宅建士試験の振り返り(2020年度10月)問5・6

2020年の宅地建物取引士試験は、新型コロナウイルス感染症への対応のため例年と異なる試験形態になってしまいました。都市圏では受験会場が確保できなかったため、10月の試験を受験できない受験生がいます。2020年は10月と12月の2回、試験が行われることになりました。

前回から引き続き2020年10月試験の問題を振り返ってみたいと思います。まずは民法から始めてまいります。

 

 

| 2020年10月試験 民法

 

1 問5 正解肢1

有償の委任契約に関する問題です。

肢1 委任契約と危険負担

この肢は危険負担の条文知識を使います。委任の問題に意識が引っ張られると間違えてしまいます。委任者の責めに帰すべき事由によって委任契約が中途終了した場合には、受任者は報酬の全額を請求することができます(民法536条2項前段)。ただし、受任者が自己の債務を免れたことで利益を得たときは、利益分は委任者へ返還しなければいけません(民法536条2項後段)。

肢2 受任者の注意義務

受任者は“善良な管理者の注意”をもって委任事務を処理しなければいけません(善管注意義務、民法644条)。契約関係で善管注意義務を負う場合はたくさんありますが、“自己の財産と同一の注意義務”を負う場合は“無償の受寄者”だけだと思ってOKです。親族・相続関係では色々とありますので、ご自身でまとめてみてください。

肢3 委任契約の途中終了

受任者の責めに帰すべき事由によって委任契約が途中終了した場合、債務不履行となり報酬を請求できないようにも思えます。ただし、委任の場合には、履行の途中で契約が終了してもすでに履行した割合に応じて報酬を請求できます(民法648条3項2号)。また、成果報酬型の委任の場合には、履行の途中で契約が終了すると委任者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できます(民法649条2項、民法634条)。

肢4 受任者の死亡と相続人の責任

受任者が死亡した場合、委任契約は終了します(民法653条1号)。委任が終了すると、急迫の事情がある場合にのみ、受任者、相続人、法定代理人は委任者などが委任事務を処理できるようになるまで、必要な処分をしなければいけません(民法654条)。

2 問6 正解肢3

錯誤取消に関する問題です。

肢1 表意者の重大な過失

表意者の重大な過失による錯誤の場合には、原則として取消はできません(民法95条3項)。ただし、相手方が表意者の錯誤を知っていたり重過失によって知らなかったりした場合には取消ができます(民法95条3項1号)。本肢では、表意者に重大な過失があり、相手方は無過失で信じて購入していますので、錯誤取消はできません。

肢2 表意者の勘違いと重大な過失

表意者が10万円の価値しかないと思って売却した場合には、表意者に重大な過失があります。また、表意者は手元にお金がないから売却する旨を表示しており、その動機を知った相手方が購入しています。このような場合には錯誤取消はできません。

肢3 表意者と相手方双方の勘違い

売却金額の錯誤は重要な錯誤です。表意者は贋作の絵画だと思い、贋作だから安く売却する旨を表示しています。相手方も贋作だと信じて購入しています。このように相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていた時には、錯誤取消ができます(民法95条3項2号)。

肢4 表意者の勘違いと重大な過失

表意者が為替レートを誤っていますので、法律行為の基礎とした事情について認識が真実に反しています。しかし、その錯誤が重大な過失によるものですから錯誤取消はできません。

 

 

| まとめ

 

1 債権各論の問題でも債権総論の知識が必要!

2 自己の財産と同一の注意義務は無償の受寄者だけ!

3 錯誤は原則と例外をしっかりと理解!



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