不法残留者は犯罪被害者にもなる!

| 不法残留と不法在留の違い

 

不法残留はオーバーステイとも言われています。この数年で増えたパターンとしては、技能実習生として入国しながら過酷な環境から逃げ出し不法残留になったというものです。不法残留は、適法に入国したのち在留期間が切れて違法な滞在になっている状態をいいます。入管法に基づいて退去強制させられます。また、刑事罰もあります(入管法70条第1項第5号)。平成29年1月1日現在で不法残留者は約6万5千人います。

不法在留は違法に入国して日本に滞在することです。入管法では罪として“不法在留罪”が規定されています(入管法70条第2項)。公訴時効の問題で法律上の矛盾を解消するために設けられたようです。

違いはお分かりいただけましたでしょうか?不法残留は正規に入国した後に違法状態になることで、不法在留は違法に入国して滞在中はずっと違法状態であることです。入国するときに適法か違法かの違いなのですね。

 

 

| 不法残留者数の推移

 

平成29年度の統計によりますと、不法残留者数が一番多い国が韓国で約1万3千人。次が中国で約9千人。3番目がタイで約6千人です。5年ほど前まで多かったフィリピンは約75%まで減っています。逆にタイは5年前と比べると約160%に増加しています。タイ同様に増加しているのがベトナムで、5年前と比べて約375%に激増です。全体で約6万5千人が不法残留になっています。

5年前からの推移を見ますと、約6万7千人(平成24年度)、約6万2千人(平成25年度)、約5万9千人(平成26年度)と順調に減っていましたが、平成27年度から約6万人、約6万2千人(平成28年度)、約6万5千人(平成29年度)と増えてきています。

不法残留者数の推移のグラフ
不法残留者数の推移

 

短期滞在を除いて、中国やベトナムからの技能実習生が断トツで多く、次いで中国・ベトナムからの留学、フィリピンから日本人と結婚して滞在する“日本人の配偶者”などが多くなっています。技能実習での不法残留者数は5年前に比べて約1000%(10倍)と他を寄せ付けない増加率です。

国・地域別、在留資格別の不法残留者数の推移
国・地域別、在留資格別の不法残留者数

 

技能実習生はいろいろと問題になっていましたが、不法残留という点でも大きな問題になっています。

 

 

 

| 不法残留者と犯罪

 

平成28年3月の統計によりますと、外国人の刑法犯の検挙人数は約6千人です。このうち不法残留者の検挙人数は約300人。割合としてはかなり少ないですね。外国人の刑法犯の約95%が正規滞在者による犯行です。そのうちの約35%が留学で滞在している人で最も多くなっています。不法残留者だからあやしいとか、正規滞在者で留学生だから安心とは言えない数字になっています。

これらは不法残留者による犯罪でしたが、逆に不法残留者が被害者になる事件もあります。

平成29年12月5日に朝日新聞が報じたニュースによりますと、技能実習生として来日したが逃げ出したのち不法に働いた土木会社で、日本人の元社員に油をかけられた火をつけられたという事件がありました。平成29年の5月のことのようです。元社員は暴行罪で起訴され懲役1年6カ月、執行猶予3年の判決が出されました。また、被害者は土木会社と示談し400万円を受け取っています。ただ、後遺症が残ったとして近く9千万円の損害賠償を求めて提訴するようです。

この事件のように、技能実習生として来日しながら不法残留になっている人数は約6500人います。技能実習終了後、または技能実習中に逃げ出し、別の職場で働くケースがほとんどだと言われています。不法残留になっていると退去強制が怖くて、被害に遭っても警察に行けないという人も多いはずです。今回の事件のような重症を負った場合にはすぐに発覚しますが、性犯罪のような露呈しにくい犯罪の被害者になることもあります。国はこれらの対策をする必要があるでしょうね。

また、在留期間が切れていることを知っていながら外国人を雇うと刑罰に処されます(入管法第73条の2第1項第1号)。外国人を雇うときは、必ず在留期間と就労資格を確認してください。場合によっては就労資格証明書の提出を求めるといいでしょう。不法就労は雇った側も罪に問われることを忘れずに!

 

 

| まとめ

 

1 不法残留と不法在留(不法入国・不法上陸)は違います!

2 不法残留者は増加傾向にあります!

3 不法残留者は犯罪の被害者にも!



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