【行政書士試験】2021年度 試験問題の振り返り(第12問)

毎年、行政書士試験の問題を検討しているのですが、今年は何かとバタバタしておりまだ試験問題すら見ておりませんでした。

合格発表が近くなっているこの時期です。受験生の皆様はワクワクドキドキの時期も過ぎて落ち着いているかと思います。では、令和3年度行政書士試験を見てみたいと思います。今回も引き続き択一問題を見ていきます。

 

 

| 択一式 第12問(行政法)

 

選択式に引き続いて、択一式の問題も掲載しません。行政書士試験の問題は、一般財団法人行政書士試験研究センターのサイトにありますので、気になる方は各自ダウンロードしてください。PDFファイルで約570KB程度のサイズです。

第12問は理由の開示に関する問題です。行政手続法の規定と判例が問われています。

【肢1】

誤りです。行政手続法では、申請による許認可などの処分をする際に利害関係人に理由を示す必要はありません。

 

行政手続法 第8条

 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、以下、略。

2 略

 

【肢2】

誤りです。行政手続法では、申請による許認可などの拒否処分をする場合、形式上不備による拒否処分であっても申請者に対して処分の理由を示さなければいけません。ただし、許可要件や審査基準が客観的指標により明確に定められていて、申請書の記載や添付書類などから適合しないことが明らかな場合には、申請者からの請求があったときにだけ理由を示せばよいとされています。

 

行政手続法 第8条

 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、以下、略。法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。

2 略

 

【肢3】

妥当です。記述のとおりです。行政手続法14条1項に、差し迫った必要がある場合は例外としています。また、同条2項では、理由開示が困難な場合を除いて、処分後相当な期間内に理由を示さなければいけないとされています。

 

行政手続法 第14条

 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。

2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。

3 略。

 

【肢4】

誤りです。根拠規定を示すだけでは不十分です。公文書非開示決定処分事件(最判H4.12.10)では、理由付記の趣旨を“実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに,非開示の理由を開示請求者に知らせることによって,その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たもの”と解した上で、“このような理由付記制度の趣旨に鑑みれば,公文書の非開示決定通知書に付記すべき理由としては,公開請求者において,条例第6条第1項各号所定の非公開事由のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず,単に非公開の根拠規定を示すだけでは,…条例第11条第4項の要求する理由付記としては十分ではないと言わなければならない。”と判示しました。

 

【肢5】

誤りです。根拠規定を示すだけでは不十分です。旅券発給拒否処分事件(最判S60.1.22)では、“いかなる事実関係に基づき,いかなる法規を適用して拒否処分がなされたかを申請者においてその記載自体から了知し得るものでなければならず,単に発給拒否の根拠規定を示すだけでは…旅券法の要求する理由付記として十分でない。”と判示しました。

 

 

| まとめ

 

1 理由は原則として名宛人に対して必ず提示!

2 理由提示に条件が付いたり不要な場合を覚える!

3 根拠規定では不十分とする2つの判例は大切!



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