行政書士試験の振り返り 問題33・34

2020年も11月8日(日)に行政書士試験が行われました。合格発表は2021年1月27日(水)でした。

合格された方、おめでとうございます!登録をして行政書士としてがんばろう!と思われる方もいらっしゃると思います。よろしくお願いします。

惜しくも不合格の方、お疲れ様でした。2021年の試験も受験しようと思われる方は、どうぞこのブログの試験問題検討ページをご覧になってください。試験合格にお役に立てると嬉しいです。

さて、2020年の行政書士試験の問題を振り返ってみたいと思います。記述式が終わりましたので、択一式の問題を考えていきます。著作権に引っかかる問題は除外します。今回も引き続き民法です。

 

 

| 問題33 正解肢2

 

賃貸借契約に関する問題です。事例問題は問題を読んでいくうちに事例を勘違いしてしまうことがよくありますので、図を描いて考えてください。

肢1 賃貸人の地位の移転

土地賃借人は建物の所有権保存登記を具備していますので、賃借権について対抗要件を備えています(借地借家法10条)。賃借権の対抗要件が備わっている不動産を譲渡したときは、賃貸人の地位は譲受人に移転します(民法605条の2第1項)。

肢2 建物保存登記名義(最判S47.6.22)

土地賃借人は自己の名義で建物の所有権保存登記をしなければいけません。建物の所有権保存登記が土地賃借人の同居の妻名義だった場合、土地賃借人は賃借権の対抗要件を具備しておらず、新所有者に対して賃借権を主張できないとされています。

肢3 賃貸人の地位と所有権移転登記

新所有者が賃貸人として賃借人に賃料の支払を請求するには、所有権移転登記が必要だとされています(民法605条の2第3項)。これは新所有者が自ら賃貸人であることを主張する場合ですので、たとえば旧所有者から賃借人へ所有者が変わった旨や新所有者に賃料を支払う旨を通知して賃借人がその通知に従った場合には、新所有者に所有権移転登記は必要ありません。ただし、不動産の売買契約等が取り消されたり無効だったりしたときには、賃借人は支払った賃料を取り戻すために新所有者へ不当利得返還請求をすることになります。賃貸人の地位の移転は試験でも実務でも重要です。

肢4 必要費の支出と新所有者への請求

賃借人が必要費を支払った場合には、賃借人は新所有者へ必要費の支払いを請求することができます(民王608条1項)。新所有者は必要費の支出も込みの金額で不動産を譲り受けているはずだからです。

肢5 敷金返還請求の相手方

賃貸借契約が終了して賃借人が敷金の返還を請求する場合、敷金返還請求の相手方は新所有者です(民法605条の2第4項)。新所有者は敷金の返還も込みの金額で不動産を譲り受けているはずだからです。

 

 

| 問題34 正解肢2

 

医療における医師の患者に対する義務に関する問題です。民法の規定と判例の内容を問うています。知らない判例が多く、難しい問題だと思います。

肢1 医師の注意義務と医療水準(最判H8.1.23)

医師の注意義務の基準は医療水準だとされています。また、医療水準は全国一律の絶対的な基準ではありません。医療機関の特性などの事情を考慮して決めるべきだとされています。

肢2 医療水準と医療慣行(最判H8.1.23)

医療水準は医療慣行と必ずしも一致するとは限りません。ですから、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったとしても、医療水準に従った注意義務を尽くしたとは直ちに言えないとされています。

肢3 未確立療法の説明義務(最判H13.11.27)

医師は、医療水準として未確定の療法について原則的に説明義務を負いません。しかし、実施例が多く、患者がその療法に強い関心を持っている場合には説明義務を負うとされています。

肢4 病名と医療機関の転送(最判H13.11.27)

医師は、病名が特定できなくても予後が一般に重篤で、早期治療を行うべき何らかの重大で緊急性のある病気を患っている可能性が高い場合には、患者を適切な医療機関に転送して適切な治療を受けさせる義務があるとされています。

肢5 副作用の確認方法(最判H14.11.8)

精神科医は、向精神薬を処方する場合には、副作用について最新の添付文書を確認する必要があるとされています。患者としては副作用をしっかりと確認してもらわないと怖いですよね。

 

| まとめ

 

1 賃貸人の地位は試験でも実務でも重要!

2 賃借人の対抗要件は借地借家法も必ずチェック!

3 医療過誤関連はマニアックな問題!?



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