代理のポイント2

宅建士試験で問われるポイントを過去問中心に書いていく第3弾です。今回からは宅建士試験に必須の“代理”です。覚えることが多いところですが、分かってしまえば点数につながります。

下線は過去問に問われたところです。

 

 

| 代理行為に必要なこと

 

前回の記事に載せました代理の基本図を再掲します。

 

代理人Bと相手方Cの間の“代理行為”を見てください。ここが今回のポイントです。

1 顕名

代理人が代理行為をするときには必ず本人のためにすることを示さなければいけません。これを“顕名”といいます。たとえば、契約書にサインをするときには“A代理人B”と記名しなければいけません。もう少し具体的に言うと、本人が田中一郎さん、代理人が山本太郎さんの場合、“田中一郎代理人山本太郎”と記名します。

もし、代理人Bが顕名なしに代理行為をした場合には、代理人Bと相手方Cとの間でした契約は、本人Aに効果が帰属することなく、代理人Bと相手方Cとの間に効果が帰属します。相手方CはBが取引の相手だと思って契約しているからです。

ただし、相手方Cが本人Aのためにすることを知っていたり知ることができたりした場合には、本人Aと相手方Cに契約の効果が帰属します。

2 代理人の能力

誰でも代理人になることができます。未成年者でも成年被後見人でも代理人になれます。直接本人に効果が帰属しますから代理人を保護する必要がないので、未成年者や成年被後見人でも大丈夫なのです。責任はそのような代理人を選んだ本人が負います。

3 委任状

通常、代理人を選任すると委任状が作られます。相手方Cに対して本当に本人Aの代理人かどうかを証明するためです。証明するためですので法律上は委任状がなくても代理兼授与行為があれば代理人になれます。

 

 

| 代理人が騙されたりしたらどうするの?

 

騙されたり強迫されたりしたときには代理人が基準で判断されます。つまり、代理人が騙されたら詐欺の規定を使いますし、代理人が脅されたら強迫の規定を使います。ただし、取消ができるのは本人で、騙されたり脅されたりした代理人は取消できません。契約の効果は本人に帰属しますから、本人に取り消すかどうかを決めさせる方がよいからです。

詐欺や強迫だけでなく、知っているか知らないかということも代理人が基準になります。代理人が知っていれば“悪意”、代理人が知らなければ“善意”という具合です。

ただし、本人の指図に従って代理人が代理行為をした場合には、本人が知っていたり過失で知らなかったりしたことについて、代理人が善意や無過失を主張することは許されません。

 

 

| まとめ

 

1 代理行為には顕名が必須!

2 委任状はなくてもOK!

3 代理人は未成年者でもなれる!



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代理のポイント1

宅建士試験で問われるポイントを過去問中心に書いていく第3弾です。今回からは宅建士試験に必須の“代理”です。覚えることが多いところですが、分かってしまえば点数につながります。

下線は過去問に問われたところです。

 

 

| 代理ってなに?

 

代理は、忙しくて時間がないとか時間はあっても知識がないので自信がないとかいう場合に、自分に代わってやってくれる人に任せることです。自分の手足として人を使う場合を“私的自治の拡張”といいます。

また、未成年者や制限行為能力者が法定代理人に一定のことをやってもらう場合もあります。このような場合を“私的自治の補充”といいます。

代理の本質は“私的自治の拡張”と“私的自治の補充”にあります。

代理の基本的な構図はこのようになっています。

 

たとえば、本人が所有する土地を売却するために代理人Bに代理権を与えます(代理権授与)。代理人Bは買主である相手方Cを見つけて売買契約を締結します(代理行為)。そうすると、代理人Bと相手方Cとの間で締結した売買契約の効果が、本人Aと相手方Cに及んで本人Aは売主として相手方Cに土地を引き渡す債務が生じ、相手方Cは買主として本人Aに代金を支払う債務が生じます(直ちに効果帰属)。

