企業に勤めながらその企業内の手続きを行政書士として仕事をすることはできません。また、企業内に事務所を構えて外部から依頼を受けて行政書士として仕事をし企業の売上にすることもできません。弁護士なら組織内弁護士、社会保険労務士なら勤務社労士という形態がありますが、行政書士は独立していなければいけません。
なぜ行政書士はこのような制約があるのでしょうか。本日は、行政書士が独立開業しなければいけないことを書きたいと思います。
| 行政書士の事務所要件
行政書士の事務所の要件は大きく2つあります。
1 守秘義務を守れる環境であること
2 業務を遂行できる環境であること
行政書士の事務所が他の事務所と同じ場所だとダメな理由は、1の守秘義務を守れる環境が確保できないためです。原則として、行政書士事務所はその行政書士だけの事務所でなければいけません。例外的に合同事務所を設置する場合や経営者が同じ場合があります。
当事務所には、株式会社麻田不動産と行政書士法人麻田事務所がありますが、事務所内はきちんと分けられています。大阪府では、入り口を入ってから相談者や依頼者が他の人と顔を合わせないようにすること、相談者や依頼者のプライバシーが守られること、天井から床までが固定された壁で仕切られていることなどの条件が付けられます。
行政書士事務所として利用するためにはこのような厳しい事務所要件があるのです。ですから、企業内で行政書士の仕事をするには事務所要件を満たさないとされています。この点、弁護士や社労士はそこまで厳しい条件がないのではないでしょうか。
| 行政書士は4種類
行政書士の登録をする場合には4つの分類があります。
1 個人事務所の行政書士
2 行政書士法人
3 使用人行政書士(行政書士事務所に雇われている行政書士)
4 社員行政書士(行政書士法人の社員になっている行政書士)
使用人行政書士は、個人事務所に所属していてもいいですし、行政書士法人に所属していても構いません。行政書士法人の場合には使用人行政書士はいなくても社員行政書士はいます。なんのことかよく分かりませんよね?
社員行政書士は、いわゆる役員で、出資をして商業登記簿謄本に氏名や住所が記載されます。一般的な企業の“社員”ではありません。私アシュラも行政書士法人麻田事務所の社員行政書士として登記されています。
また、行政書士法人は行政書士が1人でも設立できます。以前は2人以上の行政書士が必須でしたが、法改正によって1人でも可能になりました。
さらに、行政書士会の会費は、行政書士本人の会費とは別に行政書士法人も会費を支払わなければいけません。ただ、毎月送られてくる会報は行政書士法人の分もあります。
それから、行政書士法人の場合には、報酬が5万円以上になると領収書に印紙を貼付しなければいけません。個人事務所の場合には印紙税が免除されています。これは弁護士も司法書士も行政書士も同じです。
行政書士法人の利点は支店を出せることです。個人事務所の場合には1か所だけで、いくら使用人行政書士がいたとしても支店を出すことはできません。
大規模に支店を展開するのでなければ、行政書士法人を設立する利点はほとんどないのかもしれませんね。
| まとめ
1 企業内行政書士は事務所要件を満たさない!?
2 行政書士法人には社員行政書士がいる!
3 行政書士法人の利点は支店を出せるだけ!?