宅建士試験を受験される方は追い込み時期ですね。忘れやすい“法令上の制限”や“宅建業法”の見直しに頑張っておられると思います。
宅建士試験受験生に苦手意識のある“権利関係”の勉強はいかがでしょうか。今回から数回にわたって苦手意識のある“権利関係”のまとめを書きたいと思います。今回は委任契約と信義則です。委任契約は過去問でもよく問われています。手薄になりがちですのでご注意ください。
ぜひ、復習や知識整理にお役立てください。
| 委任契約の効力のポイント
1 善管注意義務
委任には有償と無償がありますが、無償でも優勝と同じ善管注意義務が課されます。
2 自己執行義務
受任者は原則として自ら受任した事務を処理しなければいけません。
3 報告義務など
委任者から請求があればいつでも報告し、委任終了後は遅滞なく委任者に報告する義務があります。
4 報酬支払義務
委任は無償が原則ですが、特約で有償とした場合でも後払いが原則です。
5 費用前払義務など
事務処理費用は、受任者から請求があれば前払いをしなければいけません。また、立替費用がある場合には利息付きで返還しなければいけません。受任者が無過失で損害を受けたときはその損害を賠償する義務があります(無過失責任)。
| 委任契約の解除のポイント
1 いつでも解除可
委任者と受任者は、いつでも理由なく解除ができます。
2 損害賠償義務
相手方に不利な時期に解除した場合は、やむを得ない事由があるときを除いて、相手方の損害を賠償しなければいけません。
| 委任契約の終了原因
1 委任者の死亡・破産手続きの開始
2 受任者の死亡・破産手続きの開始・後見開始
任意代理と同じです。委任契約の終了を対抗するには、相手方が悪意であるか相手方に通知する必要があります。
委任が終了した後に窮迫の事情があるときは、受任者は委任者が事務処理ができるまで必要な処分をする義務があります。
| 信義誠実の原則
私的取引関係に入った者は、相互に相手方の信頼を裏切らないように誠実に行動すべきとする建前です。
1 法律行為の解釈基準
2 規範関係の具体化
・契約締結上の過失
・賃貸借関係の解除制限、正当事由の解釈
・雇用関係の安全配慮義務
・相隣関係の受忍限度
3 明文なく不都合が生じる場合の準則
・禁反言の原則
・クリーンハンズの原則
・事情変更の原則
・権利失効の原則
| 権利濫用の禁止
外形上は正当な権利行使のように見えても、具体的実質的にみると社会性に反する場合は権利行使が認められないとする建前です。
確認しておきたい判例があります。
1 宇奈月温泉事件
引湯木管の無断通過を所有権侵害として撤去を請求した事件。
2 発電所用トンネル撤去請求事件
土地所有者が発電用の水路の撤去を請求した事件。
3 信玄公旗掛松事件
銘木が国鉄の鉄道開設で枯れた事件。
4 日照権判決
2階の増築が隣地の日照・通風を違法に妨害したとする事件。
5 板付飛行場事件
土地所有者が駐留軍の施設に使用する土地の返還を求めた事件。
6 農地法3条許可申請協力請求権
許可申請協力請求権が時効により消滅したと主張した事件。
| まとめ
1 委任契約は過去問で出題!
2 信義則は派生機能を要チェック!
3 権利の濫用は判例を確認!