行政書士試験の振り返り 問題27・28

2020年も11月8日(日)に行政書士試験が行われました。合格発表は2021年1月27日(水)でした。

合格された方、おめでとうございます!登録をして行政書士としてがんばろう!と思われる方もいらっしゃると思います。よろしくお願いします。

惜しくも不合格の方、お疲れ様でした。2021年の試験も受験しようと思われる方は、どうぞこのブログの試験問題検討ページをご覧になってください。試験合格にお役に立てると嬉しいです。

さて、2020年の行政書士試験の問題を振り返ってみたいと思います。記述式が終わりましたので、択一式の問題を考えていきます。著作権に引っかかる問題は除外します。今回から民法です。

 

 

| 問題27 正解肢4

 

制限行為能力者に関する問題です。民法の条文と判例の内容を問う問題です。

肢1 未成年者の後見

未成年者の親権は基本的に親が行使します。親などの親権者がいなくなった場合や管理権がなくなった場合には、後見が開始されます(民法838条1号)。

肢2 保佐人の同意権・代理権

保佐人の同意が必要になる被保佐人の行為は民法13条1項に列挙されています。基本的に補佐人には代理権がありません。代理権が必要な場合には、家庭裁判所の審判で一定の行為の代理権を付与することができます(民法876条の4第1項)。

肢3 補助人の同意権・代理権

補助人には基本的に同意権も代理権もありません。同意権や代理権を付与するには、家庭裁判所の審判が必要です(民法17条1項、876条の9第1項)。

肢4 被保佐人への追認の催告

被保佐人が補佐人の同意なくして民法13条1項の行為を行ったときは、相手方は追認をするように催告することができます。追認の催告は被保佐人に対して行っても構いませんが、被保佐人が保佐人の追認を得たという通知を発しない場合には、行為を取り消したことになります(民法20条4項)。

肢5 制限行為能力者の詐術

制限行為能力者が行為能力者であると偽って制限されている行為を行った場合には取り消すことができなくなります(民法21条)。これは明示的な偽りだけでなく黙示的な偽りでも詐術に該当します。ですから、制限行為能力者であることを黙秘し他の言動と相まって相手方に行為能力者であると誤信させたり誤信を強めたりした場合も詐術にあたり、行為を取り消すことができなくなります。

 

 

| 問題28 正解肢4

 

占有に関する問題です。占有改定に関連して即時取得、留置権、先取特権、質権、譲渡担保権が問われています。組合せ問題です。占有移転の引渡しには、現実の引渡し、簡易の引渡し、指図による占有移転、占有改定の4つがあります。

肢ア 占有改定と即時取得(最判S35.2.11)

占有改定では即時取得ができません。無権利者からの譲受人が即時取得で所有権を取得するためには、外観上占有状態に変更が生じる方法での占有を取得することが必要だとされています。占有改定では認められないものの1つめです。

肢イ 占有改定と留置権

留置権は物を留置権者の元に留めることで債務者に弁済を促す権利です(民法295条1項本文)。債務者の元に物がある状態のままでは留置権の意味が失われてしまいます。ですから、留置権が成立するには占有改定では足りません。占有改定では認められないものの2つめです。

肢ウ 占有改定と先取特権(大判T6.7.26)

先取特権の目的になっている動産が第三者に売却されて引き渡されると、先取特権を行使できなくなります(民法333条)。この引渡しは占有改定でも構いません。動産取引は公示されませんので買主を保護するために取引の安全が優先されています。

肢エ 占有改定と質権

質権の設定には質物の引渡しが必要です(要物契約、民法344条)。質権は、留置権と同じく質物を債権者に留置させることで債務者の弁済を促す権利です。留置権とは違うところは、民法345条で質権設定者に質物を占有させることを禁じていることです。占有改定では認められないものの3つめです。

肢オ 占有改定と譲渡担保権(最判S30.6.2)

譲渡担保権の設定では、通常債務者の元に目的物を残したままにします。なぜなら、譲渡担保権は債務者に動産を使用収益させることで返済を促す権利だからです。動産版の抵当権です。ですから、譲渡担保の対抗要件として占有改定による引渡が認められています。

 

 

| まとめ

 

1 保佐人・補助人の同意権・代理権は要注意!

2 制限行為能力者が黙秘しても詐術になる!?

3 占有改定では足りないものはまとめて覚える!



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