労働市場のルールは多種多様 ~その4~

今回のシリーズは労働市場のルールをまとめています。本日は労働者派遣法の続きをまとめたいと思います。

 

| 派遣元の措置

 

1 関係派遣先への派遣の制限

派遣元が関係派遣先に労働者を派遣することはできますが、関係派遣先への派遣割合が80%以下でなければいけません。派遣割合は次のような式で計算されます。式が長くなりますので、式の中ではA、B、Cとします。

A = 全派遣労働者のグループ企業内での総労働時間

B = 60歳以上定年退職者のグループ企業内での総労働時間

C = 全派遣労働者の総労働時間

派遣割合 = ( A - B ) ÷ C

2 業務内容の情報提供

関係者へ派遣労働者について次のような情報を提供しなければいけません。関係者に知らせるのは、次に挙げるものの中であらかじめ知らせることが適当なものだけです。

・派遣労働者の数

・派遣で役務の提供を受けた者の数

・派遣料金と派遣労働者の賃金との差額の派遣料金に占める割合(マージン率)

・教育訓練に関する事項など

3 労働者派遣に関する料金の額の明示

派遣労働者を雇い入れるときや派遣しようとするとき、料金の額を変更するときには、その労働者に対して料金の額を明示することになっています。

4 均衡を考慮した待遇の確保

業務内容が同じ労働者との間で賃金水準が均衡するように考慮しつつ、業務内容や一般労働者の賃金水準を勘案して、派遣労働者の賃金を決定するように配慮します。努力義務です。

5 有期雇用派遣労働者などの雇用の安定など

特定の有期雇用派遣労働者などに次のいずれかの措置を講ずるように努めなければいけません。努力義務です。

・派遣先に、当該派遣労働者の労働契約の申込をすることを求めること(直接雇用)

・就業の機会を確保して、その機会を当該派遣労働者に提供すること(新たな派遣先の提供)

・期間のない雇用の機会を確保して、その機会を当該派遣労働者に提供すること(無期雇用)

・雇用の安定に特に資する教育訓練など必要な措置を講ずること

2018年10月から適用が始まったルールに、派遣さんの3年ルールがあります。同一の派遣先に継続して3年間労働に従事する見込みがある場合には、上の4つの努力義務が“義務”になります。

6 段階的・体系的な教育訓練など

派遣労働者が、段階的かつ体系的に必要な技能や知識を習得することができるように、教育訓練を実施しなければいけません。期間のない派遣労働者に対しては努力義務です。

また、職場や仕事などに関しての相談の機会を作ったりしなければいけません。

7 日雇い労働者の派遣の禁止

ここでの日雇い労働者は日々や30日以内の期間での雇用をいいます。原則として、この日雇い労働者を派遣してはいけません。もちろん例外もあります。

・専門的知識や技術、経験が必要で、適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと政令で定められている業務

・雇用の機会の確保が特に困難である労働者の雇用継続などを図る場合

8 派遣元責任者の選任など

派遣元は派遣元責任者を選任し、派遣元管理台帳を作成して3年間保存します。

 

| まとめ

 

1 派遣元の義務はいろいろ!

2 いわゆる3年ルールが適用されます!

3 日雇の派遣は原則禁止!



ブログランキングに参加しています。ボタンをクリックしていただけると更新の励みになります。右のサイドバーからもぜひ!(スマホの方は下部のバナーから!)


にほんブログ村 企業ブログへ

労働市場のルールは多種多様 ~その3~

今回のシリーズは労働市場のルールをまとめています。本日は労働者派遣法の途中までまとめたいと思います。

 

 

| 労働者派遣法の役割

 

労働者派遣法は“労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律”という長い名前です。一般に“労働者派遣法”と呼ばれています。

労働者派遣法の制定は意外に古く、昭和60年だそうです。派遣での就業は臨時的・一時的なものであるべきだとの基本原則に基づいて、派遣労働者の保護と雇用の安定を図っています。

