宅建士試験を受験される方は追い込み時期ですね。忘れやすい“法令上の制限”や“宅建業法”の見直しに頑張っておられると思います。
宅建士試験受験生に苦手意識のある“権利関係”の勉強はいかがでしょうか。今回から数回にわたって苦手意識のある“権利関係”のまとめを書きたいと思います。今回は抵当権のその1です。次回に抵当権のその2を書きたいと思います。抵当権は権利関係の中では売買や賃貸借と並んで超重要分野です。
ぜひ、復習や知識整理にお役立てください。
| 抵当権の性質
1 付従性
抵当権の成立・消滅が債権の成立・消滅に依存する性質です。
2 随伴性
債権が譲渡されると抵当権も移転する性質です。
3 不可分性
債権の全額の弁済を受けるまで、抵当目的物の全部について権利を行使できる性質です。
4 物上代位性
抵当目的物の交換価値にも抵当権の効力が及ぶ性質です。
| 抵当権の効力
1 債権の範囲
・元本
・利息(満期となった最後の2年分)
2 目的物の範囲
・付加一体物
地上の樹木、家屋の増築部分、敷地の賃借権などです。ただし、(1)抵当権設定契約で特約をして登記簿に記載されたもの、(2)自己財産の減少・債権者への侵害を知りながらあえて付加したもの、(3)他人が“権原”に基づいて付加したものの3つには抵当権が及びません。
・従物
継続的助長、場所的附属、同一の所有者、独立性の4つを満たすも物です。たとえば、家屋に対する畳・建具などです。
・果実
原則、果実には抵当権の効力が及びませんが、債務不履行があった場合には不履行後に生じた果実に抵当権の効力が及びます。果実には天然果実(リンゴの木とリンゴなど)と法定果実(マンションと賃料など)の2種類がありますが、債務不履行後に生じたリンゴや賃料から貸金の回収ができます。
3 優先弁済
・原則:競売(抵当直流も可)
・順位:(1)登記の順序、(2)登記した不動産保存・工事の先取特権が優先
| 建物を保護する制度
1 法定地上権
・成立要件
(1)設定当時の建物の存在、(2)設定当時に同一人物所有、(3)競売後に別人所有
・成立要件の緩和
次の場合には、判例上、“同一人所有者”の要件だけを満たせば法定地上権が成立します。(○)
(1)土地と建物の双方に抵当権が設定された後、双方が別々のものに競落されたとき
(2)建物のみに抵当権が設定された後、抵当権実行前に土地が譲渡されたとき
(3)土地に抵当権を設定し、その当時に存在した建物が火災等で滅失した後、抵当権の時効前に建物が再築されたとき
(4)他の債権者が競売したとき
(5)土地に抵当権をした当時の未登記建物
ただし、更地の土地に建物が建築中のときは、法定地上権が成立しません。(×)
また、土地が共有物のときには法定地上権が成立しません(×)が、建物が共有物のときには法定地上権が成立します。(○)
2 一括競売
土地に抵当権を設定後に建物が築造されたときであっても、土地と建物を一括で競売できます。
3 賃借権
抵当権登記後の賃貸借の借主などは、抵当権者や買受人に賃貸借を主張することができません。ただし、全ての抵当権者が賃貸借に同意して登記がされたときは、抵当権者や買受人に賃借権の存在を主張することができます。
買受人に主張できない賃貸借の借主は、買受人が所有権を取得してから6か月以内に建物を明け渡さなければいけません。
| まとめ
1 抵当権の目的の範囲は丸暗記!
2 法定地上権は要件から成立の有無を判断!
3 賃借権との関係は重要!