宅建士試験を受験される方は追い込み時期ですね。忘れやすい“法令上の制限”や“宅建業法”の見直しに頑張っておられると思います。
宅建士試験受験生に苦手意識のある“権利関係”の勉強はいかがでしょうか。今回から数回にわたって苦手意識のある“権利関係”のまとめを書きたいと思います。今回は債権譲渡と異議なき承諾です。苦手意識の強い分野ではないでしょうか。
ぜひ、復習や知識整理にお役立てください。
| 指名債権譲渡の対抗要件
債権を譲渡すると債権者が新しくなりますが、債務者に対して譲渡を主張したい場合と第三者に対して譲渡を主張したい場合があります。それぞれ対抗要件を分けて覚えましょう。
1 債務者に対する対抗要件
・譲渡人(旧債権者)から債務者への通知
・債務者の承諾
ポイントは“譲渡人”(旧債権者)からの通知であることです。“譲受人”(新債権者)ではないので注意してください。
債務者が異議をとどめないで承諾した場合には、債務者が譲渡人(旧債権者)に対して主張できたことを、譲受人(新債権者)に対して主張できなくなります。たとえば、解除によって債権債務関係がなくなったことや同時履行の抗弁権などです。
2 第三者に対する対抗要件
・確定日付のある証書による通知(譲渡人から債務者へ)
・確定日付による証書による承諾(債務者から譲受人へ)
確定日付が要求された理由は、虚偽の書類作成の防止です。ポイントは“通知の到達の日時の先後”や“承諾の日時の先後”によって誰を正しい譲受人とするかが決まることです。“確定日付の先後”ではありませんので注意してください。
また、確定日付のある証書が同時に到達した場合は、請求をしてきた譲受人に支払わないといけません。過去問でも問われていますので要チェックです。
| 異議なき承諾で抵当権は復活する?
原則として債務を弁済すると被担保債権が消滅して抵当権も消滅します。抵当権の付従性によるものです。
原則とは違った少し変わったパターンを4つ挙げておきます。
1 無効な債権の譲渡
無効な債権はそもそも存在しませんから抵当権も存在せず、異議なき承諾があっても抵当権は復活しません。
2 債権譲渡の後に異議なき承諾があった場合
異議なき承諾をすると譲渡人(旧債権者)に対して主張できた事由(弁済、取消、解除など)を譲受人(新債権者)に対して主張できませんから、新債権者のために抵当権が復活します。
3 被担保債権消滅後、抵当不動産を譲渡して異議なき承諾をした場合
弁済や解除によって債権債務関係がなくなった後に、抵当権の付いていた不動産を第三者に譲渡した場合、その後に消滅した債権の譲渡を異議なく承諾したとしても抵当権は復活しません。
4 被担保債権消滅後、異議なき承諾をして抵当不動産を譲渡した場合
先ほどの事例とは違って、弁済や解除によって債権債務関係がなくなった後に、消滅した債権の譲渡を異議なく承諾すると、その後に抵当不動産を第三者に譲渡していたとしても、抵当権は復活します。原則から考えると、異議なき承諾をした時点で不動産の抵当権が復活していますから、抵当権付きの不動産を第三者に譲渡したということになるのでしょうね。
| まとめ
1 債務者と第三者では対抗要件が違います!
2 確定日付ある証書でも確定日付の先後で決まらない!
3 被担保債権が消滅しても異議なき承諾で抵当権が復活する!?