2019年の行政書士試験は11月10日(日)に行われます。2019年度の試験の難易度は分かりませんが、出題ミスがなければ10%前後になるのではないでしょうか。
行政書士試験での一番のポイントは“記述式でどれだけ安定して得点ができるか”ではないでしょうか。受験生の皆さんは過去問や問題集で演習をしていることと思います。今回のシリーズは記述式試験(過去問)の解答への考え方を書きます。あくまでも私アシュラとして…ですので、ご了承ください。
過去問(2013年度以降)は行政書士試験研究センターのサイトにあります。
| 民法 - 不法行為
問題 (2017年度 第46問)
不法行為による損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が、いつの時点から何年間行使しないときに消滅するかについて、民法が規定する2つの場合を、40字程度で記述しなさい。
問題文では損害賠償請求権は“いつの時点から何年間行使しないときに消滅するか”を問うています。ですから、(1)いつの時点から、(2)何年間行使しないときに消滅するかを書かなければ点数になりません。
この問題は完全な条文問題です。しかも数字ですから少しでも間違えていると点数が付きません。択一試験のような問題ですね。知らなければあてずっぽうに数字を入れるしかありません。時効や除斥期間の数字は完璧に覚えてしまいましょう。20点を取れた方が多いのではないでしょうか。
“損害および加害者を知ったときから3年間、または不法行為のときから20年間行使をしないとき。”(45字)
| 民法 - 不法行為
問題 (2010年度 第46問)
以下の【相談】に対して、〔 〕の中に適切な文章を40字程度で記述して補い、最高裁判所の判例を踏まえた【回答】を完成させなさい。
【相談】
私は、X氏から200万円を借りていますが、先日自宅でその返済に関してX氏と話し合いをしているうちに口論になり、激昂したX氏が投げた灰皿が、居間にあったシャンデリア(時価150万円相当)に当たり、シャンデリアが全損してしまいました。X氏はこの件については謝罪し、きちんと弁償するとはいっていますが、貸したお金についてはいますぐにでも現金で返してくれないと困るといっています。私としては、損害賠償額を差し引いて50万円のみ払えばよいと思っているのですが、このようなことはできるでしょうか。
【回答】
民法509条は「債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。」としています。その趣旨は、判例によれば〔 〕ことにあるとされています。ですから今回の場合のように、不法行為の被害者であるあなた自身が自ら不法行為にもとづく損害賠償債権を自働債権として、不法行為による損害賠償債権以外の債権を受働債権として相殺をすることは、禁止されていません。
問題文は穴埋め方式です。流れを書きだします。
1 不法行為による債務は相殺不可(民法509条)
2 その趣旨は〇〇
3 今回の場合は相殺可能
1と3では逆の結果になっています。ということは、不法行為の被害者から相殺をする場合(自働債権)は、509条の趣旨に反しないことになります。
判例を知らなければ解けないと思います。不法行為の損害賠償との相殺禁止の趣旨を時間制限のある試験時間内に思い浮かぶ可能性はほぼ0だと思います。択一式の勉強をする中でも記述式を念頭に置きながら判例をチェックしてください。
それでも考えてみましょう。
そもそも不法行為の損害賠償は被害者の救済のためです。“他人のモノを壊したのだから弁償しろ!”という主張が認められるのは被害者の救済のためです。
では、債務者にお金がなく債務の弁済ができないからといって、債権者が債務者のモノを壊した上で、債権者から債務者に対して“返せない金と相殺だ”という主張するのはどうでしょうか。
これを認めてしまうと債権者による暴力的な行為を認めることになりますし、債権者が債務者のモノを壊してもお咎めなしの無罪放免となってしまいます。これは倫理的におかしいですね。さらに、不法行為の被害者の救済にもなりません。
そこで、509条の趣旨は不法行為の被害者の救済のために現実に損害を賠償させるとともに、債権者による不法行為の誘発を防止することにあります。これを解答に表せればOKです。
“不法行為の被害者に現実の弁済によって損害の補填をするとともに、不法行為の誘発を防止する。”(44字)
| まとめ
1 時効や除斥期間の数字は完璧に暗記!
2 条文の趣旨は内容を理解!
3 判例の勉強は択一式のときから記述式を意識!