行政書士試験の振り返り 問題17・18

2020年も11月8日(日)に行政書士試験が行われました。合格発表は2021年1月27日(水)です。合格発表まであと少しですね。受験された方は解答速報でおおよその自己採点ができているかと思います。気が気でない方もいらっしゃるでしょう。

そこで、2020年の行政書士試験の問題を振り返ってみたいと思います。記述式が終わりましたので、択一式の問題を考えていきます。著作権に引っかかる問題は除外します。今回も引き続き行政法です。

 

 

| 問題17 正解肢4

 

行政事件訴訟法の訴えの利益に関する問題です。判例の内容を問うています。組合せ問題です。訴えの利益はややこしいですので、重要判例を表にまとめて覚えることをおすすめします。

肢ア 森林法保安林指定解除処分事件(最判S57.9.9)

保安林の指定が解除されることで洪水や渇水の影響を受ける一定範囲の住民には原告適格がありますが、洪水や渇水のおそれがなくなった場合には訴えの利益は失われます。

肢イ 土地改良事業の施工認可処分事件(最判H4.1.24)

土地改良事業の工事が完了して原状回復が不可能になったとしても、施工認可処分の取消を求める訴えの利益は消滅しません。原状回復が不可能であるという事情は事情判決として考慮されます。

肢ウ マンション建築確認取消請求事件(最判S59.10.26)

建築工事が完了した場合、建築確認の取消を求める訴えの利益は消滅します。建築確認がなければ工事ができないだけで、建築工事が完了した後になっては建築確認の有無は問題にならないからです。

肢エ 市街化調整区域の開発許可取消事件(最判H27.12.14)

最新判例です。市街化調整区域の開発行為が終了して検査済証の交付があったとしても、開発許可の取消を求める訴えの利益は消滅しません。市街化区域での同様の事例では訴えの利益が消滅するとしています。この違いが生じるのは、市街化区域はすでに市街地であったり今後市街地にする予定の区域(住宅密集地域)で、市街化調整区域は市街化を抑制する区域(田園地帯)だという違いからです。つまり、市街化区域で開発許可は取り消されたとしても他の制限に従う限り建築が可能であるのに対して、市街化調整区域で開発許可が取り消されると未だ検査済証の交付を受けた段階では予定建築物の建築が不可能になってしまうのです。ですから、市街化調整区域での開発許可の取り消しを求める訴えの利益があります。

 

 

| 問題18 正解肢2

 

行政事件訴訟法の出訴機関に関する問題です。

肢1 取消訴訟の出訴期間

取消訴訟の出訴期間は、処分または裁決があったことを知った日から6か月間または処分または裁決のあった日から1年間です。出訴期間を過ぎても正当な理由があれば提訴可能です。

肢2 審査請求後の取消訴訟の出訴期間

審査請求後の取消訴訟の出訴期間は、裁決があったことを知った日から6か月間、または裁決の日から1年間です。出訴期間が過ぎても正当な理由があれば提訴可能です。

肢3 不作為の違法確認訴訟の出訴期間

不作為の違法確認訴訟では出訴期間が設けられていません。

肢4 義務付け訴訟の出訴期間

義務付け訴訟では出訴期間が設けられていません。

肢5 差止め訴訟の出訴期間

差止め訴訟では出訴期間が設けられていません。

 

 

| まとめ

 

1 訴えの利益の喪失は理由まで押さえて!

2 訴えの利益の重要判例は表にまとめてチェック!

3 出訴期間があるのは取消訴訟だけ!



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