2020年も11月8日(日)に行政書士試験が行われました。合格発表は2021年1月27日(水)でした。
合格された方、おめでとうございます!登録をして行政書士としてがんばろう!と思われる方もいらっしゃると思います。よろしくお願いします。
惜しくも不合格の方、お疲れ様でした。2021年の試験も受験しようと思われる方は、どうぞこのブログの試験問題検討ページをご覧になってください。試験合格にお役に立てると嬉しいです。
さて、2020年の行政書士試験の問題を振り返ってみたいと思います。記述式が終わりましたので、択一式の問題を考えていきます。著作権に引っかかる問題は除外します。今回も引き続き行政法です。
| 問題19 正解肢3
行政事件訴訟法の義務付け訴訟に関する問題です。義務付け訴訟はよく出題されますので、しっかりとした学習が必要です。
肢1 申請型義務付け訴訟
申請型義務付け訴訟では、取消訴訟または無効確認訴訟を併合して提起しなければいけません。
肢2 義務付け判決の不実行
行政庁が義務付け判決に従わなかったとしても、裁判所は行政庁の代わりに処分を行うことはできません。
肢3 義務付け訴訟の拘束力と第三者効
義務付け訴訟では、取消訴訟の拘束力の条文(行政事件訴訟法33条)を準用しています(行政事件訴訟法38条1項)。しかし、第三者効の条文(行政事件訴訟法32条)は準用していません。
肢4 仮の義務付け訴訟
仮の義務付け訴訟を提起するには、義務付け訴訟を提起する必要があります。義務付け訴訟が提起された場合に仮の義務付け訴訟の提起が可能になります。
肢5 重大な損害を生ずるおそれ
非申請型義務付け訴訟は、重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに提起できます。申請型義務付け訴訟の提起にはこのような条件はありません。差止め訴訟の提起には重大な損害を生ずるおそれが必要です。ただし、損害を避けるため他に適当な方法がないときは、重大な損害を生ずるおそれがなくても差止め訴訟を提起できます。このような条件は訴訟類型ごとに表にして覚えることをおすすめします。執行停止の要件とも比較しておきましょう。
| 問題20 正解肢4
国家賠償法に関する問題です。判例の内容を問うています。組合せ問題です。
肢ア 複数の公務員による損害(最判S57.4.1)
複数の公務員による職務上の行為によって他人に損害が生じた場合、直接の原因となる違法行為が特定できず個々の行為と損害との因果関係が分からなかったとしても、国や地方公共団体は損害賠償責任を負うことがあります。
肢イ 所得税の更正処分(最判H5.3.11)
税務署長の更正処分が誤っていたとしても、税務署長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていたときは違法だとはされません。漫然と更正処分を行っていた場合には違法だとされる可能性があります。
肢ウ 賠償責任の性質(最判S30.4.19)
違法行為を行った公務員個人を被告とする損害賠償請求訴訟は、国や地方公共団体が損害賠償責任を負うのであるから公務員個人を被告としても解決しません。ですから、理由がないとして棄却されます。被告を誤ったという不適法での却下ではありません。
肢エ “その職務を行うについて”の意味(最判S31.11.30)
公務員が権限行使の意思で行う行為だけでなく自己の利益を図る意図であったとしても、客観的に職務遂行の外形(たとえば制服を着ていたなど)を備えていれば“その職務を行うについて”の要件を満たします。
| まとめ
1 義務付け訴訟は頻出分野!
2 提訴するための要件は表でまとめる!
3 職務遂行は客観的に外形で判断!