2020年4月1日に民法が大きく改正されました。宅建士(宅地建物取引士)試験を受験しようと思っている方は、元々勉強がしづらい民法が改正されて不安に思われているのではないでしょうか。
今回から民法の改正されたところのうち、宅建士試験でよく問われるだろうと思われるところを、アシュラの独断と偏見で書きたいと思います。
| 賃貸借契約の改正ポイント
賃貸借契約の改正のポイントは7つあります。
(1)借主による賃貸物返還義務の明文化
(2)借地借家法適用外の賃貸借で、存続期間の上限が50年に延長
(3)賃貸物の修繕の見直し
(4)賃貸物の一部滅失時の賃料の減額と解除の見直し
(5)賃貸借終了時の原状回復・収去義務の明文化
(6)敷金の明文化
(7)賃貸不動産の譲渡時の手続の明文化
| 賃貸物の一部滅失時のルール
賃貸物が一部滅失して使用収益できる価値が減った場合、賃料が当然に減額されることになりました。従前の民法では賃料減額の請求をしなければ減額されませんでした。
今回の改正のポイントは“当然の減額”だけではありません。一部滅失以外の場合であっても、使用収益ができなくなった場合には使用収益できなくなった部分の割合で賃料が減額されることになりました。
一部滅失以外で使用収益ができない場合は、たとえば洪水による床上浸水をした飲食店などが考えられます。飲食店では衛生管理上床上浸水をした店舗での経営は難しくなると思われます。このような場合には使用収益ができなくなった場合にあてはまるのではないでしょうか。
さらに、賃貸物が一部滅失して契約の目的を達成することができなくなった場合、借主の過失に関係なく借主から賃貸借契約を解除できるようになりました。
従前の民法では借主に過失がある場合の賃貸物の滅失では借主からの解除はできませんでした。借主の過失がある場合の賃貸物の滅失については、別途貸主から借主に損害賠償請求をして解決をすることができます。ですから、目的が達成できない場合にまで賃貸借契約を継続させる意味はないとされました。
| 原状回復・収去義務の明文化
賃借人は原則として賃貸物の原状回復義務を負います。ただし、通常損耗や賃借人に帰責性がない損傷は貸主が修繕をします。
原状回復義務は、賃貸借契約が終了したときに借主は貸主に賃貸物を返還しますが、返還するときには契約をした当時の状態に戻さなければいけないとする義務です。
従前の民法では借主の当然の義務として条文で規定されていませんでしたが、改正民法では明文化されました。
| 敷金の明文化
従前の民法では敷金について全く規定がありませんでした。改正民法では裁判例で確立した敷金のルールが明文化されています。
敷金は、賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で賃借人から賃貸人に交付される金員のことです。最近の賃貸借では敷金が必要な物件は減ってきています。
敷金は貸主が借主から預かっているお金ですから、使わなければ返還しなければいけません。敷金から差し引くことができるのは未払いの賃料と原状回復義務の履行費用だけです。
敷金と似たものに“保証金”があります。店舗の賃貸借ではよく目にする文言です。この保証金も敷金と同じルールが適用されます。
| 賃貸不動産の譲渡時の手続の明文化
貸主が変わった場合のルールです。収益物件の売買は盛んにおこなわれています。賃貸借契約での賃貸人の地位も新所有者に移転するのかは問題になっていました。
裁判例では、賃貸借の対抗要件を備えた賃貸不動産が譲渡された場合、原則として賃貸人の地位も新所有者に移転することになっていました。ただし、新所有者が賃借人に賃料の支払を請求する場合などは、新所有者が所有権の移転登記を済ませていなければいけません。
これらの裁判例が明文化されました。
| まとめ
1 使用収益できなくなれば当然に減額!
2 敷金の定義やルールを明文化!
3 裁判例を明文化したケースが多い!