毎年、行政書士試験の問題を検討しているのですが、今年は何かとバタバタしておりまだ試験問題すら見ておりませんでした。
合格発表が近くなっているこの時期です。受験生の皆様はワクワクドキドキの時期も過ぎて落ち着いているかと思います。では、令和3年度行政書士試験を見てみたいと思います。今回も引き続き択一問題を見ていきます。
| 択一式 第8問(憲法)
選択式に引き続いて、択一式の問題も掲載しません。行政書士試験の問題は、一般財団法人行政書士試験研究センターのサイトにありますので、気になる方は各自ダウンロードしてください。PDFファイルで約570KB程度のサイズです。
第7問は省略されていましたので、今回は第8問を解いてみたいと思います。
法の一般原則に関する問題です。判例問題です。ちょっと抽象的でわかりにくい問題かもしれません。判例を知らなくても常識的に妥当な結論を導き出したい問題です。
【肢1】
誤りです。社会情勢の変化によって継続的な施策を変更することは当然に行われるべきだと思います。逆に社会情勢の変化を鑑みずに施策を継続するのは人員と金員の無駄です。住民に必要とされる施策であれば社会情勢が変化していないということになりますしね。
【肢2】
誤りです。租税法律関係で信義則の法理の適用があるかが問われています。原則として、租税関係は公平・平等が強く求められます。不公平があり不平等感が世間に蔓延すれば誰も納税しなくなりますよね。ただ、これにも例外はありまして、公平・平等を貫けば正義に反するような場合にまで保持すべきものではありません。租税関係においては公平・平等が正義だから原則になっているのですから。
【肢3】
誤りです。行政手続きにおいても権利の濫用は禁止されます。正当な権利の行使ではないからです。地域環境を守るという公益上の要請から児童遊園設置許可処分が行われたとしても、著しい行政権の濫用があれば児童遊園設置許可処分は取り消されるべきです。行政権の濫用がない状態でもう一度児童遊園設置許可の審査をすればいいだけです。
【肢4】
妥当です。地方公共団体の権利では消滅時効の援用を必要としない理由として、権利の性質上、適正・画一的に処理することが行政事務処理上の便宜であり、住民にとっても平等であることとされています。とすれば、時効の援用という制度自体が排されていると考えられますので、地方公共団体の債務についても消滅時効の援用は必要ないことになります。
【肢5】
誤りです。国家公務員の事故に関連して国などの安全配慮義務が争われて事例はいくつもあります。そして、どの判例でも国の安全配慮義務を認めています。また、陸上自衛隊が車両整備中にトラックにはねられて死亡した事案(最判S50.2.25)では、安全配慮義務は特別な関係にある公務員であったとしても一般と同様であって、安全配慮義務が尽くされていてもなお発生する災害に対して国家公務員災害補償法などがあるとされています。つまり、安全配慮義務が尽くされていない場合には、国家公務員災害補償法による補償だけでなく、安全配慮義務違反による損害賠償が認められました。
| まとめ
1 行政の特殊性の例外も勉強を!
2 社会情勢の変化や権利の濫用などの例外も確認!
3 公務員の雇用関係はかなり特殊!