このように3人以上が登場する場面では、必ず上のような図を書いてくださいね。ご自身で図を書けるようになれば理解が早くなります。

 

 

| 代理は2種類

 

代理は大きく分けて任意代理と法定代理があります。

任意代理は、本人が代理人を選んでどのような代理権を与えるかを決めることができます。

法定代理は、親権者(親)のように法律上当然に代理人になる場合、本人以外の人の協議や指定で決まる場合、成年後見人のように裁判所が選任する場合などがあります。

ここでは主に任意代理について書きたいと思います。

 

 

| 代理権の範囲

 

自己の相手方の代理人になったり(自己契約)、当事者双方の代理人になったり(双方代理)することはできません。本人の利益が害される可能性が極めて高いからだと言われています。

考えてみれば当然ですよね。たとえば、200万円で買いたい土地があった場合に、自分が売主の代理人になったら200万円どころかもっと安い値段で契約することもできます。当事者の双方の代理人になった場合でも、どちらか片方の肩をもって不当に安かったり高かったりする価格で契約をするかもしれません。ものすごくリスキーですね。

また、代理権の範囲が決められていれば、代理人はその範囲のことしかできません。もし代理権の範囲が決まっていなければ、代理人は次のことができます。

1 保存行為

保存行為は、建物の修繕をするような財産の現状を維持する行為です。

2 利用行為

利用行為は、土地や建物を賃貸するような収益を図る行為です。

3 改良行為

改良行為は、土地を整地・造成するような使用価値または交換価値を増加する行為です。

 

 

| まとめ

 

1 代理は最低3人が登場!図を書きましょう!

2 代理には任意代理と法定代理があります!

3 自己契約や双方代理は禁止!



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意思表示のポイント2

宅建士試験で問われるポイントを過去問中心に書いていく第2弾の後編です。第1弾は“制限行為能力者のポイント”、第2弾は“意思表示のポイント”です。

下線は過去問に問われたところです。

 

 

| 騙されたり脅されたりしたときはどうなる?

 

前回の意思表示のポイント1では内心と表示との不一致の場面でした。一人で嘘をついたり(心裡留保)、誰かとグルになって嘘をついたり(通謀虚偽表示)、勘違いしたり(錯誤)したような場合です。

今回は、内心と表示は一定しているけれども、内心の形成段階で他人からの不当な干渉があった場合です。動機の錯誤とは似ていますが違います。動機の錯誤は内心の形成段階での勘違いは自分自身でやったことです。今回は他人からの不当な干渉が必要です。

1 詐欺

相手をだますことで錯誤に陥れる行為を詐欺と言います。詐欺にあった結果した意思表示を詐欺による意思表示と言います。たとえば、自分の所有する土地を売却したが、買主に騙されていた場合です。

詐欺による意思表示は取り消すことができます。ただし、善意の第三者には取り消しを主張して土地を取り戻すことはできません。たとえば、先ほどの例では、売主をだまして土地を購入した買主からその土地を買った第三者が詐欺の事情を知らない場合、もともとの売主は第三者に土地を返してもらうことができません。

また、第三者が詐欺を行った場合には、取引の相手方が詐欺の事情を知らない場合には取り消しができません。

詐欺によって錯誤に陥った表意者は、詐欺による取消と錯誤による無効のどちらか一方を主張することができます。

2 強迫

他人に害悪を告げて恐怖心を生じさせる行為を強迫といいます。民法上の強迫は“強迫”と書きますが、刑法上の脅迫罪は“脅迫”と書きます。漢字が違います。“強く迫る”か“脅して迫る”かの違いなのでしょうか。

強迫された場合には、その意思表示を取り消すことができます。強迫による取消は善意の第三者にも主張できます。たとえば、買主に強迫された売主が自己の所有する土地を買主に売った場合に、この買主からさらに買い取った第三者はたとえ強迫の事情をしらなくても、売主から土地の返還を求められたら返還しなければいけません。

詐欺と強迫の結論の違いは、強迫された人は騙された人よりも責任が少ないので保護しなければいけないという理屈のようです。

強迫した人が第三者だった場合には、取引の相手方が強迫の事情を知っていても知らなくても取り消すことができます。ここも詐欺と強迫の結論が異なるところです。

 

 

| まとめ

 

1 騙されたり脅されたりした場合には取り消せます!

