毎年、行政書士試験の問題を検討しているのですが、今年は何かとバタバタしておりまだ試験問題すら見ておりませんでした。
合格発表が近くなっているこの時期です。受験生の皆様はワクワクドキドキの時期も過ぎて落ち着いているかと思います。では、令和3年度行政書士試験を見てみたいと思います。今回も引き続き択一問題を見ていきます。
| 択一式 第15問(行政法)
選択式に引き続いて、択一式の問題も掲載しません。行政書士試験の問題は、一般財団法人行政書士試験研究センターのサイトにありますので、気になる方は各自ダウンロードしてください。PDFファイルで約570KB程度のサイズです。
第15問は再調査の請求に関する問題です。肢の1つが再調査の請求の問題というのはよくあると思いますが、全般的に再調査の請求を問うてくるのは珍しいのではないでしょうか。再調査の基本的な条文は5条、6条、54条~61条です。そのほかには22条(誤った教示をした場合)などにも記述があります。
【肢1】
正しいです。原則として、処分庁以外の行政庁に対して審査請求ができる場合にでも、処分庁に再調査の請求をすることはできます。ただし、すでに審査請求をしてしまっている場合には再調査の請求はできません。再調査よりも審査請求の方が強力な不服申し立てですので、それが行われた以上、再調査がなされても意味がないからです。
行政不服審査法 第5条
行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。ただし、当該処分について第二条の規定により審査請求をしたときは、この限りでない。
2 略
【肢2】
誤りです。原則として、再調査の請求をした後は、再調査の請求の決定の後でなければ審査請求をすることはできません。例外は2つです。3か月経っても再調査の請求の決定がない場合、その他再調査の請求の決定がないことに正当な理由がある場合、です。
行政不服審査法 第5条
略
2 前項本文の規定により再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定を経た後でなければ、審査請求をすることができない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 当該処分につき再調査の請求をした日(第六十一条において読み替えて準用する第二十三条の規定により不備を補正すべきことを命じられた場合にあっては、当該不備を補正した日)の翌日から起算して三月を経過しても、処分庁が当該再調査の請求につき決定をしない場合
二 その他再調査の請求についての決定を経ないことにつき正当な理由がある場合
【肢3】
誤りです。不作為については審査請求ができることになっています。
行政不服審査法 第3条
法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、次条の定めるところにより、当該不作為についての審査請求をすることができる。
この第3条は再調査の請求では準用されていませんので、不作為については再調査の請求はできません。
行政不服審査法 第61条
第九条第四項、第十条から第十六条まで、第十八条第三項、第十九条(第三項並びに第五項第一号及び第二号を除く。)、第二十条、第二十三条、第二十四条、第二十五条(第三項を除く。)、第二十六条、第二十七条、第三十一条(第五項を除く。)、第三十二条(第二項を除く。)、第三十九条、第五十一条及び第五十三条の規定は、再調査の請求について準用する。この場合において、別表第二の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。
【肢4】
誤りです。行政不服審査会等への諮問の条文は43条です。原則として、審査庁は審理員意見書が提出されたときは行政不服審査会などに諮問をしなければいけません。例外規定はありますが、例外の中に再調査の請求は入っていません。例外規定は長くなるので引用しません。ご了承ください。
行政不服審査法 第43条
審査庁は、審理員意見書の提出を受けたときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、審査庁が主任の大臣又は宮内庁長官若しくは内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法第三条第二項に規定する庁の長である場合にあっては行政不服審査会に、審査庁が地方公共団体の長(地方公共団体の組合にあっては、長、管理者又は理事会)である場合にあっては第八十一条第一項又は第二項の機関に、それぞれ諮問しなければならない。
一以下、略
2以下、略
では、審理員の意見書の提出について再調査の請求にも規定があるのでしょうか。実は、準用規定の66条に執行停止の25条が入っています。25条3項以外は再調査の請求に準用されています。そうだとすれば、審理員が意見書を提出する場面はあることになりますので、意見書が提出されたら行政不服審査会等へ諮問をすることになります。
【肢5】
誤りです。請求人や参加人の申し出があったときは、審理員は口頭で意見を述べる機会を与えなければいけません。
行政不服審査法 第31条
審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者(以下この条及び第四十一条第二項第二号において「申立人」という。)に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。
2以下、略
この条文は、再調査の請求でも5項を除いて準用されています(行政不服審査法61条)。
| まとめ
1 再調査の請求は審査請求をしていないときだけ!
2 不作為では再調査の請求はできない!
3 再調査の請求でも意見を述べる機会がある!