労働者派遣は、雇用する労働者を他人(派遣先)の指揮命令を受けて他人(派遣先)のために労働に従事させることで、他人(派遣先)に雇用させることを約束するものは含まれません。

前回の記事の中で“職業紹介事業”について書きましたが、労働者派遣法でも似たような制度があります。“紹介予定派遣”と呼ばれているもので、派遣元が派遣労働者や派遣先について職業紹介を行ったり職業紹介を予定したりするものです。将来、派遣労働者が派遣先に雇用されることを約束するものですね。

 

| 派遣元の責務

 

1 派遣禁止業務

以前にも記事にしましたが、労働者を派遣できない業種があります。

・港湾運送業務

・建設業務

・警備業務

・医師や看護師などの医療関連業務

医療関連業務については次の例外があります。

・職業予定派遣の場合

・産前産後休業、育児休業、介護休業をする労働者の業務への派遣の場合

・一定の僻地や厚生労働大臣が定める病院などでの医業の従事者の場合

2 派遣事業の許可

労働者派遣事業をするには厚生労働大臣の許可が必要です。有効期間は、新規で3年、更新で5年です。

 

 

| まとめ

 

1 労働者派遣は臨時的・一時的!

2 派遣先での雇用もあるかも!

3 派遣禁止業務があります!



ブログランキングに参加しています。ボタンをクリックしていただけると更新の励みになります。右のサイドバーからもぜひ!(スマホの方は下部のバナーから!)


にほんブログ村 企業ブログへ

労働市場のルールは多種多様 ~その2~

前回の“労働市場のルールは多種多様”から労働市場に関連する法律をまとめています。今回は、職業安定法についてまとめたいと思います。

| 職業安定法の役割

 

職業安定法は、憲法に書かれている勤労の権利や職業選択の自由の趣旨を尊重してながら、能力に応じて職業に就く機会を与えることで、職業の安定を図って経済に寄与することを目的にしています。

この法律に基づいてハローワーク(公共職業安定所)が整備されています。公的な機関だけでなく、民間の職業紹介業者に関するルールも定められています。

 

| 求人・求職の申込

 

1 求人の申込

ハローワークだけでなく、地方自治体の無料の職業紹介事業や民間の職業紹介事業も、原則としてすべての求人の申込を受け付けなければいけません。

例外は次の3つです。

・申込内容が違法の場合

・労働条件が通常の労働条件と比べて著しく不適当の場合

・労働条件の明示がされていない場合

2 求職の申込

求人だけでなく求職の申込についても、ハローワークや地方自治体、民間の職業紹介事業者は、原則としてすべての求職の申込を受け付けなければいけません。
例外は、申込内容が違法な場合だけです。

 

| 職業紹介事業

 

民間の職業紹介事業者は、厚生労働大臣に届出をしたり許可を取ったりしなければいけません。有料の職業紹介業者と無料の職業紹介業者は分けてまとめます。

1 有料の職業紹介業者

職業を紹介するには、厚生労働大臣の許可を取ります。許可の有効期間は、新規で3年、更新で5年です。

また、職業紹介責任者を選任します。

2 無料の職業紹介業者

無料の職業紹介業者は4つに分けられています。

・一般の職業紹介業者

厚生労働大臣の許可が必要で、許可年数は、新規・更新とも5年です。職業紹介責任者の選任も必要です。

・学校など

学校が職業を紹介する場合には、厚生労働大臣に届出が必要です。職業紹介責任者の選任は必要ありません。

・特別の法人

特別の法人は、特別な法律によって設立された一定の法人のことです。厚生労働大臣に届出をします。学校とは違って、職業紹介責任者の選任が必要です。

・特定地方公共団体

地方公共団体が職業を紹介する場合です。厚生労働大臣に通知をします。職業紹介責任者の紹介は必要ありません。

 

| 労働者の募集

 

求人のときに第三者に求人業務を委託することができます。委託募集と呼ばれているようです。第三者に報酬を支払う場合と報酬を支払わない場合があります。

1 報酬なしの委託募集

求人をする方や募集受託者は、応募してきた労働者からどのような報酬も受け取ってはいけないことになっています。

また、求人をする方は原則として募集受託者に報酬を与えてはいけません。賃金や給料などを支払う場合や、厚生労働大臣の認可に関係する報酬は、例外として認められています。