2 詐欺は善意の第三者に対抗不可、強迫は対抗可!

3 第三者の詐欺は相手方が詐欺を知っていれば取消可!

3 第三者の強迫は相手方が強迫を知らなくても取消可!



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意思表示のポイント1

| 宅建士試験ではここが問われる!

 

宅建士試験のための〇〇のポイントシリーズ第2弾です。宅建士試験を基準にした内容ですが、私の忘備録でもあります。なにとぞご了承ください。

内容は宅建士試験の過去問で問われたことが中心です。周辺知識についても触れています。下線があるところは過去問で問われたところです。

 

 

| 意思が伝わらない

 

制限行為能力者は判断能力がなかったり不十分だったりするために単独では完全な法律行為ができない人です。単独では完全な法律行為ができないということは、本人の意思が伝わらないとも言えますが、今回のお話とは少し違います。

今回は、行為能力者が行った行為でも嘘をついたり勘違いしたりした場合のお話です。

1 心裡留保

心裡留保は、冗談や嘘など真意と違うことを自分で知っていながら行う意思表示です。売るつもりがないのに売りますと言った場合などです。

嘘を言われた相手方は嘘とはわかりませんから、この場合の意思表示は有効です。しかし、意思表示を受けた相手方が、嘘であることを知っていたり不注意によって知らなかったりした場合には無効になります。

相手方にとっては無効になったとしても、善意の第三者にとっては無効を主張できません。この場合の善意の第三者というのは、例えば売りますという言葉を嘘と知っていた相手方から、嘘とは知らずに買った人のことです。

2 虚偽表示

虚偽表示は通謀虚偽表示とも言われていて、相手方と結託して嘘の意思表示をすることです。心裡留保は表意者本人だけが嘘と知っている場合ですが、通謀虚偽表示は相手方もグルです。

たとえば、債権者からの強制執行を免れるために、債務者である不動産の所有者が相手方と通じ合って、売却する意思がないのに架空の売買契約をするような場合です。

このような通謀虚偽表示は、当事者の両者ともに不動産を売買するつもりはないのですから、この売買契約は無効です。

通謀虚偽表示の場合も、善意の第三者には無効を主張できません。先ほどの例では、不動産を買った人が第三者に不動産を売却した場合で、第三者が前の売買契約が通謀虚偽表示であって無効であると知らない場合には、もともとの所有者は第三者に対して土地を引き渡さなければいけません。返してくれとも言えません。

3 錯誤

錯誤は、うっかりミスや知識不足などで表意者の内心の意思と実際の表示とが違うような場合です。たとえば、マンションの301号室を買うつもりが201号室を買うと言ってしまったような場合(うっかりミス)や1000ドルと1000ユーロを同じ価値だと勘違いしていたような場合(知識不足)です。

このような場合には、重要部分に錯誤がある場合には無効とされます。ただし、表意者に重大な過失(著しい不注意)がある場合には表意者が無効を主張できません。表意者が重要部分の錯誤を認めていれば、相手方から無効を主張することができます。

錯誤による無効は善意の第三者に対しても主張することができます。

錯誤には少し変わった考え方があります。“動機の錯誤”と呼ばれるものです。たとえば、鉄道の新駅ができるという噂を聞いた不動産屋が、その新駅予定地の周辺の土地を買い取ったところ、新駅の計画は全くなかったような場合です。

この不動産屋は、新駅予定地周辺の土地を買おうと思ってその土地を買っていますので錯誤はないように思えます。しかし、新駅ができるから土地を売買して儲けるという動機が勘違いでした。このようの場合には、動機が相手方に表示されて相手方が知った場合には、錯誤と同じように扱って無効になります。

新駅ができるから買うということを不動産屋が土地の所有者に明らかにしていると、実際に新駅ができない場合には土地の売買契約が無効になるのです。

 

 

| まとめ

 

1 心裡留保は嘘をつく場合で原則有効!

