遺言でしかできないこと!

| 遺言の方式は厳しい

 

遺言は、遺言者の亡くなった後に効力が生じるものですので、遺言者の意思はハッキリと明確しておかなければいけません。なにしろ、亡くなった後のことですから、分かりにくいところを本人に尋ねて正しく理解することができません。

また、他人による偽造や変造を防止しなければいけません。遺言はいつでも撤回できますので、新しい遺言をすれば以前の遺言は効力を生じません。しかし、亡くなった後は新たに遺言をすることはできませんので、遺言を偽造されたり変造されたりすると偽造・変造された遺言が有効になってしまいます。

ですから遺言はかなり厳しい方式を要求されていて、少しでも不備があると無効になってしまいます。特に自筆証書遺言は遺言者一人で作りますから間違いがあっても訂正してくれる人がいません。せっかく遺言を書いたのに無効になってしまうともったいないですよね。書き方に不安がある場合は専門家に相談するか、公正証書遺言を作るようにしてください。

 

 

| 遺言でしかできないこと

 

“遺言はお金持ちがするもので、一般人の私には関係がない”と思われる方は多いと思います。しかし、実は遺言でしかできないことがあります。次のようなことは遺言でしかできません。

1 後見人・後見監督人の指定

2 相続分の指定、指定の委託

3 遺産分割方法の指定、指定の委託

4 遺産分割の禁止

5 相続人相互の担保責任の指定

6 遺言執行者の指定、指定の委託

7 遺留分減殺方法の指定

この中で重要なのは、“相続分の指定”、“遺産分割方法の指定”、“遺産分割の禁止”、“遺留分減殺方法の指定”の4つです。

相続分の指定は、誰にどれだけの“割合”で相続させるかを決めることです。遺産分割の方法の指定は、誰に何を相続させるかを決めることです。

この2つはよく似ていますが、まったく違うものです。

相続分の指定は、妻に1/3、長男に1/5、長女に1/5、○○基金に4/15を相続させるというような場合です。相続させる割合だけを決めます。

遺産分割の方法の指定は、妻に土地と家屋と現金、長男に○○銀行の預金、長女に全ての株式、○○基金に残りの財産を相続させるというような場合です。相続させるモノを決めます。このような遺言をすると遺産分割手続をしなくても各人に指定された財産が相続されます。

ただし、遺言執行者がいない場合には相続人全員で遺言とは異なる分割をすることができます。一般に遺言といえばこの内容を思い浮かべるくらいメジャーな制度です。

遺産分割の禁止は、遺産の分割をしないようにすることです。ただし5年以内に限定されます。たとえば、遺産である田畑を全ての相続人で分割して相続されてしまうと、農家として後を継ぐ長男が困ってしまいます。このようなときに長男が田畑を手に入れる手段を講じる時間的猶予を与えることができます。長男はお金を調達して他の相続人から田畑の持分を買い取ることもできます。

遺留分減殺方法の指定は、遺留分減殺の方法を“価格の割合”以外の方法に決めることです。価格の割合は相続分の割合と同じと思ってかまいません。遺言でここまでする方は少ないと思いますが、遺言書に遺留分減殺方法が書かれていても文句を言えませんのでご注意ください。

 

 

| まとめ

 

1 遺言の方式は厳格!

2 遺言でしかできないことがあります!

3 相続分の指定もできます!



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