宅建士試験の振り返り(2020年度10月)問7・8

2020年の宅地建物取引士試験は、新型コロナウイルス感染症への対応のため例年と異なる試験形態になってしまいました。都市圏では受験会場が確保できなかったため、10月の試験を受験できない受験生がいます。2020年は10月と12月の2回、試験が行われることになりました。

前回から引き続き2020年10月試験の問題を振り返ってみたいと思います。まずは民法から始めてまいります。

 

 

| 2020年10月試験 民法

 

1 問7 正解肢2

保証に関する問題です。保証は範囲が広いので、条文をそのまま問われたとしてもこの問題は難しかったのではないでしょうか。改正民法で大きく変わった分野でもあります。

肢1 保証債務の範囲

保証債務は主債務に従たるすべてのものを包含します(民法447条1項)。ですから、主債務の原状回復義務も保証する責任があります。

肢2 保証契約締結後の加重

保証契約の締結後に主たる債務の目的や態様が加重されたとしても、保証人の負担は加重されません(民法448条2項)。

肢3 委託を受けた保証人による弁済期前の弁済

委託を受けて保証人になった人が主たる債務の弁済期前に弁済をした場合の問題です。原則として、委託を受けた保証人は、主たる債務者が保証人の弁済当時に利益を受けた限度で主たる債務者に求償することができます(民法459条の2第1項前段)。もし、保証人による弁済期前の弁済の時点で、主たる債務者が主たる債務と相殺をすることができる債権を有していて相殺を主張できる状態にあった上で、主たる債務者が相殺を主張する場合には、保証人は主たる債務者に対して相殺によって消滅する債務の履行を請求することができます(民法459条の2第1項後段)。“委託を受けない”保証人と混同しないようにしてください。

肢4 委託を受けた保証人による通知

委託を受けた保証人が債権者からの請求前に弁済をした場合、主たる債務者への求償が制限される場合があります。たとえば、主たる債務者が相殺権を有するなど債権者に対抗できた事由があった場合(民法463条1項前段)、保証人の弁済後に善意で主たる債務者が弁済をした場合(民法463条3項)などです。

2 問8 正解肢2

相続の問題です。相続は実際の不動産の売買でよく登場しますので、しっかりと正解して欲しい問題です。

肢1 相続回復請求権の時効

相続回復請求権は、相続があったことを知った時から5年、相続の時から20年を経過すると時効によって消滅します(民法884条)。

肢2 再代襲相続

直系卑属が代襲相続ができる場合には、代襲者が相続開始以前に死亡した場合であっても、その子が再代襲相続します(民法887条3項)。

肢3 法定相続

法定相続人には、配偶者(常に)、子(第1位)、直系尊属(第2位)、兄弟姉妹(第3位)がいます(民法887条1項、889条1項、民法890条)。直系尊属と兄弟姉妹は配偶者と子がいない場合にのみ相続人になります(民法889条1項)。直系尊属がいる場合には兄弟姉妹は相続人になれません(民法889条1項)。

肢4 兄弟姉妹の再代襲相続

肢2のとおり直系卑属の場合には再代襲相続ができますが、兄弟姉妹の孫など直系卑属でない場合には再代襲相続はできません(民法887条2項ただし書)。

 

 

| まとめ

 

1 保証債務は範囲が広く改正民法の肝!

2 委託を受けたかどうかで保証内容が変わる!?

3 法定相続、再代襲相続は実務でも大切!



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