2019年宅建士試験 民法検討 (問4~問5)

2019年の宅地建物取引士試験の合格発表が12月4日にありました。試験問題が公表されましたので、検討してみたいと思います。みなさんが苦手な民法です。

民法の点数が安定すると試験合格がぐっと近づきます。来年の試験まで10カ月ありますから、焦らずじっくりと基礎固めをしていきましょう。

今回は2019年の問4、問5です。

 

 

| 宅建士試験の民法検討 (問4~問5)

 

問題をどんどん見ていきます。

 

【問 4】

不法行為の問題です。正しい肢を選ぶ問題です。受験生が知らないことを問われた問題かもしれません。

1 放火で家屋が全焼し保険金請求権を取得した場合、加害者への損害賠償請求金額から保険金額を損益相殺する必要があるかという問題です。損益相殺は、被害があっても得をすることがあったならその分を差し引いて損害賠償しましょうというルールです。この肢では家屋の全焼という被害がありますが、保険金請求権を取得したので得をしてるのではないか、損益相殺をすべきじゃないかという問題です。火災保険金は保険料の対価としての性質がありますから、放火によって火災保険金が支払われても得をしたわけではないのです。ですから、加害者への損害賠償請求では損益相殺はされません。損益相殺は盲点だったのではないでしょうか。

2 被害があっても得をすることがあった場合ですから、損益相殺がなされます。損益相殺がされると損害賠償金額から得をした利益分は差し引かれます。

3 加害者を教唆した場合には、教唆者が民法709条の要件を満たすと共同不法行為として不法行為責任を負います。民法709条の要件は、(1)加害者の故意・過失、(2)責任能力、(3)違法性、(4)損害の発生、(5)行為と損害との因果関係、の5つです。

4 名誉を侵害された場合には、加害者が民法709条の要件を満たすと不法行為責任を負います。不法行為責任は金銭賠償が原則です。ただ、名誉が侵害された場合にはお金をもらうだけでは名誉は回復できません。そこで、名誉を回復するために新聞広告などで謝罪文を掲載するなどの処分を求めることができます(民法723条)。さらに、名誉が侵害されることが分かっている場合には、出版物などの出版の差止を請求することもできます。謝罪広告も準備ができていなかった受験生が多かったと思います。

 

【問 5】

無権代理人の本人相続の問題です。判決文が載せられていて、判決文と矛盾する肢を選ぶ問題です。判決文では、本人が無権代理行為の追認を拒絶した後に、無権代理人が本人を相続した場合、無権代理行為は有効にならないという結論です。理由は、本人が追認を拒絶した後では、たとえ本人であっても追認によって無権代理行為を有効にすることはできないからです。

1 判決文そのままです。

2 本人が追認拒絶をする前に無権代理人が本人を相続した場合、単独相続であれば当然に追認があったとの同じ扱いになります。つまり無権代理行為は有効になります。共同相続であれば、追認権は共同相続人に不可分に帰属することになります。つまり無権代理行為が有効になる可能性があります。そうだとすると、判決文の内容とは異なる法律効果が生じることになります。

3 判決文とは関係ない肢です。追認の効果について問うています。肢に書かれたとおりで、追認は原則的に契約時に遡って効力が生じますが、第三者の権利を害することはできません。

4 本人の無権代理人相続です。判決文とは関係がない肢です。本人が無権代理人を相続した場合、単独相続であれば本人は追認を拒絶することができます。ただし、無権代理人の責任も相続しますので、無権代理人の責任を負うことになります。

 

 

| まとめ

 

1 損益相殺や名誉棄損は盲点だったかも!?

2 無権代理人の本人相続は押さえておきたい知識!

3 本人の無権代理人相続や共同相続の場合も併せて覚える!



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