殺人事件での裁判長の説諭が…

ある殺人事件の裁判で話題になっていたことがありました。刑事事件ですから、行政書士の業務には全く関係がありません。

この裁判では判決内容が休憩内容よりも重かったという点と裁判長の説諭の長さと内容が話題になったようです。説諭は、裁判長が被告に対して悪いことを改めるように教え諭すことです。刑事訴訟規則221条に規定されています。

(判決宣告後の訓戒)
第二百二十一条 裁判長は、判決の宣告をした後、被告人に対し、その将来について適当な訓戒をすることができる。

過去には、裁判員裁判での死刑判決で“裁判所としては控訴を勧めたい”という説諭もあったそうです。

 

 

| 裁判長は法律家だと実感

 

殺人事件の裁判で裁判長の説諭の中に“殺害しか選択肢がないと言っていたが、正当防衛以外でそんなことはない”という言葉がありました。

正当防衛が認められる場面では、殺害しか選択肢がないことが実際にはあるのでしょう。そのようなときは殺害も致し方ないと裁判長は考えているようです。

そもそも刑法での正当防衛は色々な要件を満たさなければ認められません。

1 急迫不正の侵害

2 自己または他人の権利を防衛するため

3 やむを得ずにした行為

4 過剰防衛、誤想防衛、誤想過剰防衛にあたらないこと

5 自招侵害、喧嘩ではないこと

刑法での正当防衛は違法性阻却事由の一つです。

刑法で罰せられるためには、まず条文の構成要件に当てはまる必要があります。構成要件は罪によって色々ありますが、行為、結果、因果関係、故意が認められる必要があります。

これらを満たすと違法性と責任が推定されます。ただし、例外的に違法性がなくなる場合と責任がなくなる場合があります。それぞれ違法性阻却事由、責任阻却事由といいます。

正当防衛は違法性阻却事由ですから、一応は構成要件に該当しています。殺人罪で有罪判決を受ける場合には、殺人罪の構成要件に該当しています。しかし、正当防衛という行為によって殺人の違法性がなくなってしまうのです。つまり、悪いことではないと評価されます。

たとえ刑法で悪いことではないとされていても、人を殺害することは道徳的には悪いことだと思います。“人を殺したい”と思うことも道徳的には悪いことだとされるでしょう。

殺人事件の裁判長が道徳的な説諭をするのであれば、“殺人はしてはならない”と言うべきでした。ところが、この裁判長はあくまで“裁判長”です。法を使って罰を言い渡す人です。法律で違法だとされない場面では、たとえ殺人であっても行動の選択肢に入ることを示しました。

裁判長は法律家だと感じた瞬間でした。当然と言えば当然なのかもしれませんが、司法に携わる人の意識がよく分かる説諭だったと思います。

行政書士として身近な困りごとや悩みごとの相談を受ける身としては、法に則った意識が大切だと痛感しています。気持ちを引き締めて業務にあたろうと思った事件でした。

 

 

| まとめ

 

1 裁判長が説諭をすることがあります!

2 刑法での正当防衛にはたくさんの要件があります!

3 裁判長の法律家ゆえの言葉に身が引き締まる思いです!



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