報酬のない委託募集には厚生労働大臣へ届出をしなければいけません。

2 報酬ありの委託募集

求人をする方や募集受託者が報酬を労働者から報酬を受け取ってはいけないこと、求人をする方が募集受託者に報酬を支払ってはいけないことは同じです。募集委託者への報酬の例外も同じです。

異なっているのは、厚生労働大臣の許可が必要なことと、あらかじめ報酬の金額について厚生労働大臣の認可をもらう必要があることです。届出だったり許可だったりしてややこしいですね。

 

| 労働者供給事業

 

労働者を派遣する場合には労働者派遣法という法律でルールが決められています。労働者派遣法の労働者派遣に含まれないものについてルールが定められています。

原則として、労働者供給事業を行ったり、労働者供給事業者から労働者の供給を受けて指揮命令下で労働させることは禁止されています。

例外として、労働組合などが厚生労働大臣の許可を受けたときは、無料の労働者供給事業を行うことができます。もちろん、労働者派遣法に従って労働者を派遣することもできます。

次回、労働者派遣法についてまとめたいと思います。

 

| まとめ

 

1 職業安定法はハローワークなどのルール!

2 職業の紹介は学校や地方自治体もすることができます!

3 労働者の募集を委託することができます!

4 労働者派遣法以外の労働者の供給は原則として禁止!



ブログランキングに参加しています。ボタンをクリックしていただけると更新の励みになります。右のサイドバーからもぜひ!(スマホの方は下部のバナーから!)


にほんブログ村 企業ブログへ

労働市場のルールは多種多様

| 労働三法とその他のルール

 

労働関係の法律はたくさんありますが、基本となる法律は3つです。労働基準法、労働関係調整法、労働組合法です。中学校の社会の授業みたいになってしまって申し訳ございません。

その他にもたくさんの法律があります。労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、雇用保険法、労働保険料徴収法などありますが、今回は労働市場のルールについてまとめたいと思います。

 

| 基本法は雇用対策法

 

労働市場に関連する法律だけでも、たとえば職業安定法、職業能力開発促進法、高年齢者雇用安定法、障害者雇用促進法など多くの法律があります。私は社会保険労務士の勉強をするまで全く知りませんでした。

基本法である雇用対策法では、募集や採用での年齢についてや外国人雇用状況の届出などのルールが定められています。基本法ですから細かくはありませんが、他の法律の指針になります。

雇用対策法の目的は、一言でいうと完全雇用です。少子高齢化による労働人口の変化や経済社会情勢の変化に対応できるようにする総合的なルールです。

 

| 雇用対策法のルール

 

1 募集・採用の年齢に関する均等な機会の確保

労働者の募集や採用の時に、原則として年齢にかかわりなく均等に機会を与えることになっています。もちろん例外もあります。

・定年があって定年年齢を上限とする場合

・労働関係の法律で就業などが禁止・制限されている場合

・長期でキャリアの形成を目的としている場合など一定の場合

2 再就職援助計画

経済的な事情で事業規模を縮小する場合など、1か月以内に30人以上の離職者が生じる場合には、最初の離職者が出る日より1か月前までに再就職援助計画を作成します。

3 大量雇用変動の届出

再就職援助計画を作成する場合には、最後の離職者が出る日よりも1か月以上前に大量離職届を、公共職業安定所長を経由して厚生労働大臣に提出します。自己都合の退職、自己の責めによる退職、天災事変などのやむを得ない事情での廃業による退職などを除きます。

4 外国人雇用状況の届出

外国人を雇用したり外国人が離職したりする場合には、外国人雇用状況届出書を作成して、氏名や在留資格、在留期間などを厚生労働大臣に届け出ます。雇用保険に入っている場合には、資格取得届や資格喪失届も併せて届け出ます。

 

| まとめ

 

1 労働関係のルールは労働三法以外にもたくさん!

