行政書士試験の憲法(人身の自由2)

前回は人身の自由のうち奴隷的拘束からの自由と苦役の禁止を書きました。今回は適正手続の保障ついて書いていきます。

 

 

| 適正手続の保障って?

 

適正手続の保障は憲法31条に規定されています。

 

憲法 31条

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

 

刑罰は人権を制限することですので、どのような手続きで行われるのかを法律で明確にしておかなければならないとした規定です。

条文をそのまま読むと手続を法定していればよいとも読めます。しかし、政権批判をすれば懲役のような法律が定められてもいいのでしょうか。法律はあればいいのではなく、正しい法律でなければいけません。

そこで、憲法では手続の法定だけでなく、手続内容の適正をも要求されているとされています。どのような行為が犯罪になるのか、どのような刑罰が科されるのかについても適正でなければいけないのです。

 

 

| 適正手続の内容

 

憲法31条の適正手続で重要なものは告知と聴聞です。告知は、公権力が国民に不利益を課す場合には当事者に対して予めその内容を告知することです。聴聞は、当事者に弁解と防御の機会を与えることです。

たとえば、警察が窃盗の容疑者を逮捕する場合には、窃盗の容疑で逮捕することを告知し、何か言いたいことがあるのかを尋ねます。これが告知と聴聞です。

実は、憲法31条に告知と聴聞を受ける権利が含まれるのかが争われた事件がありました。第三者所有物没収事件(最大判昭37.11.28)です。

船で密輸しようとして警察に逮捕された容疑者が起訴され、船の貨物は全て没収されてました。密輸の罪は認めるけれど、船の貨物は他人のモノなので持ち主に返すべきだと主張しました。荷物の持ち主に対して告知や聴聞を行わずに没収するのは憲法31条に反するというのです。

裁判所は、この主張を認め、第三者の所有物を没収する際の告知や聴聞が規定されていない関税法(当時)は憲法31条に反すると判示しました。

つまり、憲法31条に告知と聴聞は含まれるとされたのです。

 

 

| 行政手続にも適正手続の保障は及ぶの?

 

憲法31条の条文では“生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない”とあります。この条文は刑事手続だけに適用されるのでしょうか。

これには大きく2つの学説が対立しています。適用説と準用説です。どちらも行政手続に適正手続が必要であることは争いありません。

適用説は、行政手続に適正手続きの規定がない以上、憲法31条が適用されるとします。ただし、刑事手続ほどの厳格な適正までは要求されないとします。

準用説は、行政手続には緩やかに、刑事手続には厳格に適用するために、行政手続に対しては準用とすべきだとします。準用によって行政手続への緩やかな適用を認めるのです。

成田新法事件(最大判平4.7.1)では、行政上の不利益処分にも31条が準用される余地があると判示されました。

成田空港が開港するときに成田空港の開港に反対する過激派集団によって襲撃がなされました。過激派集団は規制杭域内に建物を所有し、アジトにしていました。運輸大臣(当時)は成田新法の制定を理由に立ち退きを要求しましたが、過激派集団は憲法31条の告知と聴聞を受ける権利を有するとして争いました。

裁判所は、憲法31条の法定手続きの保障は行政手続にも準用される余地はあるが、行政手続は多様だから必ずしも告知と聴聞が与えられる必要はないと判示しました。事件の結末としては、過激派集団は立ち退きさせられました。

 

 

| まとめ

 

1 手続の法定だけでなく手続内容の適正も含まれる!

2 適正手続で重要なのは告知と聴聞!

3 適正手続の保障は行政手続にも及ぶ!



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