| 内縁ってなに?
一緒に暮らしているけれど結婚をしていない方が最近増えています。若い方なら“恋人”かもしれません。しかし何年も同居生活をしていると周りの人からは夫婦だと思われていませんか?結婚はしていないけれど、夫婦のように暮らす意思があって、実際にも夫婦のように暮らしている状態を“内縁”といいます。男性を“内縁の夫”、女性を“内縁の妻”と呼びます。
単に同居しているだけの恋人とはどこが違うのでしょうか?
一番の違いはお互いに夫婦として暮らす意思です。いくら周囲から若い夫婦と思われていても、ご本人に夫婦としての意思がなければ内縁ではありません。
| 内縁と夫婦との違い
法律上の夫婦は婚姻届を提出した方です。常識からすると当たり前ですね。婚姻届を提出するときには婚姻の意思が必要ですし、結婚すると周りの人からも夫婦として扱われるでしょう。もちろん、法律上も夫婦として扱われます。
では、内縁関係と何が違うのでしょうか?
内縁関係は、先ほども書きましたとおり、夫婦として暮らす意思があって実際に夫婦として暮らしている状態です。事実としては婚姻届を提出しているかどうかの違いだけです。しかし、法律上は夫婦として扱われません。
婚姻届を提出するかどうかはご本人の自由です。同居している男女が必ず婚姻届を出さなければいけないということはありません。自由を享受して婚姻届を提出しなかったということだけで、法律上夫婦として扱われないのは不満があるのではないでしょうか?
そこで、現在では婚姻に準ずる関係として保護されています。夫婦と同等とみなされていることには次のようなものがあります。
1 夫婦と同じ権利や義務
・貞操義務
・同居・協力・扶助の義務
・婚姻費用分担の義務
・日常家事の連帯責任の義務
・帰属不明の財産の共有推定
・財産分与
・嫡出の推定
2 社会保障上の権利
・配偶者として遺族補償年金を受け取る権利
・配偶者として労働災害の遺族補償を受け取る権利
・配偶者として退職手当を受け取る権利
他方で、夫婦に認められるけれども内縁関係には認められないこともあります。
1 夫婦同姓
2 成年擬制(未成年が婚姻することで成人となる制度)
3 準正(父母の婚姻によって非嫡出子が嫡出子になる制度)
4 配偶者としての相続
同性や成年擬制、準正はまだ納得できるでしょう。婚姻が前提となる制度だからです。ところが相続はどうでしょうか?内縁関係だと相続権がありません。唯一承継できるのが、同居していた家の賃借権です。
内縁の夫が亡くなったというだけで一緒に暮らしてきた場所が奪われるのはあまりにもひどい仕打ちだという価値観から、同居していた家に住み続けることができることがほとんどです。正確には相続ではなく、被相続人の賃借権の援用と呼ばれます。
| 内縁者が相続する方法
賃借権は相続というより権利の援用です。では、本当に“相続”するにはどうすればいいのでしょうか?
1 遺言
もっとも一般的な方法は遺言をしてもらうことです。遺言で相続財産を分ける相手として指定してもらえば相続ができます。
しかし、法定相続人(親や子)の遺留分を侵害することはできません。遺留分を持っている法定相続人(親や子)がいる場合、内縁者は多くても相続財産の半分までしか相続できませんのでご注意ください。
2 特別縁故者
特別縁故者は亡くなった人の身の回りの世話をしていた人です。内縁関係にある人も特別縁故者になることができます。しかし、どのような場合でも相続できるというわけではなく、法定相続人が一人もいない場合に限られます。
特別縁故者になるには家庭裁判所に申請をして認められなければいけません。また、相続税の申告は相続を知ったときから10カ月以内にしなければいけません。さらに、相続税が加算されて通常よりも20%増えてしまいます。
このようにいろいろと不利なことがありますが、それでも遺産を受け取ることができるのは大きな利点ではないでしょうか?
| まとめ
1 内縁関係は事実上の夫婦!
2 法律上不利に扱われることも!
3 相続するなら遺言か特別縁故者で!