2 虚偽表示は相手方と結託して嘘をつく場合で原則無効!

3 錯誤は勘違いをした場合で原則無効!



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制限行為能力者のポイント2

宅建士試験で問われるポイントを過去問を中心に書いていきます。前回の“制限行為能力者のポイント1”の続きになります。下線があるところは過去問で問われたところです。

 

 

| 被保佐人、被補助人

 

1 被保佐人

被保佐人は判断能力が著しく不十分な人で、家庭裁判所から補佐開始の審判を受けた人です。ポイントは判断能力が“著しく不十分”です。被保佐人との違いは判断能力の程度です。

被保佐人には保佐人がいて、法律で定められた一定の重要な行為を行うときに保佐人の同意が必要です。たとえば、不動産の売買契約は保佐人の同意が必要です。

保佐人には特定の好意について代理権を与えることができます。ただ、家庭裁判所の審判が必要です。

2 被補助人

被補助人は判断能力が不十分な人で、家庭裁判所から補助開始の審判を受けた人です。ポイントは判断能力が“不十分”です。“欠く常況”でもなければ“著しく不十分”でもありません。成年被後見人や被保佐人に比べて判断能力がある人が対象です。

被補助人には補助人がいて、家庭裁判所が定めた行為については補助人の同意が必要です。

 

 

| 制限行為能力者の行為の効力

 

制限行為能力者が制限された行為を単独でした場合には、その行為を取り消すことができます。“無効”ではなくて“取消”です。つまり、取り消されるまでは有効です。

1 取消権者

取消ができる人は、本人、法定代理人、相続人など、同意者です。制限行為能力者を理由とした取消は、善意の第三者にも主張することができます。

2 追認権者

取消ができる人は、制限行為能力者本人の行為を追認することができます。追認すると確定的に有効になります。取消権を放棄する意思表示だといってもいいですね。本人が追認するときは能力が回復した後でなければいけません。未成年者なら成年者になった後でないと追認ができません。

 

 

| 相手方の保護の制度

 

制限行為能力者は法律によって手厚く保護されています。これだけだと誰も制限行為能力者と取引をしたがりません。そこで、取引の相手方を保護する制度を作って制限行為能力者に一定の行為ができるようにしました。

1 催告権

制限行為能力の取引の相手方には、法律行為を追認するかどうかの返答を迫る催告権があります。催告をする相手は法定代理人や能力を回復した後の本人だけでなく、被保佐人や被補助人本人に対してもできます。

ただし、被保佐人や被補助人に対してした催告は、期限までに確答がないと取り消されたことになります。法定代理人や能力を回復した後の本人に対する催告は、期限までに確答がない場合には追認したことになります。

2 取消権の喪失

制限行為能力者が相手方に対して行為能力者であるように信じさせるために騙し合場合には、その法律行為は取り消すことができなくなります。たとえば、未成年者が親権者の同意書を偽造して相手方に提示したりしたばあいですね。

3 法定追認

ある一定の行為をすると追認だとみなされる行為があります。ただし、制限行為能力者自身が法定追認にあたる行為をしても法定追認にはなりません。

・全部または一部の履行(お金を支払うなど)

・履行の請求(代金を請求するなど)

・更改

・担保の供与

・権利の全部または一部の譲渡(売買代金債権を第三者に譲渡するなど)

・強制執行

4 取消権の消滅時効

取消権は追認ができるときから5年間で時効によって消滅します。また、法律行為をしてから20年間たっても消滅します。

 

 

| まとめ

 

1 被保佐人より被補助人の方が判断能力があります!

2 制限行為能力者の行為は取り消すことができます!

3 催告権など相手方を保護する制度があります!



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