パソコンやスマートフォンによるインターネットの利用拡大に伴って、2019年はペーパーレス社会の実現に向けて、様々な取り組みがなされました。労働条件通知書の電子化の解禁、行政手続の電子化・ペーパーレス化の推進、ビジネス文書の電子化・ペーパーレス化の規制緩和など、多くの取り組みが始まっています。特に、行政手続の電子化によってインターネット上で多くの手続きができるようになってきています。
不動産業界にも電子化・ペーパーレス化の波が押し寄せてきました。
| 重要事項説明書の電子化
不動産取引に必須な書類として、重要事項説明書と契約書があります。この2つは宅建業法によって作成と交付が義務付けられています。
重要事項説明書は、契約に先立って重要事項の説明を行うための書面です。説明項目がかなりたくさんあり、契約書の読み合わせなども行うため、重要事項の説明には長い時間がかかります。売買では1時間以上、賃貸では30分以上の時間がかかることが多いです。
お客様から制度や法基準の内容の質問があった場合には、売買では2時間を超えることもあります。
これだけ長い時間がかかると、何が重要で何が重要でないのかが分かりにくくなるという批判があります。そのため、購入者や賃借人が書面を読めば理解できるような統一的な項目をピックアップして、それらの項目について事前に購入者や賃借人の同意があれば重要事項の説明を省略できるような提言がなされているようです。
ちなみに、重要事項説明は必ず宅地建物取引士(宅建士)が行います。重要事項の説明をしている間、宅建士は宅建士証を机の横においていつでも確認ができるようにしておきます。
重要事項説明の一部省略とは別に、重要事項説明書の電子化も提言されてきました。その甲斐があって、2019年10月から国土交通省の主導で“賃貸契約における重要事項説明書等の電磁的方法による交付の社会実験”が始まりました。
賃貸借契約に限ったことではありますが、重要事項説明書は多くの場合10ページ以上の書類になりますので、これが電子化されたことで書類の紛失が減りますし、補完が容易になります。
ただ、いまだにIT重説が普及していないことから重要事項説明は対面で行っており、賃借人の負担は軽くなっていません。IT重説はインターネット上のビデオ通話で行うため、賃借人側と業者側の両者で環境が整えられていなければいけません。特に高齢者では対応が難しくなっています。
| 不動産取引の電子化の問題点
不動産取引で電子化・ペーパーレス化が進められています。メリットとして、(1)不動産屋に行かなくてもインターネット上で宅建士の説明を受けながら複数の物件から入居を希望する物件を選んで契約することができるようになること、(2)重要事項説明のために不動産屋へ行く負担がなくなること、(3)賃借人が納得できるまで時間をかけて重要事項説明をすることができるようになること、(4)宅建士が自宅から重要事項説明ができるようになることなどが挙げられています。
しかし、問題点が全くないわけではありません。現地に足を運ばなくても物件の詳細が分かるのか、現地で物件を見て初めて分かることがあるのではないか、不動産屋はIT重説をするパソコンを事務所に設置するのか、宅建士の自宅を事務所として届出をして宅建士の自宅で重要事項説明をするのかなど、まだまだメリットを活かしきれない状況だと思います。
| まとめ
1 賃貸借契約で重要事項説明書の電子化実験!
2 IT重説との組み合わせで自宅に居ながら契約までOK!
3 不動産取引での電子化はあまり進んでいない!?