宅建士試験を受験される方は追い込み時期ですね。忘れやすい“法令上の制限”や“宅建業法”の見直しに頑張っておられると思います。
宅建士試験受験生に苦手意識のある“権利関係”の勉強はいかがでしょうか。今回から数回にわたって苦手意識のある“権利関係”のまとめを書きたいと思います。今回は相続のその2です。相続はそれほど多く出題されていませんが、細かい知識が問われています。基本を押さえた上で知識を上乗せしてください。
ぜひ、復習や知識整理にお役立てください。
| 相続の承認と放棄
1 承認や放棄の期間
相続があったことを知った日から3か月以内
2 承認や放棄の方法
・単純承認
被相続人の権利義務をすべて承認する方法です。次のことをすると単純承認されたとみなされます。
(1)相続人が、相続財産の全部または一部を処分したとき。
(2)相続人が、相続財産の全部または一部を隠匿、消費、悪意で財産目録へ記載しなかったとき。
(3)相続があったことを知った日から3か月が過ぎたとき。
・限定承認
相続人のプラスの財産の限度でマイナスの財産を相続する方法です。相続があったことを知った日から3か月以内に、相続財産の目録を家庭裁判所に提出して、相続人全員で限定承認をすることを申述します。
・放棄
被相続人の権利義務をすべて拒絶する方法です。相続があったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所に申述します。放棄をすると代襲相続はされません。
| 相続人がいないとき
1 特別縁故者への分与
内縁の妻、事実上の養子、配偶者の連れ子、老人ホームなどが家庭裁判所に請求をして認められると、相続財産の全部または一部が分与されます。
2 国庫への帰属
相続人がおらず特別縁故者からの請求もない場合には、相続財産は国庫に帰属します。ただし、共有物の被相続人の共有持分は他の共有者に帰属します。
| 遺言
1 遺言者
満15歳以上であれば単独で遺言できます。被保佐人・被補助人も単独で遺言できます。成年被後見人は医師2人以上の立会いの下に、判断能力が一時回復したときに単独で遺言できます。
2 方式
・普通方式
(1)自筆証書遺言、(2)公正証書遺言、(3)秘密証書遺言
・特別方式
(1)一般危急時遺言、(2)難船危急時遺言、(3)一般隔絶地遺言、(4)船舶隔絶地遺言
3 撤回
遺言者が以前の遺言を撤回するときには、後の遺言で以前の遺言と抵触する遺言を作成します。故意に遺言書を破棄したり、故意に遺言の目的物を破棄したりしたときも遺言を撤回したとみなされます。
4 効力発生時期
遺言者の死亡時です。
5 受遺者が死亡したとき
遺贈を受ける人が遺言者よりも先に亡くなったときは、遺言の効力は生じません。
6 遺言の無効
遺贈の効力が生じないときや遺贈の放棄があったときは、相続人が相続します。
| 遺留分
1 遺留分権利者
兄弟姉妹以外の法定相続人です。
2 遺留分の割合
1/2です。ただし直系尊属のみが相続人のときは1/3です。兄弟姉妹には遺留分がありません。
3 権利の行使期間
相続の開始などを知ったときから1年以内、相続開始のときから10年以内に行使しなければ、遺留分減殺請求権が消滅します。
4 遺留分の放棄
家庭裁判所の許可があれば、相続開始前でも放棄することができます。
| まとめ
1 相続の放棄は3か月以内!
2 特別縁故者への分与も忘れずに!
3 遺留分の計算はできるようになりましょう!