行政書士試験の憲法(人権の享有主体性)

前回の記事“行政書士試験の憲法(基本的人権の内容)”では、人権の分類について書きました。憲法の人権カタログに載っている人権は分類しやすいけれども、知る権利のような新しい人権は分類しにくいことを書いています。

今回は、人権が皆に保障されるというけれどホント?という話を書きたいと思います。

 

 

| 人権は誰に認められるの?

 

人権はどんな人にも認められるのが通常です。ただ、憲法の条文を読んでみますと、“国民は”と書かれている条文と“何人も”と書かれている条文があります。

“国民は”と書かれているときには日本国民にだけ認められて、“何人も”と書かれているときは誰でも認められると考えてもいいのでしょうか。

1 天皇・皇族

まず問題になるのは、天皇や皇族です。天皇親後続も日本国籍を有していますので基本的人権が及びます。ただし、一定の制限があります。たとえば、天皇が勝手にラーメン屋になられてしまっては困りますよね。また、皇族の男性の結婚には天皇制を維持するために皇室会議の決議が必要です。このように、天皇や皇族は職業の自由や婚姻の自由が制約されています。

2 法人

法人は会社、組合、宗教団体などの人の集まりです。ヒトがたくさん集まると力を持ちます。個人と同じように人権を認めてしまっては不公平になる場面もありそうです。そこで、性質上可能な限り法人にも人権が認められますが、一定の制約があります。

法人の人権の制約については有名な判例があります。南九州税理士会政治献金事件と八幡製鉄事件です。

南九州税理士会政治献金事件は、南九州税理士会が会員である税理士から特別会費を徴収して政治団体に寄付をしたという事件です。税理士会にも政治活動の自由はありますから、どこに献金しようとかまわないように思います。

ただ、南九州税理士会は強制加入団体で、税理士会の献金先が気に入らないからと言って、税理士を営みながら税理士会を脱退することはできませんでした。判例では、強制加入団体であることから、政治活動への協力を会員に強制することは会員の政治的信条を害するものであり認められないとして、南九州税理士会は敗訴しました。

八幡製鉄事件は、八幡製鉄所が会社の利益の中から自民党に政治献金をした事件です。先ほどの南九州税理士会政治献金事件と同じように、株主の政治的信条を害するとして争われました。ここでは南九州税理士会とは違った事情があります。八幡製鉄の株主は、南九州税理士会と違って強制加入ではありません。八幡製鉄の言動が気に入らなければ自由に株を売却して株主をやめても構わないのです。判例では、政治献金の寄付行為は法人に認められた政治的行為の自由の一環として認められると判示されました。

3 外国人

外国人も人間である以上基本的人権は認められます。ただし、日本国民の身に認められるような人権は外国人には認められません。外国人には性質上可能な限り認められているに過ぎないのです。

たとえば、参政権、社会権、入国の自由があります。有名な判例を2つ挙げます。マクリーン事件と指紋押捺拒否事件です。

マクリーン事件はこのような事件です。外国人のマクリーンさんが在留中に様々な政治活動を行いました。その結果、在留期間の更新を拒否されてしまったのです。判例では、外国人にも政治活動の自由は保障されるけれども、在留期間の更新や入国の審査は法務大臣の自由な裁量にゆだねられているので、在留中の政治活動が審査のときにマイナスに評価されても違法ではないと判示されました。

指紋押捺拒否事件はこのような事件です。日本に入国した外国人が外国人登録をする際に指紋を押さなければいけませんでした。今は指紋押捺は行われていません。指紋押捺を拒否すると外国人登録ができませんので、退去強制させられてしまいます。そこで、外国人だけに指紋押捺を求めるのは法の下の平等に反すると提訴しましたが、判例では公共の福祉のために指紋の押捺を求めることは適法だと判示されました。

公共の福祉については次回に書きたいと思います。

 

 

| まとめ

 

1 天皇・皇族には広く人権を制限!

2 法人も人権共有主体!

3 外国人には広く人権を制限!



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