士試験の記述式は条文の知識をそのまま問うたり、重要判例の言い回しを問うたりする問題が多いです。普段の勉強から意識をする必要があります。
条文を知らない場合、試験現場ではどう考えていきましょうか。この問題も基本的なことから考えていきます。そのために、時系列に沿って流れを整理しましょう。
1 放し飼いのドーベルマンに襲いかかられる
2 近隣の敷地に飛び込んで自転車や植木鉢を破壊
自転車や植木鉢を壊されたCは、Bに対して損害賠償をしたいと考えるでしょう。不法行為責任を問うのですね。ところが、Bにしてみるとドーベルマンに襲われたから仕方なくCの敷地に飛び込んだのです。“自分の身の安全を確保するために仕方なく自転車や植木鉢を壊した”のです。Bは自分に責任があるとは思えません。そこで損害賠償責任を回避したいと考えます。
ポイントは、“自分の身の安全を確保するため”“仕方なく自転車や植木鉢を壊した”ことです。
次に、BはAの買っているドーベルマンに襲われています。これはAの不法行為ですね。この点もポイントになります。これらをしっかりと解答に書ければ点数になります。
“BがAの不法行為から自分の身体を守るために止むを得ずCの財産を壊したこと。”(37字)
| 民法 - 贈与
問題 (2018年度 第46問)
甲自動車(以下「甲」という。)を所有するAは、別の新車を取得したため、友人であるBに対して甲を贈与する旨を口頭で約し、Bも喜んでこれに同意した。しかしながら、Aは、しばらくして後悔するようになり、Bとの間で締結した甲に関する贈与契約をなかったことにしたいと考えるに至った。甲の引渡しを求めているBに対し、Aは、民法の規定に従い、どのような理由で、どのような法的主張をすべきか。40字程度で記述しなさい。なお、この贈与契約においては無効および取消しの原因は存在しないものとする。
問題文では贈与の撤回をする場合に“どのような理由で”“どのような法的主張をすべきか”を問うています。ですから、(1)贈与の撤回が正当化される理由、(2)法的な主張を書かなければ点数になりません。
この問題は択一式で勉強された方が多いのではないでしょうか。タダでモノをあげる贈与は後悔する場面が多々あります。民法はそのような後悔に対応するための規定を置いています。本問のポイントを書き出します。
1 口頭で贈与の約束
2 BはAに甲自動車の引き渡しを要求
この2点がポイントです。基本的に契約は履行しなければ損害賠償責任を負います。これは口頭での約束でも同じです。ところが贈与には特別な規定があります。思い出せますか?
解答例 “書面によらない贈与”
次に、BはAに引き渡しを要求していますから、まだAはBに甲自動車を渡していません。贈与契約は未履行なのです。口頭での贈与契約の未履行部分については特別な規定があります。
解答例 “履行を終えていないことを理由として”
これらの条件が揃うと契約を撤回することができます。未履行部分の履行をしなくてよいという意味で“撤回”ですね。“無効”や“取消し”ではありません。これらを解答に表現します。
“書面によらない贈与のため、履行を終えていないことを理由として契約を撤回すると主張すべき。”(44字)
| まとめ
1 知らないことを問われたら基本から考える!
2 基本から外れた特別な規定には要注意!
3 無効、取消し、撤回の違いを理解!