行政書士試験の振り返り 問題46

2020年も11月8日(日)に行政書士試験が行われました。合格発表は2021年1月27日(水)です。合格発表まであと少しですね。受験された方は解答速報でおおよその自己採点ができているかと思います。気が気でない方もいらっしゃるでしょう。

そこで、2020年の行政書士試験の問題を振り返ってみたいと思います。記述式から始めて、択一問題、選択式と進める予定です。

 

 

| 問題46の解き方・考え方

 

1 問題の整理

記述式最後の問題です。設例と判例の解説を読んで解答する問題です。少し変わった問題ですね。判例の解説の説明の理由を問うています。“背信的悪意者の意義を踏まえつつ”と書かれており、背信的悪意者の説明が必要になります。

(1)売主Aが買主Bに不動産を売却

(2)買主Bは所有権移転登記が未了

(3)第三者CがAをそそのかす

(4)売主Aが第三者Cに不動産を二重譲渡

(5)第三者Cは所有権移転登記が完了

(6)第三者Cは転得者Dへ不動産を転売

(7)転得者Dは所有権移転登記が完了

登場人物が4人もいます。図を書いてしっかりと頭を整理してください。

以上を前提に判例の解説を読んでいきます。

判例の解説では、背信的悪意者からの転得者D自身が背信的悪意者でない限り、不動産の取得を買主Bに対抗できるとしています。

解答には第三者Cが無権利者でない理由を書きます。どういう理屈か分かりにくいですね。分からない場合は原則から考えていきます。

2 177条の第三者の要件の確認

二重譲渡の場合には、民法177条にある登記の先後で所有権の帰属を決めます。

 

民法177条

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

177条の第三者は、当事者及びその包括承継人以外の者で、登記の欠缺(不存在)を主張するにつき正当な利益を有する者をいいます。行政書士試験ではこの定義を暗記する必要があります。

本問では、第三者Cは所有権移転登記を完了しており、形式的には所有者ということになります。ただし、第三者Cは買主Bを害する目的を持っている背信的悪意者です。

ここで背信的悪意者の内容を考えます。背信的悪意者は、登記の欠缺を主張することが信義に反する者を言います。ですので、第三者Cは買主Bに登記がないことを主張するには正当な利益を有する者ではありません。したがって、第三者Cは177条の第三者にはあたりません。

では、第三者Cは無権利者なのでしょうか。第三者Cは売主Aから当該不動産を購入しています。もう一度書きますが、この点では第三者Cには所有権を取得する要件が揃っています。ただ、第三者Cは背信的悪意者ですから、信義則上買主Bに登記がないことを主張することが許されないのです。登記の欠缺を主張ができないということは第三者Cが無権利者であるとも言えそうですが、売買契約が成立して登記を具備しているので純粋な無権利者とも言えません。

背信的悪意者は買主Bの登記の欠缺を“信義則上”主張できないということですから、本問で主張できないのは第三者Cだけということになります。信義にもとるのは今のところ第三者Cだけですからね。

ということは、もし仮に転得者Dも信義にもとるのであれば、転得者Dは買主Bの登記の欠缺を主張できなくなるという理屈になります。

この点は問題文の判例の解説に書かれているとおりです。信義上課せられた制限は後の取引相手に継承されません。

3 解答の作成

以上のことから考えます。問題文のとおり“背信的悪意者は”に続くように書き始めます。

登記の欠缺を主張することが信義に反するのであり、AC間の売買契約自体は有効だから。”(41字)

 

 

| まとめ

 

1 解説の理由を説明する少し変わった問題!

2 登場人物が4人いるので図を書いて頭を整理!

3 背信的悪意者を排除する理由が解答になる!



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