2 労働市場のルールは雇用対策法が基本!

3 採用での年齢や外国人の雇用にもルールがあります!



ブログランキングに参加しています。ボタンをクリックしていただけると更新の励みになります。右のサイドバーからもぜひ!(スマホの方は下部のバナーから!)


にほんブログ村 企業ブログへ

ストレスチェックを受けますか? ~その3~

前回前々回と健康診断について一般健康診断と特殊健康診断をまとめました。今回はその他の健康診断などをまとめたいと思います。

 

| その他の健康診断

 

1 臨時健康診断

事業場で職業性の疾患が多発した場合や有害物の大量漏洩があった場合などに、都道府県の労働局長が指示して検査をします。労働局長は労働衛生指導医の意見に基づいて、指示を出すかどうかを判断します。

2 自発的健康診断

深夜業に従事して常時使用される労働者は、深夜業が6か月間を平均して4回以上/月の場合には、自分で受けた健康診断の結果を3か月以内に事業者に提出することができます。“常時使用”“深夜業”“6か月平均4回以上/月”がポイントです。

3 労働者指定医師による健康診断

事業者が指定した医師などの健康診断を労働者が拒否した場合、労働者は他の医師や歯科医師の健康診断を受けて書面を事業者に提出します。

 

 

| ストレスチェック

 

ストレスチェックは一定の規模の事業所に義務付けられています。心理的な負担について検査します。

常時50人以上の労働者を使用している事業場では、ストレスチェックが義務になっています。常時50人未満の労働者を使用する事業場では努力義務です。

対象は常時使用する労働者で、1年以内ごとに1回、定期に検査します。検査をするのは、医師、保健師、研修を受けた看護師・精神保健福祉士です。

実施するにあたって、解雇・昇進・異動について直接権限を持つ監督的地位にある人は実施事務ができません。監視しているみたいになりますものね。

検査項目は次の3つです。

・職場における心理的な負担の原因

・心理的な負担による心身の自覚症状

・職場での他の労働者による当該労働者への支援

検査をした医師などからの検査の結果は基本的に労働者に通知されます。事業者への通知は労働者の同意がなければできません。

検査結果の報告を受けた場合は1年以内ごとに1回、定期に所轄の労働基準監督署長に提出します。また、検査結果を分析する努力義務が課せられていて、心理的な負担を軽減するための措置を講ずる努力義務も課せられています。

 

| 面接指導

 

面接指導には2つあります。一つは長時間労働に関する面接指導、もう一つはストレスチェックに基づく面接指導です。どちらも労働者から申し出があった時に事業者は遅滞なく面接指導をします。

1 長時間労働に関する面接指導

残業時間が1月100時間超の場合、かつ疲労の蓄積が認められる労働者が対象です。ただし、前月に面接指導を受けていて医師が面接指導の必要がないと認めた労働者については除外されます。

面接指導では、次のことを確認します。

・労働者の勤務の状況

・労働者の疲労の蓄積の状況

・その他、労働者の心身の状況

会社の産業医は、面接指導の申し出をするように勧奨することができます。面接指導をした場合、医師の意見を聞いたうえで必要があると認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などの措置を講じます。

2 ストレスチェックに基づく面接指導

検査の結果、心理的負担の程度が高くて面接指導を受ける必要があると医師などが認めた労働者が対象です。

面接指導では次のことを確認します。

・労働者の勤務状況

・労働者の心理的な負担の状況

・その他、労働者の心身の状況

長時間労働に関する面接指導と同様に、面接指導をした場合には、医師の意見を聞いたうえで必要があると認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などの措置を講じます。

 

| まとめ

 

1 深夜業の方は自発的な健康診断の結果を提出できます!

2 ストレスチェックは50人以上の事業場での義務です!

3 面接指導の申出ができる場合があります!



ブログランキングに参加しています。ボタンをクリックしていただけると更新の励みになります。右のサイドバーからもぜひ!(スマホの方は下部のバナーから!)


にほんブログ村 企業ブログへ
Translate »