【行政書士試験】2021年度 試験問題の振り返り(第5問)

毎年、行政書士試験の問題を検討しているのですが、今年は何かとバタバタしておりまだ試験問題すら見ておりませんでした。

合格発表が近くなっているこの時期です。受験生の皆様はワクワクドキドキの時期も過ぎて落ち着いているかと思います。では、令和3年度行政書士試験を見てみたいと思います。今回も引き続き択一問題を見ていきます。

 

 

| 択一式 第5問(憲法)

 

選択式に引き続いて、択一式の問題も掲載しません。行政書士試験の問題は、一般財団法人行政書士試験研究センターのサイトにありますので、気になる方は各自ダウンロードしてください。PDFファイルで約570KB程度のサイズです。

第5問は政教分離に関する問題です。いわゆる空知太神社事件と呼ばれているものです。過去の津地鎮祭訴訟や愛媛県玉ぐし訴訟では目的効果基準を使っていましたが、この判例は少し趣が異なっています。考慮要素としては次の4つを挙げています。

1 宗教的施設(団体)の性格

2 無償提供されるに至った経緯

3 無償提供の態様

4 一般人の評価

これらに該当しない肢はどれでしょうか。早速見ていきましょう。

【肢1】

妥当です。国や地方自治体が無償で宗教的施設の敷地を提供する行為は、一般的に憲法89条の問題が生じます。箕面忠魂碑訴訟(最判H5.2.16 )がありましたね。箕面忠魂碑訴訟では宗教団体としての性格が否定されて合憲になっています。

【肢2】

妥当です。一般的に、寺社仏閣などの古い宗教施設は歴史的・文化財的に保護の対象になっている場合があります。また、文化的・社会的な意味で国公有地になっている場合もあります。このような事情は“宗教的施設の性格”として考慮されます。

【肢3】

誤りです。日本ではクリスマスに宗教色が(ほぼ)なかったり、仏教徒が神社に初詣に行ったりしていて、必ずしも宗教的関心が高いとはいえません。また、神社神道はお寺と違ってそれほど宗教性は強くありませんが、空知太神社では氏子らは市有地での物件の設置に対価を支払うことなく行っており、その物件を長期間にわたり継続的に使用しています。その効果として、氏子らが神社を利用した宗教的活動を行うことを容易にしているとされました。

【肢4】

妥当です。明治の初期頃には一定の寺社仏閣の敷地が国有地化された歴史があります。そのため、このような理由で国公有地化された場合には、無償で寺社仏閣に国公有地を提供されていることもあります。ちなみに、空知太神社は隣地にある空知太小学校の拡張のために移転する必要が生じて住民の私有地にいったん移転しています。その後に固定資産税の負担軽減のために砂川町に寄付された経緯があります。このような事情は“無償提供されるに至った経緯”にあたります。

【肢5】

妥当です。空知太神社の氏子らは宗教的行事を行うことを主目的とする宗教団体です。神社の祭事を行う場合には少なくとも憲法89条の“宗教上の組織若しくは団体”にあたります。ここが箕面忠魂碑訴訟と大きく異なるところですね。

 

 

| まとめ

 

1 空知太神社事件は目的効果基準を使わない!?

2 宗教団体としての性格が箕面忠魂碑訴訟と違う!

3 無償提供されるに至った経緯も考慮要素の1つ!



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