行政書士試験の憲法(生存権2、環境権)

前回では生存権の法的性質について書きました。プログラム規定説、抽象的権利説、具体的権利説があります。裁判所はどのような考え方をしているのでしょうか。

今回から裁判所の考え方について書きたいと思います。環境権についても書きます。

 

 

| 裁判所の考える生存権

 

裁判所はどう考えているのでしょうか。朝日訴訟(最判昭42.5.24)という判例を見てみましょう。

結核を患い療養所生活を送っていた朝日さんは、行政から医療補助や生活補助を受けていました。ただ、支給額が少なくて生活は大変でした。ある時、行方不明だった兄が見つかり援助をしてくれることになりました。それを知った行政は、兄からの援助の分だけ医療補助や生活補助を減額しました。減額された額では最低限度の生活ができないと、朝日さんは行政を訴えました。

ところが、訴訟中に原告が死亡してしまったため訴訟は終了してしまいました。裁判所の最終的な判断は、生存権は国に道義的な責任を課したもので具体的な請求権を保障したものではなく、最低限度の生活水準は国の合目的的な裁量にゆだねられるというものでした。

裁判所はプログラム規定説を採用したと考えられています。

朝日訴訟とは別にもう一つ堀木訴訟(最大判昭57.7.7)でも生存権について争われました。

全盲の堀木さんは障害年金を受給していましたが、離婚して子ども2人を育てるため児童福祉手当の支給を申請しました。ところが、行政は障害者年金と児童扶養手当は併給できないとされました。そこで、堀木さんは児童扶養手当法の併給禁止規定は違憲だとして訴えました。

裁判所は、併給禁止規定は立法府の広い裁量にゆだねられているとして、併給禁止を合憲だとしました。ただし、著しく不合理であることが明白な場合には違憲になると判断しました。

朝日訴訟と同じようにプログラム規定説を採用したと考えられますが、一定の場合には違憲になる余地があることが示されましたことが朝日訴訟との違いです。

 

 

| 環境権ってなに?

 

憲法には“環境権”という言葉は載っていません。ところが、良い環境を享受する権利として“環境権”が主張されるようになってきました。環境権は近年提唱されている“新しい人権”です。

良い環境とは何でしょうか。大きく2つあるとされています。

1 空気・水・日照などの自然的な環境が良いこと

高度経済成長期の公害が大きな社会問題になったことで、大気汚染や水質汚濁などの環境被害が生じました。環境被害は国民の生命や健康を害します。そこで、被害が生じる前に公害を除去・予防する権利としての環境権が提唱されたのです。

2 学校・寺院・遺跡など文化的・社会的な環境が良いこと

このうち、自然的環境だけを指していると考える学者が多いです。文化的・社会的環境まで含めてしまうと、相対的に環境権の権利性が弱まると考えているからです。

環境権の根拠条文には13条の幸福追求権があります。ただ、環境権には自由権的側面と社会権的側面があります。

自由権として国家が干渉しないだけではよい環境を享受できません。公害がその例です。工場や車の排気ガスを制限したり、製造業での環境基準を作ったりする必要があります。このように、国家が国民に介入する必要がありますから、社会権的側面があるとされています。ただし、最高裁判所は環境権を認めていません。

 

 

| まとめ

 

1 裁判所はプログラム規定説を採用!?

2 環境権は自然的環境の享受!

3 最高裁判所は環境権を認めず!



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