とうとう人権の最後“受益権”まで進んできました。実は受益権はそれほど書く内容が思いつかず、参政権とまとめようかと考えました。思いのほか、参政権が多くなってしまいましたので受益権を別に書くことにします。
今回は受益権について書きたいと思います。
| 受益権の位置づけ
今回も受益権の位置づけを書きたいと思います。もういらない!と思われる方も多いかと思いますが、分類を忘れないでいると試験で結構役に立つんです。それでは受益権の位置づけを。
1 自由権
(1)精神的自由権
思想・良心の自由、信教の自由、表現の自由、学問の自由
(2)経済的自由権
職業選択の自由、財産権の保障
(3)人身の自由
奴隷的拘束からの自由、適正手続きの保障
2 社会権
生存権、教育を受ける権利、労働基本権
3 参政権
4 受益権 ← ココ!
請願権、裁判を受ける権利、国家賠償請求権、刑事補償請求権
| 受益権ってなに?
受益権は国家に対して何かをすることを求める権利です。いわゆる国務請求権です。同じようなものに社会権があります。社会権も国家に対して何かをすることを求める権利です。
ですから、受益権を社会権の一部だと考えてもいいのですが、国家に作為を求める権利のうち、社会権として分類できない権利をまとめて“受益権”と呼んでいます。
受益権には、請願権、裁判を受ける権利、国家賠償請求権、刑事補償請求権の4つがあります。
| 請願権ってなに?
請願権は、国や地方公共団体に対して国務に関する希望を述べる権利です。
憲法 16条
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
言論の自由が広く保障されている現代では、請願権は必要ないようにも思われます。しかし、請願権は専制君主制の下で自由に意思表明できなかったことから発達した権利です。瀝青的に重要な権利ですので明文が置かれました。
請願権は“平穏に”請願する権利ですので、暴力や暴言が伴うものは許されません。また、政治に参加する意義もありますが、請願をしたからと言って必ず実現するとは限りません。請願権には法的拘束力がないからです。ただし、受けた請願を誠実に処理するという努力義務はあります。
| 裁判を受ける権利ってなに?
裁判を受ける権利は憲法32条に書かれています。
憲法 32条
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
裁判を受ける権利は、独立した公平な裁判所に対して権利・自由の救済を求める権利です。また、公平な裁判所以外で裁判をされない権利でもあります。
裁判を受ける権利は、人権保障や法の支配を実現するために必要不可欠の前提になる権利です。公平な裁判所に救済を求められないと、人権は守られませんし正しい法による統治もできません。
裁判を受ける権利が保障されているからこそ、憲法に反して人権が制約されていないかを公平な裁判所に訴えることができ、為政者の恣意による支配を排除することができるのです。
裁判を受ける権利は民事事件、刑事事件、行政事件に認められています。民事裁判や行政裁判では裁判所は適正な手続きに則った訴えを拒絶することはできませんし、刑事事件では公平な裁判所の裁判でなければ刑罰を科せられることがないことを意味しています。
刑事裁判に関しては特に憲法37条でも裁判を受ける権利を保障しています。
憲法 37条
すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
| 国家賠償・刑事補償ってなに?
国家賠償は、公務員の不法行為によって損害を受けた場合に国などに損害の賠償を請求する権利です。
憲法 17条
何人も公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
法律として国家賠償法が制定されています。
刑事補償は、刑事手続において抑留・拘禁された被告人の無罪が確定したときに、被告人の被った損失を国に請求する権利です。
憲法 40条
何人も、抑留・拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
国家賠償と刑事補償の違いは、国家賠償が“不法な”公権力の行使に対する損害賠償で、刑事補償は“適法な”公権力の行使に対する損害賠償です。このような小さな違いは試験に出題されそうですね。
| まとめ
1 受益権は国に何かを求める権利!
2 請願権は平穏に請願をする権利!
3 裁判を受ける権利は人権の基礎!
4 国家賠償と刑事補償の違いに注意!